来年のトレンドは「ケータイ+電子マネー+クレジットカード」の融合と競争(後編) 神尾寿の時事日想:

» 2005年11月14日 12時27分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 クレジットカード分野とあわせて、動きが激しくなっているのが電子マネー分野だ。既報の通り、ローソンとセガがJR東日本の「Suica」の採用開始を発表した。この中でセガは、先のパーク24(11月3日の記事参照)と同様に、当初はビットワレットの「Edy」を採用している。

 Suicaは最近、急速に勢力を伸ばしてきており、来年1月のおサイフケータイ対応までにどれだけの採用事業者を獲得できるかが重要なポイントになっている。特に全国区の事例が増やせるかどうかは、「おサイフケータイにプリインストールされる」かをめぐり、重要な鍵になる。“JR”という巨大な公共交通事業を背景に持つSuicaは、首都圏では強力な電子マネーだが、その地域性が足かせにもなっているからだ。全国で販売されるおサイフケータイにSuicaアプリが標準搭載されるには、「全国で使えるSuica」の事例を増やさなければならないだろう。

金融機関の電子マネー採用にも注目

 もうひとつ、電子マネー分野の動向で注目なのが、銀行など金融機関の動きだ。すでに三井住友銀行がEdyのオンラインチャージへの対応を発表するなど連携の動きが出ているが、来年以降はさらに金融機関と電子マネーの連携・融合が進む可能性が高い。

 例えば、郵政公社が平成18年10月から導入する新型ICキャッシュカードに、EdyとSuicaどちらかの電子マネー機能が搭載できるようになる。三井住友FGとドコモの「iD」のように、銀行系クレジットカードと電子マネーの融合も進むだろう。いろいろな形で、金融機関は電子マネーとの接近を図るはずだ。この中でSuicaとEdyが、どれだけのパートナーを獲得できるかが、将来の勢力図にとって重要であるのは言うまでもない。

 おサイフケータイは、クレジットカードやデビットカードが開拓しきれなかった「少額決済市場のキャッシュレス化」を実現しようとしている。おサイフケータイの強みは、1つの端末に複数の決済手段が同居できることであり、「電子マネー+クレジットカード」というようにシームレスな利用環境を作れることだ。そして、それはSuicaとEdyの競争のように、おそらくは2〜3の陣営に分かれた勢力争いになるだろう。

 「電子マネー+クレジットカードの融合と競争」の展開は、来年の携帯電話ビジネスにとって特に注目のポイントになりそうだ。

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