数カ月なんて言わず、“無限繰り越し”なんてどうでしょう

» 2006年01月26日 01時50分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 もともと「翌月繰り越し」といえば、ボーダフォン(当時のJ-フォン)が始めたのが元祖。そこにドコモが繰り越し期間を延長して乱入。それならば! と、KDDIは3カ月に延長してサービスを開始する。

 この繰り越しサービス、分かりやすいようでいて、実はけっこう奥が深い。キャリアの視点、ユーザーの視点からちょっと考えてみよう。

余る人はいつも余る、足りない人はいつも足りない

 ユーザーから見たら、1カ月繰り越しより2カ月、それより3カ月、さらにいうなら永遠に繰り越せるほうがいいに決まっている。

 しかし、本当に繰り越しによる割引き効果があるのは、「先月はあまり使わなかったけど、翌月はいっぱい使う」というユーザーの場合だ。毎月の利用量が安定しているユーザーの場合、繰り越しを行ってもキャリアに損はない。これはどういうことか。

 例えば、毎月無料通話を余らせるユーザーの場合、結局繰り越された無料通話分が使われることはない。1カ月目で2000円余り、2カ月目で繰り越しと併せて4000円となり……と増えるだけだ。逆に、毎月無料通話を使い切るユーザーの場合も損はない。繰り越しが起こらないからだ。

 要するに、余る人はいつも余る、足りない人はいつも足りない──という状況ならば、当然のことながら、キャリアには全く損がないというわけだ。

無限繰り越しってどう?

 さて、1カ月繰り越しから2カ月、3カ月と増えてきた繰り越し期間。では、無期限に繰り越せるようにしてしまったらどうなるだろうか。

 まず“無期限繰り越し!”とうたったときのインパクトは相当なものがあるだろう。もう2カ月とか3カ月とかは大同小異になってしまう。定額制がやってきたようなものだ。利用者のキャリアに対するロイヤリティは間違いなく上がる。

 しかも囲い込み(リテンション)効果も高い。繰り越し金額が積み上がって10万円くらいになったら、この無料通話分を捨ててまで、ほかのキャリアに移ろうと思う人は少ないはずだ。

 高い料金プランに変えても、無料通話は無駄にならないし、1分あたりの通話料も安くなる。ユーザーにしてみれば、高いプランを選ぶインセンティブが高くなるわけだ。そうはいっても実際の利用が大幅に増えるわけではないので、キャリアにとってみれば毎月の収入が増えて、設備負担のほうはそんなに大きくならない。

 もちろん、無限繰り越しなんてやったら、最終的にキャリアの負担が大きくなりすぎて実現不可能だという議論もあるだろう。しかし、どれだけ繰り越そうとも、そもそも無料通話分は通信に使われることを想定して予め払ってもらった料金だともいえる。※

 繰り越すたびに無料通話分が増加する人は、よっぽど気合いを入れないと使い切ることはない。また毎回使い切ってしまう人は、そもそも繰り越しの恩恵に与ることはない。先ほどと同じ、利用量に大きな変動がないユーザーに対しては、無期限に繰り越せてもキャリア側に大きな影響はない。

 ユーザーにしてみれば、来月、再来月のために貯金をしている感覚に近いかもしれない。それでいて、利子もつかないのだから、キャリアが一方的に損だというのはおかしいだろう。もちろん、使い切れないことを前提に無料通話分付きという料金プランを作ったという、そもそもだますのが前提のプランだというのなら話は別だが……。

 しかもキャリア側には一発リセットの大技もある。実は、途中で料金プランを変更すると繰り越し分がすべて消去されるキャリアもあるのだ。いったん高額なプランを契約して繰り越し分が増えていったら、安価なプランに変更することもままならない。高額の終身保険に入ってもらったような、おいしいことになるわけだ。

 この無期限繰り越し、実現すればユーザーにとっても分かりやすいし、お得感は満点。少なくとも、某クレジットカードの“永久不滅ポイント”に匹敵するインパクトはあると思うのだが、いかがだろう。

※無料通話分が2000円あっても、これは1カ月間、あるいは繰り越すことで2カ月、3カ月間しか有効でない価値だから、額面金額そのものではなく、3割とか4割とか割り引いて考えるべきだ、という議論は確かにある。


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