Nokia Eseriesの上陸は、日本市場にとってもプラスになる神尾寿の時事日想:

» 2005年11月18日 18時52分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 11月17日、オーストラリアのシドニーから、Nokiaのプライベートイベント「Destination Nokia」の詳報が続々と届いている(11月16日の記事参照)。それらの記事の中で特に筆者が共感したのが、ノキア ジャパン エンタープライズ・ソリューション事業部の森本昌夫氏の「日本の携帯市場を、もうちょっと世界のスタンダードにもっていきたい」という言葉と、Eseriesを日本上陸させたいという姿勢だ(11月17日の記事参照)

 日本でも昨年後半から海外メーカー製端末の導入が話題になっており、Nokiaや韓国Pantech&Curite製の携帯電話が発売されている。しかし、それらは日本市場向けに無難にまとめられたパッケージで、日本の端末市場に一石を投じるような「黒船」とは言えない。

 先のコラムでも書いたが(11月15日の記事参照)、日本市場に足りないのはスマートフォンだ。特にフルキーボード付きスマートフォンを開発する意気込みが足りず、UI開発のノウハウがほとんどない。

 確かに現状の日本の携帯電話市場からすれば、そういった端末はニッチかもしれない。だが、海外市場の動きを見ていると、ホワイトカラーなどハイエンド層から始まったスマートフォンのニーズやUIが、一般層にもじわりと広がっているように見える。携帯電話の次世代UIの主流がキーボード型になっていったら、スマートフォンで出遅れて、この分野のパッケージング能力で劣る日本メーカーは苦戦する。筆者が言うまでもなく、モバイル端末のUI開発の重要性と、市場に受け入れられるモノが一朝一夕では作れないことは、メーカーとキャリア自身がよく分かっているはずだ。

海外メーカー製はスマートフォンを積極的に導入すべき

 先日のコラムの繰り返しになるが、当初の市場規模が小さくても、日本にスマートフォン市場を作り育てていく必要がある。しかし、欧米スマートフォン市場に足がかりをほとんど持たない日本の携帯電話メーカーが、極めて小さな日本のスマートフォン初期市場のためにオリジナルの端末を出すのは、ビジネス的にみて難しいだろう。ならば、海外メーカーの力を借りるというのは現実的なシナリオだ。

 今回、NokiaはEseriesの日本市場投入に前向きな姿勢を見せているが、日本キャリアはこれを積極的に受け入れてはどうか。Nokiaだけではない。PalmOneやLGなど他の海外メーカーも、スマートフォン分野を中心的に受け入れて、日本のスマートフォン初期市場を創出する。その際、キャリアはフルブラウザやPOPメールは定額制の適用外にするといったケチくさいことはせず、スマートフォンという新しいジャンルを日本に根付かせる度量の広さにも期待したい。

 一方、日本メーカーはそれら海外製スマートフォンの市場における受容性を見て、より日本市場のニーズに合致したスマートフォンを作り始めればいいだろう。iモードに代表されるコンテンツサービスやおサイフケータイなどは日本市場が先行している分野であり、それらの機能の搭載は日本メーカーの強みになるはずだ。将来的な海外進出を視野に、海外メーカーのスマートフォンと切磋琢磨すればよい。

 過去を振り返ると、日本に引きこもらなかったものだけが国際的な競争力を得て、日本を支える産業になっている。自動車産業はその代表例だ。逆に初期の和製パーソナルコンピュータなど、日本市場の独自性に閉じこもったものは、グローバル市場の波に押しつぶされて日本メーカーの復活に時間を要することになった。

 iモードやおサイフケータイなど、独自の優れたサービス/端末を作り上げてきた日本のキャリアとメーカーは高い能力を持っている。スマートフォン分野でも、海外メーカーと切磋琢磨すれば、世界に通用する製品やサービスが作れると筆者は信じている。Nokia Eseriesのような黒船を受け入れて、まずは新市場の創出に踏み出すべきだ。

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