ドコモの本丸を守る“普遍化した端末ブランド”神尾寿の時事日想

» 2005年02月07日 13時03分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 1月24日から1月30日までの携帯電話販売ランキングで「N901iC旋風」が観測された(2月4日の記事参照)。トップのN900iSとあわせて、今さらながらドコモ“Nブランド”の底力に恐れ入る。昨年、調査会社IDC Japanが発表した2004年第3四半期の携帯電話集荷台数で、NECは第3位の座に滑り落ちた。しかし依然としてNシリーズの人気は高い。

 1991年の初代「ムーバN」にまで遡る、Nシリーズのクラムシェル(二つ折り)型デザインは、1999年まで根強い人気を持つ非主流派でしかなかった。しかし、iモードの登場で「液晶の大型化」ニーズが高まり、それを実現するデザインとして、「Nシリーズ=クラムシェル」が定着。Nのデザインと操作性、調和と中庸を是とするスタイルが、一般ユーザーの間に根付いた。例えるならば、ドコモのNブランドはジャズのスタンダードナンバーのようなものだ。刺激的ではないかもしれないが、耳慣れており、誰もを安心させる力を持っている。

 前回のコラムで筆者は、「市場の成熟化によって、一般ユーザー層がデザインとコンセプトの多様性を求めるのではないか」と書いた。しかしその一方で、ドコモのNシリーズやPシリーズのような“普遍化”した端末ブランドが、引き続きラインナップの中に必要であるとも考えている。特に「ドコモの本丸」と言われる法人顧客層やライトコンシューマー層は、普遍化した端末ブランドを継続して買い続ける傾向にある。ドコモの本丸を守る砦の1つが、こうした端末ブランドの力と言えるだろう。

 番号ポータビリティ制度の実施に向け、auとボーダフォンの狙いが「ドコモの本丸」にあるのは間違いない。しかし、ここを攻め落とすには、多様な端末ラインナップだけでなく、ドコモのNやPに匹敵する「普遍化した端末ブランド」の育成も必要である。

神尾寿

通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、業務委託で大手携帯電話会社のデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで取材している。ジャーナリストのほか、IRICommerce and Technology社レスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。

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