真のオープンなパッケージソリューションを提供する日本HP
日本の景気は、長らく続いた低迷からようやく立ち直りの気配を見せ、外需主導で回復のモーメンタムを持続している。こうした中、巨大な2社の合併を終え、次のステップへ動き始めた日本HPが見据えている方向について、樋口社長に話を聞いた。

 日本の景気は、ようやく立ち直りの気配を見せ、企業のIT投資も新たな局面を見せようとしている。こうした中、巨大な2社の合併を終え、次のステップへ動き始めた日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が見据えている方向について、代表取締役社長兼COOの樋口泰行氏に話を聞いた。

ITmedia 日本HPにとっての2003年を振り返っていただけますか?

樋口 2002年11月の合併で、コンパックコンピュータ、HPというほとんど似たような規模の2社が一緒になったことで、さまざまなプロセスや製品面の統廃合、組織作りなどの整備を行いました。  マクロ的には、IT、特にハードウェアの世界で競争が激化しており、世界的な規模を追求しないと生き残れません。大きな生き残りをかけた合併があり、そのフォローアップの年であったと思います。

ITmedia そうしたフォローアップはすでに終了し、次のステップに移ったと考えてよいのでしょうか?

樋口 完全に落ち着いたというところまでは行っていません。ITのインフラを含め、まだ整備しなければならないところは残っています。また、サービス部隊の統合がもう少し残っていますね。  合併に関しては、マインドの面が大事で、かつ影響が大きい部分だと思っているのですが、ここに関しては、ほぼひとつの会社として一体感が出てきたと思います。

ITmedia 2003年のサーバ市場はどのように感じられましたか?

樋口 ITだけでなく、全体的に景気が低迷していましたよね。個人投資のみならず、設備投資も少し低迷している年だったかなと思います。ただ、景気というのは循環的なものです。景気も上向きになってきており、弊社のフォローアップも収束してきましたので、この景気の波に合わせて、これからは攻め、あるいは前向きに転じようというところですね。

ITmedia 2004年の景気はどのように推移していくと分析されていますか?

樋口 大幅に上向くといったことはないでしょう。各企業の債務超過の状態はかなり解消に向かってきているとはいえ、結果的には中小企業というのはまだそれほど回復していないと思います。


自己完結型のITシステムから、全体のヘテロな環境下での運用を考える時期にきたと話す樋口氏

 お金があるないという単純な話であれば製造業が元気ですね。あくまで輸出依存型になりますが、製造業の大企業は北米、中国およびアジア向けの輸出で好調を持続しています。そのため、この業界の投資意欲はますます活発になってくるのではないでしょうか。

ITmedia 企業のIT投資はどの分野にフォーカスしていくのでしょう?

樋口 企業のコアの部分に対するIT投資ではなく、外の部分でのIT投資が盛んになってくると思います。これは、ハイリスクハイリターンのIT投資で、これによってコストを下げるというものではなく、新しい需要の開拓を期待した投資になります。

 中小企業は世界的に見ると、IT化という観点ではかなり遅れています。そこはまだまだITによる効率化の余地があると考えています。ただ、ITの中身を見た場合、ハードのコストパフォーマンスがよくなることで、台数需要自体が減少するという構造的な問題を抱えていますので、われわれとしてはそれに耐えうる新しいモデルを作っていかなければ生き残れないと考えており、それには規模の経済性が大きく作用すると思っています。

ITmedia 2004年、フォローアップを終えた日本HPはどういった戦略を打ち出していくのですか?

樋口 これまで、各アプリケーションに特化した形で行われた個別のIT投資により、システムはかなり縦割り型の状態になっています。それが成熟期を迎え、どのように社内のシステムを効率よく活用するか、また、インターネットという外の世界とのインターフェイスをどうとっていくかなど、自己完結型のITシステムから、全体のヘテロな環境の中でどのように運用していくかということを考える必要が出てきています。

 世の中に変化に対応でき、かつ運用の容易なシステムを組んでいくことが求められますが、そうなるとクローズドなシステムではつぶしがききません。ニーズの変化に対応できるオープンで、かつ短期間で開発できるシステム、オープンなパッケージソリューションが求められてくると思います。弊社が提唱しているアダプティブ・エンタープライズはまさに時代にマッチしていると思いますので、それを積極的に訴求していこうと考えています。

ITmedia アダプティブ・エンタープライズは分かりにくいという声がありますがこれはなぜでしょうか? また、似たようなサービスを展開している他社との違いはどのあたりにありますか?

樋口 そうですね。現在は、わりとハイレベルでのビジョンを提示しているからかもしれません。今後は、各業種別でいうとどういうイメージになるのかというものに落とし込んでいるところです。今後はそういったものをどんどん訴求していく必要があると考えています。また、個別のコンサルティングといったアプローチをとっていきたいと思います。

 また、他社との違いについて、これは同じことをよく言っているのですが、とにかく、何でもかんでも自分たちの持つソリューションに落とし込むということではなくて、そのつど顧客の求める最適なソリューションをわれわれのパートナーと一緒になって提供するという点が大きな違いですね。

ITmedia 今後はパートナーの数を増やしていくのですか?

樋口 エンタープライズシステムというのは、いったん導入してしまうと、コロコロ変えるということができません。時間はかかっていますが、時間軸で見てみると、プラットフォームも淘汰されてきています。

 プラットフォームやソリューションの数が増えるのは、顧客にとってはトレーニングのコストなどが必要となってくるので、なるべく数を増やすべきではないと思います。また、パートナーについても信頼できるところに絞りたいと考えているので、特別な要望がない限り、パートナーの数を大幅に増やしていくといったことは考えていません。

ITmedia 2004年に注目の製品、サービスは?

樋口 ヘテロな環境での管理ツールや仮想化技術など、ユニフィケーションレイヤーとでも呼ぶべきもので括ることで、いろんな意味でITの効率化が図れるのではないかと考えています。インダストリーごとにみると、さまざまな強みを持つ弊社ですが、とくにハードウェアそしてインフラ層の技術に強みがありますので、そこに力を入れていきたいと思います。

ITmedia 冷え切った日本経済を回復させるためにはどのあたりが鍵になりそうですか?

樋口 これは非常に答えが難しいところですね。車業界などを見ても明らかですが、いまだに輸出依存型で中国やアメリカへの輸出が制限されると厳しいですよね。各企業の経営状態がよくならないと雇用も投資も発生しません。  あと1年から1年半くらいで状況も変わってくるかと思いますが、まずは、各企業の経営体質を筋肉質化し、建て直しが必要だと思います。それはもう見えてきた状況にあるとは思いますが、そうすると、日本でしか作れないようなもの、ITでいうと、ICダグ、モバイル、ブロードバンドなどの要素技術がかなり進んでいますので、それを利用した形でのIT投資が起こってくることを期待しています。

2004年、今年のお正月は?
ぜんぜん面白くない答えとなりますが、とにかくもう何もせず、自宅で寝正月ですね。というのは5月以降、「正月まではとにかく突っ走ろう」と決めてきましたので、正月だけを楽しみにしていたのです。ネガティブに聞こえるかもしれませんが、何もしないことが楽しみなんですよ。

2004年に求められる人材像とは?
顧客の悩みが複雑化している状況ですので、単調な知識だけではなく、お客様のビジネスの状況であるとか、抱えているITに絡む悩みに対して、理解力があるスコープの広い人材が増えていかないとサービスを軸とした戦略は大きくなっていかないと強く感じています。
 お客様が戦略を考えて、ITに落とし込んでそれからお話をいただくということではなく、もっとお客様といっしょに考えられる人材が必要だなと痛感しています。

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日本ヒューレット・パッカード

[聞き手:西尾泰三,ITmedia]