ドコモ=タワレコ提携の狙いと有効性神尾寿の時事日想

» 2005年11月08日 04時02分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 11月7日、NTTドコモが音楽ソフト販売最大手のタワーレコードと資本・業務提携をすると発表した(11月8日の記事参照)。筆者は現在、海外出張中で記者発表会には参加できなかったのだが、ドコモの当面の狙いはタワーレコードを“ショーケース”として使い、おサイフケータイの普及を促す点にあるようだ(11月7日の記事参照)

 本コラムでも度々取り上げているが、おサイフケータイの普及は“リテラシーの普及”と同義である(10月28日の記事参照)。おサイフケータイは使い始めれば満足度が高く、ユーザーの継続利用意欲も高い。しかし、従来の携帯電話コンテンツサービスと異なり、ユーザーに利用を促し、リテラシーを高めるには、小売店など「リアルな場所」の整備と協力が不可欠だ。

 おサイフケータイの早期普及を目指すドコモは、トルカや新クレジットサービスなど、意欲的な新サービスを着実に準備している。しかし、これら新たなサービスを「リアルな店舗」に採用してもらい、ユーザーに新たなリテラシーを広めるには、初期の導入事例が必要だ。従来の携帯電話コンテンツなどと異なり、おサイフケータイ関連の機能やサービスは携帯電話の中で完結しないため、新しいものが登場するたびに「鶏卵のジレンマ」が発生することになる。

 この鶏卵のジレンマを突破するには、端末開発・販売やコンテンツ流通プラットホームの時と同じく、キャリアがおサイフケータイ利用を促す事業者のビジネスに関わることが手っ取り早い。これは短期的には、おサイフケータイの「リテラシーの普及」に役立つ。

 さらに中長期的な見地では、おサイフケータイは携帯電話産業に新たなバリューチェーンを構築しつつあり、ドコモがそこに強くコミットする事は、新たな市場での優位性確保に貢献する。タワーレコードとの提携はその端緒であり、今後もドコモは様々な業界の中心的な企業と提携していくだろう。

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