次のターゲットは「ロードサイド決済」市場 神尾寿の時事日想:

» 2005年11月04日 12時21分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 11月2日、駐車場業界最大手のパーク24が、コイン式駐車場「タイムズ」にJR東日本の電子マネー「Suica」を導入すると発表した(11月3日の記事参照)。11月4日からタイムズステーション川崎から対応し、「今後、タイムズの駐車場精算機におけるSuica導入拡大を検討していく」(パーク24)という。

 パーク24は以前から駐車場のIT化に熱心な企業で、駐車場オンライン管理システム「TONIC (Times Online Network & Infomation Center)」の導入、クレジットカード決済への対応を行ってきた。また、パーク24が管理する駐車場は全国5800カ所、駐車可能台数は約12万台と業界随一。JR東日本の“お膝元”である関東1都6県に限っても、駐車場約3200カ所、駐車可能台数は約5万8000台に上る。

 パーク24は昨年9月、代々木にビットワレットの電子マネー「Edy」が利用可能な「タイムズドコモタワーサイド」をオープンさせた。しかし、これはあくまで実験段階という位置づけであり、当時から「JR東日本のSuicaも検討している。例えば電車への乗り換えや駅周辺の繁華街の利用には(JRと連携する)Suicaの方がいいという考えもある」(パーク24担当者)とコメントしていた。

 ITSの視点では、公共交通の決済手段と駐車場などロードサイドの決済手段が統一されることは、ユーザーや道路行政の視点でも都合がいい。シームレスな電子決済環境が整えば、利便性が向上できるだけでなく、パーク&ライドのように公共交通への乗り換えをした際の割引サービスがしやすいからだ。

 Suicaは来年、東京メトロなど私鉄各社が導入する「パスネット」との相互乗り入れが予定されており、首都圏の標準的な電子乗車券システムに発展する可能性が高い。Suicaバリューを共有するSuica電子マネーは、公共交通とクルマの連携という点でロードサイド決済と手を組みやすい立場にある。

全国区で見ればEdyにもチャンスがある

 今後、パーク24がSuica電子マネーの導入を積極的に進めれば、ロードサイド分野でSuicaは大きくリードする。特に鉄道利用率の高い東京圏で考えると、"都市型のロードサイドビジネス"との連携で有利な立場になるだろう。

 しかし、ライバルのEdyもコスモ石油やガソリンスタンドチェーンの宇佐美グループ、ニッポンレンタカーなどに採用実績がある(5月20日の記事参照)。特にEdyが有利なのが、全国区で展開するサービスであり、クルマ依存率が高く、ロードサイドビジネスの重要性が高い地方での展開がしやすいことだ。さらにSuica電子マネーに比べて、顧客企業のCRM活用に力点を置いている点も(7月13日の記事参照)、中小規模の店舗チェーンも多いロードサイドでの導入を考えれば有利である。

 今後、電子マネーや非接触IC型クレジットカードサービスの競争領域がロードサイド市場に広がるのは間違いない。この市場には、道路に隣接する様々な業種・様々な規模のビジネスが溢れかえっている。市場開拓の難易度の高さと可能性の大きさでは、鉄道や航空関連の周辺ビジネスを上回る。

 SuicaとEdyの競争だけではない。おサイフケータイの今後にとっても、ロードサイド市場は重要だ。そして、その開拓は、既存のリアルビジネスとITSの両方からアプローチしていかなければならないというのが、筆者の持論である。

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