MNP開始初日、各社の足並みは? 神尾寿の時事日想:

» 2006年10月24日 21時27分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 10月24日、ついにこの日が来た。携帯電話の番号ポータビリティ制度(MNP)の開始である。今年に入ってからはMNPのメリットや利用率が低いというレポートも目立つが、この数年間、携帯電話キャリアとメーカーが“今日”を目指して努力してきたのは言うまでもない。その結果、各キャリアの競争は促進され、MNPを利用する予定のないユーザーも、サービス改善や魅力的な新端末、割引プランの拡充といったメリットを享受している。競争自体はこれからが正念場であるが、まずは各キャリアとメーカー関係者のこれまでの努力に敬意を表したいと思う。

 さて、MNP開始初日、筆者は都内各所の家電量販店とキャリアショップに足を運んだ。今日はその主観をもって、各社の初日の足並みを評価したいと思う。

903iがもう少し早ければ……

 「903iが早く欲しい」

 これは先月、多くのドコモショップ関係者が口にしていた言葉だ。ドコモの903iシリーズは、「隙のない」優れたラインアップ・サービスとして完成したと筆者は評価しているが、MNP初日に間に合わせるには投入がやや遅すぎた。実際、10月24日に滑り込みで発売が間に合ったのは、シャープの「SH903i」だけである(10月24日の記事参照)

 家電量販店やドコモショップでは、すでに先代902iSが値下げされ、先々代の902iと702i/iSシリーズにはバーゲンプライスがぶら下がっている。そのため店頭でのボリューム感や端末の価格競争力で、決して他社に見劣りしているわけではない。だが、ドコモの主力ラインアップが90xシリーズであることを鑑みると、その最新モデルである903iシリーズが出揃わないと、店頭で画竜点睛を欠く印象は否めない。また、これまでのドコモ端末は、メールの基本的なスペックで他社よりやや見劣りしたため、他キャリアユーザーを受け入れるのは903iシリーズが最適だろう。MNP開始直後の商戦が本格化する今週末から来月頭にかけて、どれだけ多くの903iシリーズが店頭に並ぶか。そこが注目である。

淡々とユーザーを獲得するau、話題性作りで成功したソフトバンク

 ドコモに挑戦する立場のauは、新端末・新サービスの発表が8月下旬と早かったため、店頭での新鮮さは減少している。新端末の値下がりも進んでおり、秋冬端末が十分に熟した状況だ。淡々と、だが確実にユーザーの獲得に注力している印象だ。

 auで特に注目なのが、売れ筋であり、過去モデルの利用者満足度も高いカシオ製と日立製作所製の端末の動きだ。都内の家電量販店では、「W43CA」「W43H」ともにMNPに合わせた値下がり傾向が見え始めており、割安感が出てくれば他キャリアユーザー獲得の武器になりそうだ。その半面、auの不安は、新鮮味や話題性のある新端末・新サービスがMNP開始前後にないことだ。ドコモの903iシリーズが今後続々登場し、ソフトバンクが料金面での話題作りに成功した以上、今年中にauも新たな一手を指す必要がありそうだ。

 一方、MNP初日の話題づくりで最も成功したのがソフトバンクモバイルである。

 新端末・新サービスの投入タイミング、MNP開始前日となった昨日の「予想外割」など新料金プランの発表タイミングはまさに絶妙だ(10月23日の記事参照)。ソフトバンクモバイル執行役副社長の松本徹三氏のインタビューで、「ソフトバンクモバイルはもともとフォワード(営業・マーケティング)が強い会社」という言葉があったが、これは確かに事実である(10月16日の記事参照)。今回のMNPにおいて、ソフトバンクモバイルは不利な立ち位置だったはずが、MNP開始初日は一番目立つ存在になっていた。

 むろん、携帯電話ビジネスは内実が伴わなければ長期的なユーザーの支持が得られない。特に、先に導入されたスーパーボーナスや今回の「予想外割」など新料金プランには評価の分かれる部分がある。この点は後日、別の機会として評価したいと思う。

 また、ソフトバンクモバイルは3Gエリアの整備で、未だドコモやauをキャッチアップし切れていない。予想以上に話題づくりのうまさを見せつけた同社だが、MNP開始後の長期戦で生き残るには、その話題性に見合うだけの内実を急ぎ整えていく必要がある。

 ドコモ、au、ソフトバンクモバイル。三者三様の強さと課題を抱えながら、MNP開始初日を迎えた。MNP自体は継続的に続くものだが、大きな変化は今後半年で起きるだろう。その行方に注目するとともに、その結果が携帯電話産業のさらなる発展に繋がるものになることに期待したい。

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