記者は以前から、常々不思議に思っていたことがある。それは、携帯サイトで表示される広告(モバイル広告)の極端な偏りだ。
キャリアの公式サイトに表示される広告(レップ広告)は、多くが公式サイトに登録されているコンテンツプロバイダなどが広告主となって出稿しているものだ。そして、いわゆる「勝手サイト」に表示される広告は、出会い系や消費者金融といった、ちょっとアングラな匂いがするものが中心になっている。テレビや新聞雑誌、あるいはPCのWebサイトを見る限り、これらの広告主は主役ではない。携帯向けサイトに限って、どうしてこんなに広告主が偏っているのだろうか?
そんなモバイル広告の世界に、PC向けWebサイトと同じ、検索エンジンマーケティング(SEM)の仕組みを持ち込もうとしている会社がある。携帯向けの広告市場は伸びているといわれるが、なぜこんなに特殊なのか。また、他のサイトと同じように伸びていくのか? 携帯向けサイトでの検索連動型広告を手がける、サーチテリア社長の中橋義博氏に話を聞いた。
サーチテリアの話に入る前に、まずモバイルとPCを合わせた、ネット広告の現状について見ていこう。下に示したのは、バナー広告やテキスト広告、メール広告、SEM広告(詳しくは後述)などを全て含めた、広告費全体の規模である。
年 | 2004年 | 2005年 |
---|---|---|
PC用サイト向け広告 | 1800億円 | 2800億円 |
モバイル(携帯用サイト向け)広告 | 180億円 | 288億円 |
大ざっぱに見て、モバイル広告の規模はPC向け広告の約10分の1しかない。しかも携帯の場合は、3キャリアそれぞれに広告を用意しなくてはならず、手間は3倍かかってしまう。規模が小さい上、余計に手間がかかるのであれば、広告主にとってモバイル広告市場は魅力があるものにはならない。
またモバイル広告は、各キャリアの公式メニュー内で扱われるレップ広告と、それ以外の勝手サイトの広告、そしてメール広告などに分けられるが、冒頭に書いたようにレップと勝手サイトでは広告主が偏っている。つまり一般の広告主が幅広く広告を出すには難しいのが現状なのだ。
一方、PC向け広告の世界で現在最も成長しており、主流になりつつあるのが、SEM広告である。Search Engine Marktingの略で、「リスティング広告」とも言われる。
PC用サイトで検索エンジンにキーワードを入力し、検索をかけると、通常の検索結果とは別に、そのキーワードに関連する企業広告が出てくるのを見たことがあるだろう。これがSEM広告で、Googleの「AdSence」やYahoo!(旧Overture)の「スポンサードサーチ」などが代表例だ。
SEM広告には大きな特徴がある。一般にバナー広告やテキスト広告、あるいはメール広告の場合、広告を出す媒体にどれくらい読者がいるか、どんな読者が付いているかによって値段が変わる。単純に言えば、読者がたくさんいて、自社の広告がその読者層にマッチしていることを期待して広告費を払うわけだ。影響力がある媒体だと思えば、実際にその広告の効果が出ても出なくても、広告費は高くなる。原則として広告の価格は、1回露出されるあたりの単価×露出される回数で決まると思っていい。これに対してSEM広告は、広告が表示されるだけでは料金が発生せず、広告をユーザーがクリックして初めて課金される。そして広告の価格は、媒体の読者数とは関係なく、1クリック当たりの単価×クリック数で決まるのだ。1クリック当たりの単価は、広告主が入札した額になる。
このSEM広告の手法を、モバイル広告の世界に持ち込もうとしているのがサーチテリアだ。しかし特許の関係から、OvertureやGoogleの仕組みをそのまま携帯の世界に持ち込むことはできなかったという。サーチテリアのSEM広告は、どのような特徴があるのだろうか。
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