そもそも電波って何だろう?塩田紳二のモバイル基礎講座 第3回: (1/3 ページ)

» 2005年03月31日 15時33分 公開
[塩田紳二,ITmedia]

 前回は日本の2G携帯電話の話をしました。日本の3G携帯の話に入る前に、基本的な解説をしておくことにしましょう。今回は、「電波」について、解説することにします。

 携帯電話や無線LANなど、私たちのまわりには電波があふれています。しかし、そもそも電波とは何なのでしょうか?

電波は電磁波のなかの1つ

 電波は電磁波の1種です。電磁波のうち、無線通信などに使われるものを意味する言葉です。

 電磁波というとなんだか、ロボットアニメの武器かなにかのようですが、実はそこら中にあります。たとえば、我々が見ることができる光も電磁波の1種です。また病院で使うレントゲンのX線も、赤外線や紫外線も電磁波です。何が違うのかというと、周波数が違うのです。電磁波のうち、だいたい300GHz〜3T(テラ)Hz程度までを上限とするものが電波です。なお、日本の電波法では3THzまでを電波と定義しています。

 このあたりより上は、光になります。光のうち周波数が低く、目に見えないものが「赤外線」です。俗にいう遠赤外線とは、赤外線のうち周波数の低いものをいいますが、この領域は電波として扱うこともあります。

 目に見える光を「可視光」といいます。さらにこの可視光の上が「紫外線」です。紫外線よりさらに周波数が高くなると、レントゲンで使うX線になり、X線よりもさらに周波数が高いものをガンマ線(放射線の1種)といいます。

そもそも電磁波とは?

 電磁波とは、「電界」(電場ともいう)と磁界(磁場)が交互に発生しながら空間を伝わっていくものです。

電磁波が発生する仕組み。電界と磁界が交互に発生し、空気の中を伝わっていく

 電界とは、電荷(電気を帯びたもの)が作る力の場で、簡単にいえば、静電気で髪の毛が下敷きに引かれて立ってしまうような領域です。場とは、なんらかのエネルギーが作用して力が働いている場所をいいます。

 同様に磁界とは、磁力により作られる場で、簡単にいえば、磁石同士が引き合ったり、反発したりする力が働く場所をいいます。

 電界と磁界には相互に関係があって、電界が動く(電荷が動く)とそれによって磁界が発生し、磁界が動く(磁石が動く)とそれによって電界が発生します。

 原理としては、モーター(電界が磁界を生みその力により回転する)、発電機(磁石を回転させることで電界が発生し電流が流れる)と同じようなことが空間の中で交互に起こって空間を伝わっていくのです。

 さて、電波とはその名のとおり「波」の1種でもあります。物理学などではゴロをよくするために、波のことを「波動」といいます。電波のことを説明するためには、この波動についてすこし理解しておく必要があります。

 波は、ゼロから始まって上がって下がり、マイナスになって、また上がってゼロに戻ってきます。この繰り返しが波になっているわけで、このパターンを「サイクル(周期)」といい、1つのサイクルの長さを波長といいます。波長は、波の進む速さと周波数から計算でき、波の進む速さが一定だとすると、波長と周波数は互いに逆数の関係になります。つまり、波長が長ければ周波数が低く、周波数が高ければ、波長は短くなります。

波長(1つのサイクルの長さ)と周波数の関係

 後述するように波長(周波数)によって電波の性質が変わってくるため、電波は周波数によって分類されます。

周波数 波長 呼び名 用途など
30kHz以下 10km以上 超長波(VLF) 電波時計
30kHz〜300kHz 1km〜10km 長波(LF) 長波放送、潜水艦との通信
300kHz〜 3MHz 100m〜1km 中波(MF) ラジオ放送
3MHz〜 30MHz 10m〜100m 短波(HF) 海外向けラジオ放送
30MHz〜300MHz 1m〜10m 超短波(VHF) テレビ
300MHz〜 3GHz 0.1m〜1m 極超短波(UHF) テレビ、携帯電話、無線LAN
3GHz〜 30GHz 0.01m〜0.1m センチ波(SHF) 衛星放送、レーダー
30GHz〜300GHz 0.001m〜0.01m ミリ波(EHF) 車載レーダー
300GHz〜3T(テラ)Hz 0.0001m〜0.001m サブミリ波/遠赤外線
3THz〜370THz 810nm〜0.0001m 赤外線 加熱
370THz〜790THz 380nm〜810nm 可視光
790THz〜30P(ペタ)Hz 10nm〜380nm 紫外線 殺菌
30PHz〜300E(エクサ)Hz 0.001nm〜10nm X線 レントゲンなど
3EHz以上 0.1nm以下 γ線 放射線
電磁波の周波数と呼び名。超長波からミリ波までは電波、サブミリ波/遠赤外線のあたりが電波とも光ともいえるあたり、赤外線/可視光/紫外線は光になる。X線とγ線の範囲が重複するのは、それぞれ名称を定義する分野が違うため。なお、メガは10の6乗、ギガは10の9乗、テラは10の12乗、ペタは10の15乗、エクサは10の18乗となる

 なお電磁波は、真空中では光の速さで伝わります。というより、光も電磁波の1種なので、「光速」とは電磁波の速さのことなのです。この値は俗に「1秒間に地球を7回り半」といわれています。実際の速度は、299792458m/s(約30万km/s)です。どうして半端な数がないのかというと、1mという長さは現在、光の速度を基準にして決めているからです。

電波は反射し、吸収されると弱くなる

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