auの着うたフルが好調なようだ。4月6日、KDDIが発表した資料によると、「着うたフル」の累計ダウンロード数は500万曲を突破。対応楽曲数も約2万2000曲に増加している(4月6日の記事参照)。今年早々の上陸が噂されたアップルコンピューターの「iTunes Music Store」という“黒船”は、未だ日本に姿を見せないが、一方で“携帯電話発”の音楽配信システムである着うたフルが、着実に根付いているようだ。
しかし、筆者は今の着うたフルに大きな不満がある。それはせっかく用意されたDRM(Digital Rights Management、デジタル著作権管理)の、柔軟な機能が使われていないことだ。
着うたフルでは、ダウンロードした楽曲の再生期間や再生回数をレコード会社側が設定できる機能が用意されている。「例えば音楽CD発売日まで聴ける着うたフルや、ダウンロード後、数回だけ再生可能なプロモーション目的の着うたフルをレコード会社が用意して、新しい音楽販売のモデルを作ってもらいたいと考えています」(KDDIコンテンツ・メディア本部メディアビジネス部メディアビジネスグループリーダーの神山隆次長)
だがこのせっかくの機能を、レコード会社はほとんど活用していない。着うたフルは本質的に「コンテンツ消費型」のサービスであり、例えば再生10回で50円、48時間のみの再生で100円といった価格設定ならば、新たなニーズと市場を喚起できるはずだ。また、ユーザーに新しいミュージシャンや楽曲を知ってもらうため、音楽CDの発売日まで無料で聴ける着うたフルを積極的に配布するという手もあるだろう。
一部のレコード会社やJASRACは、ユーザーの不利益になる「CCCD(コピーコントロールCD)」技術や、コンテンツの追跡監視システム「ウォーターマーク(電子透かし)」の導入には積極的だが、「パッケージ販売中心の時代」を根本から変えるDRM技術の柔軟な利用には消極的なようだ。しかし、それが本当に音楽産業とユーザーにとって正しいのだろうか。
ユーザーは何も音楽が嫌いになったわけではない。古くさい音楽流通の仕組みに嫌気がさしているだけだ。
着うたフルが活性化する今こそ、音楽業界の側から、ユーザーが合法的かつ安価に多くの音楽に触れられる「コンテンツ消費型モデル」を作って欲しい。レコード会社やミュージシャンがクオリティの高い作品作りを心がければ、消費型モデルで音楽を聴いてくれた人が、CDまで買ってくれるはずだ。重要なのは、音楽の「入り口」を、時代とユーザーの変化にあわせて広げることである。そのためのツールは、すでに携帯電話の中に入っている。
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