「携帯アプリはクリーチャー(生き物)になる」――ジェイコブス氏基調講演BREW 2006 Conference

» 2006年06月05日 22時46分 公開
[林信行,ITmedia]

 米Qualcommが主催する毎年恒例の開発者会議、「BREW 2006 Conference」がカリフォルニア州サンディエゴ市で開幕した。例年通りQualcomm Internet Servicesの社長、ペギー・ジョンソン氏がイベント開幕のあいさつを行った後、Qualcomm CEOのポール・ジェイコブス氏がキーノートスピーチを行った。

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 冒頭ではヒップホップのシンガーとダンサーが、この講演のために作ったという曲を歌いながらダンスを披露。曲のタイトルは「BREW YOUR WAY」で、これがそのまま、今年のイベントのキャッチフレーズとなっている。BREWのプラットフォームを使って、開発者やコンテンツプロバイダ、キャリアに、各自のやり方にもっとも適したやり方でアプリケーションやサービスの開発、提供をしてほしいという意味だ。

 一方でジョンソン氏は「BREWがモジュラー型のプラットフォームであることを活かし、今後はよりターゲットを絞りこんだマーケティングも積極的に展開していく」と言う。第1のターゲットに選ばれたのが携帯ゲーム市場だ。同氏は講演でBREWゲーム用の「brew gaming」というロゴマークを発表した。なおQualcommは講演直前に、BREWのゲームデベロッパーにプロモーションや販売などまで含めた包括的ソリューション・パッケージ、「BREW Signature Solutions for Gaming」を発表している。

発展するBREWコミュニティー

 基調講演でポール・ジェイコブス氏は、「携帯事業に参入するのに今ほど最適な時期はない」と力説する。

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 「2006年に、世界全体のデータ通信への出費は26%増になると言われており、今後5年間で見れば85%増になると言われている」。ジェイコブス氏はまた、BREWベースのアプリケーションやサービスの累計売上も順調だと話す。実際、昨年6月のBREW 2005 Conference時点での累計売り上げは3億5000万ドルだったが、今年はこれが7億ドルに倍増した。

 同氏は今後も好調を維持すべく、BREWプラットフォームで「完全にパーソナライズされたインタフェースによる前代未聞の便利さ、(BREWアプリケーション/サービスの)マーケットチャンネルの多重化、リッチかつ魅力的なインタフェース、そしてすべての開発者に自由に表現してもらえるようなプラットフォーム」の提供を目指すとコメント。そのためにもBREWをリッチなモジュール構造のプラットフォームにしていくと話した。

 ジェイコブス氏は続けて、社内で“Creature”(生き物)と呼んでいる今後の携帯アプリのあるべき姿の例を紹介する。次世代アプリは「ユーザーの予定や居場所を把握して状況に応じた情報を表示すべき」であり、「ソーシャルネットワークなどを活用して、友人などの情報も引き出す」べきだという。

 同氏が最初に紹介したのは、航空チケット管理のアプリケーション。次の旅行先のチケットが、マイレージカード番号と一緒に表示されるというものだった。2つ目はデジタルビデオレコーダーの録画予約設定のアプリケーションだ。レコーダーに録画した番組を視聴することもできれば、視聴した番組に5段階評価をつけたりといったこともできる。

 「こうしたアプリケーションの配布方法は何通りも考えられる。オンラインからダウンロードしてもらう手もあれば、レコーダーと一緒に配布する方法、テレビ番組のプロモーショングッズと一緒に配布という方法もある」

 3つ目はBREW 2006 Conferenceのようなイベント向けのCreatureで、カンファレンスの詳細なスケジュールや登録情報、スピーカーに関する詳細情報なども読むことができるというもの。4つ目はカレンダーとの連携のデモだった。Creatureは、携帯電話のカレンダー情報とも密接に連携し、例えば友人の誕生日など記念日の情報も表示できる。ジェイコブス氏がカレンダーの誕生日マークからFrankという友人の情報を引き出すと、今度はソーシャルネットワークから彼のお気に入りバンドの情報を引き出し、さらにはそのバンドのコンサート情報を調査、チケットを購入し、最後にはその彼にコンサートのチケットを携帯電話経由で送るという流れをデモしてみせた。

 5つ目はスポーツ情報のデモだ。好きなスポーツチームの情報をメール配信するサービスはあるが、今後は例えば好きな野球チームの試合情報をライブで受け取れるようになるという。スクリーンに映し出された携帯画面には、スコアはもちろんだが、ピッチャーの投球情報や打撃状況がリアルタイムに(アニメーションで)表示される。さらに試合のハイライトの動画を見たり、それを保存したり、友人にリンクを送ったりする、といったことも可能だ。6つ目はパーティー主催者向けのCreatureだ。招待した客の1人がパーティーでおとなしくしている。そこでソーシャルネットワークから彼の好きな曲の情報を引き出して、パーティーで流す音楽に加える、というもの。


 これらのアプリケーションはいずれも架空のものだが、uiOneなどのBREWのプラットフォーム技術を使って簡単に実現できるという。「BREWでつくるアプリケーションの可能性は無限にある」(同氏)

3G技術で発展途上国を助ける

 ジェイコブス氏は、3G携帯の次世代アプリを提案する一方で、3G携帯のまったく異なる活用方法も紹介した。こちらは架空ではなく、同社が既に現実に活動しているもの――「Wireless Reach」という、発展途上国をサポートするプログラムだ。

 同プログラムは、政府や大学、ほかの企業との連携によって途上国を教育、政府活動、環境問題、医療そして公共安全の観点からサポートしようというもの。例えばインドネシアの電話がほとんどない地域には、携帯電話技術を使った公衆電話を設置した。コンゴでは1X EV-DOのモデムを内蔵したノートPCを寄贈し、緊急医療の情報を引き出せるようにした。また中国では、盲人学校にGPS内蔵の子供用携帯電話を100台寄贈し、親がWebブラウザを使って子供の居場所を探せるようにした。

 同社はさら100万ドルの基金を準備している。そのうち50万ドルは、同分野でいい提案のあるBREW開発者に提供する。残る50万ドルは、募集した提案を現実のサービスとして実施するための資金として用いられるという。Wireless Reachプログラムの詳細は7月15日以降に公表予定だ。



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