ユーティリティコンピューティングの実現へ走り出すベリタス
ストレージ管理ソフトで高いシェアを誇るベリタス。同社はストレージ領域を超えて、ユーティリティコンピューティングの実現という新たな展開をみせようとしている。

 増え続けるデータを効率良く管理するために、欠かすことのできないストレージ管理ソフト。この分野ではプラットフォームやハードウェアを問わず管理できる柔軟性が求められる。ストレージ管理ソフトの雄ベリタスは、昨年、主要プラットフォームすべてをカバーする製品ラインを整えた。これを足場に、2004年は「ユーティリティコンピューティング実現元年」になると木村社長は言う。

ITmediaストレージ管理ソフトは成長分野といわれていますが、2003年はいかがでしたか?

木村 ストレージ業界そのものは依然として伸び続けています。ソリューションとして見るといろいろな要素があるわけですが、私は大きく分けて「守りのソリューション」と「攻めのソリューション」の2つで捉えています。

 「守り」という意味では昨年、災害対策、コンプライアンス(法令順守)に対する動きが日本国内でも見られてきました。ディザスターリカバリー(DR)が注目された9.11同時テロ以来、米国では依然さまざまな災害に見舞われ続けていますし、日本では地震が頻発しています。金融のマーケットは災害対策を相当強く意識しており、既に動き出しました。

 また、米国で高まっているコンプライアンスの動きも見られています。この観点では、企業はデータを何年、何十年ときちんと守っていかなければなりません。特に、米国では法律的な規制が強まってきています。すでにヨーロッパにはこの波が押し寄せており、日本国内でもこれを察知している企業が出てました。そういった意味で、コンプライアンスに対する兆候が見られ始めました。


昨年ベリタス社長に就任した木村氏。同社の舵取りの感想は「市場がホットで、非常に面白い」。

 「攻め」という意味でもグローバルな波が見られました。携帯電話をはじめデジタルコンテンツは増え続け、使用するストレージの量も圧倒的に増加しています。このデータをいかに効率的に、速く、しかもプラットフォームをオープンに、24時間止めずに動かしていくということは、企業経営にとって大きな命題です。つまり、これらを経営に対してきちんとフィードバックされることが、企業の強さの根幹になり始めています。グローバル規模での厳しい戦いの結果、企業の勝ち組と負け組がはっきりしてきました。企業はこの強さの違いが勝ち負けを切り分ける要素だと気付き始めたのでしょう。

 勝ち組になるには、「守り」「攻め」の両方の観点からITインフラをきっちり整えなければなりません。特にオープンシステムとはいいつつも、現在のように垂直分業が成り立っていないバラバラな状況では、私たちのようなプラットフォームを問わず、ユーティリティコンピューティングとしてまとめていこうとするソリューションが必要になってきているのだと感じます。

 90年代はオープンシステムがITを引っ張ってきました。それにより、企業のプロジェクトはものすごく最適化され、それが経済にも大きく貢献してきました。しかし、企業単位で吸収合併が起るような時代では、プロジェクト・バイ・プロジェクトで最適されたITインフラでは対応できません。個別の最適化で成功してしまったために、全体の最適化ができないITインフラになってしまったのです。これをどうやってマネージしていくか、これが問題になってきています。

ITmediaその兆候は、ベリタスの製品面にも実際に反映されてきていますか?

木村 金融系ではすでに当社の製品を導入されているところも多いのですが、DR製品への動きが昨年後半から色濃く出てきています。またプラットフォーム別では、Linux、AIXの市場が伸び始めてきたのも特徴です。特に顕著なのはLinuxです。Linuxはまだ始めたばかりですので全体量は少ないのですが、伸び率は非常に高いものがあります。10月にIBM、日立、NECが販売で協力していただけるとエンドースいただき、これから相当強い動きとなって現れてくると期待しています。

 昨年プリサイスソフトウェアを吸収して手に入れたAPM製品も、ほとんどの大手企業に興味を持っていただいています。旧プリサイスがだいぶ導入していたということもありますが、いままではチューニングの過程でパフォーマンスを計るためにパーツ、パーツで使われていました。それを本格的に使おうと検討しているところが増えているのも、面白い動きです。

ITmedia多くのベンダーが唱えているコンセプトですが、ベリタスでも昨年ユーティリティコンピューティングを打ち出しましたね。

木村 ベリタスでは5月に初めてユーティリティコンピューティングという言葉を打ち出し、日本においても10月のカンファレンスでこのメッセージを打ち出しました。当社は昨年1年、このほかにもさまざまに取り組んできましたが、世の中にこういったメッセージを伝えたことが最大のテーマでした。

 特に日本においては、当社のすべての製品をすべての主要プラットフォームに対応させることができ、7月にはプリサイスも吸収し、新たにAPMソリューションを付加できました。当社にとっては、ユーティリティコンピューティングの実現に向けた下地が作れた年でした。

 ITをユーティリティ的に使わなければいけないという声は強くなってきています。世の中全体がこのような必要性を認知し始め、IBMなどさまざまなベンダーが唱えているのだと思います。ただ、基本的にすべてのプラットフォームで、サーバ、ストレージなど全体システム全体にフォーカスできるのは、当社以外に見当たりません。非常に強くユーティリティのコンセプトを唱えているのはハードウェアメーカーですが、これは自分たちのハードウェアであればユーティリティコンピューティングを実現できます、という話です。

 しかし、現実の顧客の声は違います。いろいろなプラットフォームを持っており、これらをきちんと使いたいと思っています。顧客が現実に持っている既存のシステムを使って、いますぐに実現できるのが当社の製品です。それは180度違うものです。企業は強くなることを求めており、そのためにはスピード感を求め、既存のITインフラをきちっと使いこなしていく必要があります。それをすり替えて考えるべきではないのです。

ITmediaそれでは、今年はどのような1年になりそうでしょうか?

木村 そういう意味で、「ユーティリティコンピューティングの実現元年」にしたいと考えています。今年は日本でもVERITAS OpForceというサーバの自動化のソリューションを発表できます。いまあるソリューションと組み合わせて、ユーティリティコンピューティングを実現していく年になるだろうと思います。

 顧客もそれを求めていると感じています。部品ごとにみれば、一部他社のソリューションと競合になる面もありますが、顧客が望んでいるのであれば、そこに対してソリューションを提供していきます。現在、それに一番近いところにいるのは、私たちしか見当たらないのではないのでしょうか。

 ユーティリティコンピューティングというのは、夢物語ではありません。すでにストレージは当社の製品を使ってユーティリティ的に使われ始めています。これをサーバリソースに関してもプラットフォームを問わず、これからはユーティリティ的に使えるようになってきます。

2004年、今年のお正月は?
木村氏は剣道5段の腕前を誇る「剣の達人」。ベリタスの社長就任以前に常務を務めたサン・マイクロシステムズに、剣道部を創設したことでも知られている。「普段から道場で30人ほどを教えているですよ(笑)」。そんな木村氏のお正月は、今年も母校・浦和高校の初稽古に参加するとのこと。

2004年に求められる人材像とは?
同社が推進するユーティリティコンピューティングの世界はカルチャーとの戦いになるという。強い信念と情熱で、IT業界を牽引できる人材に期待をかける。「サラリーマン的に指示を求める人はダメです。硬直した考え方を変えられる熱い力を求めたい」。

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[聞き手:堀 哲也,ITmedia]