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2003年は、政府関係機関がLinuxおよびオープンソースに多大な関心を寄せ始めた年だった。また、大手ベンダーもLinuxビジネスに本腰を入れ始めている。Linuxディストリビューターの最大手であるレッドハットはこの状況をどのように見ているのだろうか。2003年は、経済産業省などをはじめとする政府関係機関がLinuxおよびオープンソースに多大な関心を寄せ始めた年だった。また、Linuxディストリビューターの再編が進んだ年でもある。レッドハットの代表取締役、平野正信氏にLinuxを取り巻く状況について話を聞いた。 ITmedia レッドハットが自社の製品ラインを企業向けに専念すると発表したのが今年の10月でしたね。レッドハットにとっての2003年を振り返っていただけますか? 平野 2003年は、「エンタープライズ元年」とでも呼ぶべき1年でした。おっしゃる通り、レッドハットは今年の10月に、従来販売していたコンシューマ系の製品「Red Hat Linux」の販売を取りやめ、オープンソースのProjectである「Fedora Project」と合併しました。それとともに、シングルソースシングルバイナリであるRed Hat Enterprise Linuxの製品ラインに完全にフォーカスするという大きな方向転換を発表しました。 製品ラインを明確に切り分け、ビジネスモデル的に、エンタープライズLinuxへとシフトした年でしたね。 ITmedia 2003年のLinux市場はどのように感じられましたか? 平野 マーケットニーズに押される形で大きな動きがあったといえます。特にIHVの動きにそれを見ることができます。これまでに弊社製品をグローバルでサポートする契約を結んだIHVは、Dell、IBM、HPの3社でしたが、今年の5月以降、富士通、日立製作所、NECが同様の契約を締結しました。この6社でサーバ市場の90%以上をカバーしていると思います。Sunについても、x86マシンに関しては同様のアグリーメントが締結されました。 これにより、各社がレッドハットの製品群をそれぞれ自社のハードウェア上で動作検証し、もし問題がある場合は、事前に伝えていただくという状態になりました。 ITmedia Linuxディストリビューターにとって、小売市場はビジネスとして成立しないということでしょうか? 平野 Linux市場の規模はまだまだ小さいとはいえ、これから成長する分野です。そこにはビジネスチャンスがいたるところに存在するでしょう。レッドハットは、顧客との間でお金のやり取りがごく自然に行えるような形を模索してきた結果、いわゆるサポートビジネス、コンサルティングビジネスというものが最適であるという結論に帰着したということです。 数年前までは、企業内パワーユーザーが自社Linuxシステム、たとえばApacheのメンテナンスを片手間程度に行うことも可能でした。ところが、Linuxが及ぶ範囲が広範になるにつれ、それではまずいでしょ、という話になる。しかしもはや、さまざまなメーリングリストなどをこまめにチェックしていないと、厳密にいうと企業のシステムをメンテナンスできない状態になっているのです。
そのため、メンテナンスをアウトソーシングせざるを得なくなるわけですが、その際に希望されるサポートの範囲というと、24時間365日でサポートしてくださいであるとか、パッチ適用時に既存のアプリケーションが正常に動作するか検証してくださいなど、さまざまなレベルの要求があり、Bugzillaで済むレベルをはるかに超えています。そうなってくると、通常のITのメンテナンス契約となんら変わらないものになってくるわけです。 Linuxは無料、というプリミティブな話ではなく、Linuxであってもお金は必要だということを企業の方が理解してくださるようになりました。 ITmedia レッドハットが2004年以降、どのような戦略を考えているか興味があるのですが。 平野 先ほどエンタープライズ元年といった意味は、すべてのマーケット、ITユーザーを完全にカバーしているわけではないという意味の裏返しでもあります。 ITベンダー、特にISVのうち、いわゆるビッグネームがLinuxをサポートするようになってきましたが、それでも、Red Hat LinuxまたはLinuxをサポートしている企業はせいぜい数百程度です。まだまだLinuxがサポートされていない分野は多く存在します。これを数千の規模に広げていくことが2004年以降の課題になると考えています。 ITmedia 具体的なアクションとしてはどのようなものを考えていますか? 平野 ISVが弊社製品をサポートしやすいようにツールなどを提供するプログラムを強化したいと考えています。これによってISVは弊社製品をサーティファイしやすくなるのではないかと思います。 結局のところ、サーティファイをするのは私たちではなくパートナーとなるITベンダー側なのですから、この部分の強化は必須です。 それともうひとつ、クライアントサイドの充実を図れればと考えています。ここでいうクライアントという意味は広義です。いわゆるオフィススイートであったり、研究所の開発環境であったりします。サーバOSとして導入が進むLinuxですが、クライアントサイドはWindowsが強い分野です。ここについてもRed Hat Enterprise Linux WSを核とし、進出を図れればと思います。 ITmedia 今年のLinux業界の大きなニュースとして、SCOの問題は外せないと思います。知的財産論争として始まったこの訴訟は、今や、フリーのオープンソースソフト支持者と知的財産の危機を唱える人々との間の一大論争にまで発展しています。レッドハットも「SCOの主張根拠」確認の裁判を起こすとともに、コミュニティの訴訟リスクを補償する基金を設立するなどのアクションを起こしていますが、この件についてどのようにお考えですか? 平野 最初は訴訟先が弊社でないこともあり、無関係といった状態でした。しかし、SCOがLinuxユーザーに対して書簡を送りつけたことがあり、その中に弊社製品を使用されているユーザーも含まれていたため、弊社としては裁判所にそういった行為の停止を求めたわけです。 ITmedia SCOの件で今後のLinux業界にはどういった影響があると思いますか? 平野 私たちが行動を起こしたのも、弊社、Linux業界、そしてオープンソース全般の成長にとっての阻害要因であれば取り除いておきたいと考えたからです。しかし、この件が注目を集めたことは、それだけLinuxやオープンソースに対する皆さんの関心の高さを証明することになったところもあるのではないかと思っています。 ITmedia そのほか大きなインパクトを残したニュースとして、ノベルがSUSE LINUXを買収した件があります。SUSEに限らず、仏MandrakeSoftが破産申請を行うなど、Linuxディストリビューターの再編成が進んでいるように思いますが、どのように見ておられますか? 平野 これまで、Linuxディストリビューターの戦いは中小企業同士の戦いであるかのような印象を持たれていた方が多かったと思います。 独立系のLinuxディストリビューターとしては弊社が最大手であると自負していますが、それでもIBMなどと比べると中小企業という扱いとなってしまいます。 この市場にノベルが参入し、Linuxを提供し始めたときに、顧客の中でLinuxの印象というものがワンランク上がるのではないかと思います。また、Linuxを企業が導入する際、「お前のとこでサポートできるの?」ということが若干の不安要素として存在していたと思いますが、ノベルの参入によって、これらが緩和されるのではないかと思います。 ITmedia やっと復調の兆しが見え始めた日本経済ですが、復調の鍵はどのあたりにあると思われますか? 平野 日本政府がオープンソースに関心を示している、というのが回復の大きな材料になるのではないかと考えています。元来非常にコンサバティブである自治体や政府がオープンソース、あるいはLinuxに興味を示していることで、いわゆる上流からのポジティブな意見として業界に大きく影響してきます。 かつてITの投資は湯水のように行ってきた企業も、不況になるにつれその投資効果を真剣に検討する必要がでてきました。それでもなおIT部門は聖域のようになっていましたが、そこにもメスを入れる必要が出てきました。そういった場所にLinuxをもっていくと、解決しやすい提案書が書きやすいため、会社としても導入しやすい状態であると思います。 現在の経済状態が底を打って、やっと上を向いたかなというところにあるとしても、決済しやすいLinuxという選択肢はむしろ選択されやすくなってくると思います。 こういった動きが経済全体に伝播し、IT投資をうまく行うことが、会社をちゃんとしていくための道、というイメージができてくれば加速していくのではないでしょうか。
2004年に求められる人材像とは? 関連記事 関連リンク [聞き手:西尾泰三,ITmedia] アクセストップ10Special
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