「無線でパッチ」の必要性とリスク神尾寿の時事日想

» 2005年04月27日 10時52分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 NTTドコモが率先して採用したこともあり、無線によるファームウェアアップデートはあたりまえの機能になりつつある。筆者も試したが、確かに「不具合発生」の度にキャリアショップに足を運ばなくていいのは便利だ。

 また端末メーカーにとっても、無線アップデートはなくてはならない機能だ。ソフトウェアのバグによる不具合でも「回収交換」となれば、メーカーのコスト負担は大きい。例えば2003年、ソニーはSO503iのソフトウェアトラブル対策だけで約100億円の回収・交換コストの負担を強いられている。

 今後、携帯電話OSの汎用化と複雑化が見越される中で、「無線でパッチ」の次のミッションがウイルス対策に向かうのは自然なことだろう。米InnoPathとMcAfeeが携帯電話をターゲットにしたのは当然であり、今後の必要性が高まる分野といえる(4月25日の記事参照)。携帯電話の場合、PCよりも利用者層が幅広く、リテラシーの格差もある。「広くあまねく安全を」という視点では、無線による自動アップデート機能の標準装備が必要だ。

 しかし、その一方で、トレンドマイクロの「ウイルスバスター」の不具合が約650社以上の企業、そして数万単位の個人ユーザーPCに深刻な障害を与えたトラブルは、ITが社会・生活のインフラになる中で、一企業のミスが深刻な問題を引き起こす「もろさとリスク」を露呈させた。ウイルスバスター不具合のような事件が、将来、急速に社会インフラ化した携帯電話の世界で起きないという保証はない。

 今後の携帯電話に、無線による自動アップデート機能やウイルス対策は必要である。しかし、それを普及させる課程で、1つのミスが大規模トラブルに繋がらないようにする仕組み作りも重要になってくる。メーカー同士の相互補完的な体制も含めて「携帯電話のセキュリティ」市場は拡大していくだろう。

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