購入前の携帯、触って試せない?

» 2005年07月08日 17時30分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 携帯電話を選ぶときに、実際に触って動作を確かめてから購入している人はどれだけいるだろう。実際のところ、都心での販売の主力である家電量販店では多くの場合、展示しているのは模型のみだ。

 「家電量販店で展示されている携帯はなぜ模型なのか。PCでいうなら電源を入れないでPCを展示しているようなものです。レスポンスとかいろいろ試すことができないので非常に不便です。デジタルカメラなども電源は入れることができますし、模型を展示している機器がほかにあるでしょうか?」(編集部に寄せられた読者からのメールより)

 このユーザーは、模型のみを触って携帯電話を購入したため、実際の動作に満足できないでいる。

 「ムーバからFOMAに変更したのですが、ボタンレスポンスの反応が非常に遅くストレスを感じました。こんなことならFOMAに変更しなかったかもしれません。もしくは試せていたなら納得ずくで変更したかもしれません。少なくとも悪い印象にはならなかったと思います」

 なぜ店頭に展示されているのは模型なのか。普通の家電と同様に、実機を展示することはできないのか。

冠ショップであれば、実機で試すことも

 量販店などではほとんど実機に触ることはできないが、試せる店舗もある。

 「実際に操作したいというお客様もいるので、ボーダフォンショップで申し出ていただければ大丈夫。店舗にもよるが、少なくとも渋谷の店舗にはそろえている」(ボーダフォン)

 「ツーカーステーションやツーカーショップで言えば、電話番号入りのデモ機の用意がある。関東圏の直営店であれば、ほぼ現行機種のデモ機はそろっている」(ツーカーセルラー東京)

 店舗数は都内では新宿と秋葉原だけだが、「ウィルコムプラザで言っていただければ、電話番号入りのものを用意している」(ウィルコム)。

 と、各社は自社の名前を冠したショップについてはできる限り“動作する”端末を用意している。ドコモとKDDIについても状況は同じだ。

 では家電量販店などで、触れる端末を用意できないのはなぜなのか。

 「ドコモショップでは電話番号入りの端末をさわれるよう用意しているが、家電量販店などでは(量販店に端末を卸している)各代理店の判断となる」(ドコモ)

 「auショップとPipit(トヨタ系のショップ)には、実機が基本的にある。ただし代理店が配分しているので、一部機種についてはない場合もある」(KDDI)

 両社とも、販売の現場は代理店が仕切っているので関与しないというスタンス。では代理店は量販店などに実機を出しているのかというと、そうでもない。

※都心部では多くの量販店で、電波の送受信はできないが電源の入るモックアップが用意されているというご連絡をいただきました。付記させて頂きます

モックで買える商品と、買えない商品

 代理店判断と言っても、代理店にしてもコストをかけて電話番号入りの端末を用意するのは難しいというのが実情だ。コストの面はもう少し説明が必要だろう。店頭で高くても3万円程度、機種によっては0円で売られている携帯電話だが、モノとしての値段はそんなに安いものではない。

 携帯各社は1台当たり3万円程度の契約補助金を販売店に出しており、この仕組みが安価な販売を可能にしている(2003年2月6日の記事参照)。例えば5万円で仕入れた端末を、番号を入れて3万円で売れば、補助金が3万円付いてくる。それで初めて利益が出る。店頭に並べておくだけでは5万円分がそのままコストになるわけだ。

 ユーザーから“実機で確認したい”という声が出るのも、携帯電話が単に通話ができればいい商品から、マルチメディア機器に変わってきているからにほかならない。ユーザーが機種を選ぶ理由も、カメラ機能や音楽機能などいわゆるAV家電的な機能が中心になってきている。

 実機で確認できずに購入したものの、イメージと違っていた──。携帯購入に関するそんな話は、枚挙にいとまがない。こうしたことが、大きなイメージダウンにつながる。“お客様第一”をうたう携帯各社だが、“電話機然”とした販売方法が続いているのは、意識が電話販売から抜け出せていないからではないだろうか。

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