競争力が回復──ドコモ株主総会

» 2005年06月21日 21時29分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 NTTドコモは6月21日、都内ホテルで株主総会を開催した。配当など利益処分や、執行役員制度の導入などの議案は滞りなく可決。ここでは、株主からドコモという企業がどう見られているのか、質疑応答の内容を交えて確認していこう。

「競争力が回復している」

 初の減収となった2004年度決算後の総会だったが、ドコモの石川國雄常務からは、「減収要因は、パケット定額の導入による収入構造の変化や、番号ポータビリティ(MNP)を控えた競争激化に対し、将来的な競争力を維持するため」と総括的な回答がなされた。

 音声通話収入の減少が見込まれる中、データ通信による収入増でそれをカバーしていく計画をもって、iモードなどを推進してきたドコモ。ところがKDDIが導入したパケット定額制に引きずられ、定額制を導入せざるを得なかったことが収益構造の変化をもたらした(2004年2月27日の記事参照)

 合わせて、番号ポータビリティ実施が目前に迫ったことで(2004年3月31日の記事参照)、収益性の改善よりも顧客ロイヤリティの向上に力を注がざるを得なかったことが収入に響いた。さらに、FOMAへの移行が「予想以上」(ドコモ)に進んだことで、端末調達や販売にかかるコストがふくらんだ。

 しかしそうした痛みの結果、解約率は四半期ベースで1%を切るまでに改善(5月10日の記事参照)。「5カ月連続でシェアトップとなるなど(6月7日の記事参照)、競争力が回復している。将来に向けた成長の基盤を確立できた」と石川氏は話した。

 中村維夫社長も、「今までは携帯(契約者)の爆発的増加でやってきた。(状況が大きく変わり苦しい状況にあったが)この1年で、そこそこの競争力も出てきた」とした。

新規参入、「低価格だけでは支持を得られない」

 2006年度以降、イー・アクセスやソフトバンクといった企業が携帯事業への新規参入を目指している。ドコモの将来に不安感を抱く株主からの質問が多かったのも、こうした新規参入事業者が、ADSL同様、低価格を武器に攻勢をかけると見られるからだ。

 「固定と異なり、携帯電話事業は端末からサービスまで総合的に評価される。低価格というだけでは支持を得られないと考えている」

 ドコモの辻村清行常務は新規参入への対抗策を問われて、「特に大きな奇策はない。端末、料金、サービス、そしてアフターサービス。それぞれを磨くのが一番の防衛策」だと述べた。

子供の位置を、親が把握できる商品も

 新しい取り組みについてはあまり触れなかったが、唯一、安全に対する対応を問われ、榎啓一常務は、「子供に持ってもらって、親が常に位置を把握できる。そういった商品も企画している」と回答。

 現在のところGPS機能付の端末は2GのPDCで1機種のみだが、今後位置情報を活用した商品も準備していることを明かした。

安定した? 成長を期待されるドコモ

 これまで海外投資で「1兆1000億の損失」(辻村氏)などを出しながらも、順調に成長してきたドコモ。しかし初めての減収決算に続き(5月10日の記事参照)、番号ポータビリティや新規参入を控えるなど油断できない状況が続く。

 これらを反映して株価も低水準にある。「低迷していることは心苦しく思っている。重大な関心を持ちながらやっている」と中村社長。3Gの映像サービスや海外ローミングなどのトラフィック面での利用を促進するほか、クレジットカード事業などノントラフィックの面でも積極的に取り組むとした。

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