携帯カメラの可能性を底上げする「映像認識」技術神尾寿の時事日想

» 2005年03月31日 11時06分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 3月23日、シーフォーテクノロジーの特徴量抽出技術がNTTデータのカメラ付き携帯電話向けアプリケーションに採用されたという発表があった(3月23日の記事参照)。詳しくはニュース記事に譲るが、ここでの注目はシーフォーテクノロジーの特徴量抽出技術が一種の「映像認識」技術であることだ。

 映像認識技術自体は産業機械から自動車まで、様々な分野で開発・実用化が進んでいる。民生利用が活発なのは自動車分野で、ホンダやスバルなどがクルマ向け映像認識システムを実用化。特にホンダの「レジェンド」が搭載する「インテリジェントナイトヴィジョン」では、夜間走行時に2つの赤外線カメラによって歩行者の位置を検出し、クルマの進路と邂逅する可能性がある場合は、警告音でドライバーに知らせてくれるレベルにまで達している。一方、スバルの映像認識技術「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」はクルマ向けとして実用化されているだけでなく、踏切の監視装置や地雷除去ロボットの視覚装置への搭載実験が進んでいる。このようにCCD/CMOSカメラなど電子の眼を知能化することで、「写すだけ」では不可能だった高度な機能やサービスを提供できるのだ。

 携帯電話でも映像認識技術の効果は大きいだろう。シーフォーテクノロジーのプレスリリースでは広告用途の可能性が謳われているが、それ以上にサービスとしての可能性がありそうなのが、「リアル検索サービス」だ。例えば、街角でビルを写すと「GPS位置情報と映像認識技術を使って対象物が認識され、内部のテナント情報が検索・表示される」といった使い方である。花や虫を写すと自動的に辞典サービスを検索するといった使い方なら、子ども向けのeラーニングツールになるだろう。

 むろん、課題もある。中でも大きいのが処理能力の問題だ。例えばNECが開発した「リアルタイム動画像認識向け超高速オンチップ並列プロセッサ」は映像認識に特化し、最大50GOPS、平均20〜30GOPS(1GOPS=1億命令処理)の処理能力を有している。携帯電話向け汎用CPUとは、文字通り“桁違い”の性能だ。携帯電話の中に高速な映像認識システムを搭載するのは、サイズやバッテリーへの影響などハードルは高いだろう。

 しかし、多くの課題があっても、携帯カメラによる映像認識技術はチャレンジする価値がある分野だと思う。「携帯カメラで撮るだけ」で、目の前にあるものの情報が検索できる。これは既存の検索サービスよりも格段に使いやすく、デジタル格差の解消にも繋がるサービスになるはずだ。

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