モンタビスタ、リアルタイム性能を強化した携帯向けLinuxを開発

» 2005年09月07日 23時14分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 モンタビスタは9月7日、商用組み込みLinuxの最新バージョンと、その開発環境である「MontaVista Linux Professional Edition 4.0」(Pro4.0)を発表した。携帯端末や基地局のメーカーなどを中心に、組み込みOSを必要とする各種機器メーカーやソフトウェアメーカーへ提供する。

リアルタイムOS並みに応答速度を速めたLinux

 Pro4.0は、Linuxカーネル2.6.10をベースとしているが、通常のカーネルに比べて応答速度を非常に高速にしているのが特徴。「リアルタイムOSに匹敵する応答速度」(モンタビスタ)を実現している。

 同社では以前より、リアルタイム性能を上げるための改良を進めており、ベンチマーク結果も公開している。鍵になるのは、あるタスクを実行しているときに、次のタスクの割り込みができるようにスケジューリングする技術だ。これによって、OSの処理性能は下がるが、タスク割り込みへの時間は短縮できるようになる。

 携帯電話では、例えばメールを読んでいるときに着信があるなど、複数のタスクをすばやく切り替える必要がある場面が多い。また、通信はベースバンドチップが担当するなど、OSそのものに処理性能が求められないことが多い。そのため、スループットが上がらなくても、タスク切り替えの速度を上げることが重要になるのだ。

 通常のLinux カーネル2.6でも、実行パスの途中でタスクの割り込みが可能なプリエンプタブルカーネルを適用できるが、その場合でも割り込み応答時間の最悪値は500マイクロ秒程度だ。これに対しモンタビスタでは、100マイクロ秒程度と、約5分の1に応答時間を短縮している。

1番上が通常のカーネル2.6、3番目がプリエンプタブルカーネル、1番下がPro4.0のリアルタイムプリエンプション。赤い部分が割り込み不可能な時間、緑の部分が割り込み可能な時間。Pro4.0のリアルタイムプリエンプションでは、ほとんど全プロセスで次のタスクの割り込みが可能であることが分かる
縦軸がサンプル数、横軸がタスク割り込みにかかる応答速度。カーネル2.6のプリエンタブルカーネルの場合(上)と、Pro4.0のリアルタイムプリエンプションの場合(下)とで割り込み応答時間の最悪値を比較すると、2.6のプリエンタブルカーネルでは500マイクロ秒程度だが、Pro4.0では100マイクロ秒程度だ

 最近の携帯電話では、ドコモのFOMA端末を中心に、Linux OSを採用しているものが増えている。モンタビスタの調査によれば、「携帯端末の開発メーカーが最も気にするのはLinuxの応答性」だという。携帯電話の高機能化が進み、マルチタスクが当然になるにつれて、タスクの切り替えの速さ、つまりOSの応答性が問われるようになってきている。モンタビスタは特に携帯開発メーカーをターゲットとしているため(2月9日の記事参照)、リアルタイム性能の強化を重視してMontaVista Linuxの開発を進めている。

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