インテル、医療現場のIT化を推進

» 2006年11月13日 19時28分 公開
[ITmedia]

 インテルは11月13日、東京都内でヘルスケア事業戦略について説明を行った。ネットワークの有効活用や標準化されたプラットフォームによる医療サービスのIT化を推進する。

 冒頭、同事業を担当するマーク・ブラット氏(米Intelグローバル・ヘルス・ストラテジー ディレクター メディカル ドクター)は、「医療情報の電子化により、患者主体の医療サービスと医療従事者の高度な医師決定を支援する」と挨拶。汎用なネットワーク環境とモバイル端末、RFIDを活用したソリューションを紹介した。

「IT投資のROIを高めることが重要」と語るマーク・ブラット氏 「IT投資のROIを高めることが重要」と語るマーク・ブラット氏

 病院内に無線LAN(IEEE802.11a/b/g)を導入することで、看護士や医師はモバイル端末を使い、診察したその場で患者の状態をデータベースに送信できる。カルテの内容を電子化し、遠隔地の医師同士や患者の家族とも情報を共有化できる。RFIDの利用では、病床の利用状態などを管理することで、設備の効率的な運用につながる。

 実際に米アラバマ州の病院では、病床管理の効率化で患者の収容能力が約40%向上し、平均入院期間が約10%短縮されたという。また無線LANの電波の医療機器への影響も懸念されるが、「むしろその逆で、機器の動作が無線電波の通信品質に影響を与えることが懸念される」(ブラット氏)とのこと。最終的には「IT投資のROI(投資収益率)の向上が目標だ」(同氏)としている。

インテルの吉田和正代表取締役共同社長 インテルの吉田和正代表取締役共同社長

 インテルの吉田和正代表取締役共同社長は、予防医療や質の高い医療連携の実現に向けて、「家庭までも含めたITネットワーク環境が不可欠」と話し、標準化された医療用プラットフォームの開発、検証の推進を表明した。

 このモデルケースとして、インテルは千葉県鴨川市の亀田総合病院のIT化を支援した。同院では、「患者と医療提供者」と「医療提供者同士」の2つ観点で情報の共有化と活用に取り組んでいるという。

 院長の亀田伸介氏は、「患者と医療提供者の信頼構築には情報の共有が不可欠」という。同院では、入院患者がベッドサイドに置かれた端末上で自分自身の電子カルテを閲覧でき、入院患者の家族も家庭のPC端末から診察の状態を見ることができる。

「情報共有化が信頼向上に欠かせない」とする亀田院長 「情報共有化が信頼向上に欠かせない」とする亀田院長
亀田総合病院の無線LAN対応端末。電子カルテの記入や閲覧が可能。 亀田総合病院の無線LAN対応端末。電子カルテの記入や閲覧が可能。

 病院周辺の診療機関ともネットワークで結ばれ、外部の医師とも電子カルテを共有できる。これにより、遠隔地に住む患者を同院と患者の地元に住む医師で支援する体制が実現する。また、亀田氏は「外部の医師と情報を共有することで、診療ミスの隠ぺいのような医療業界として根絶すべき問題の解決につながる」と話す。

 インテルは、入院患者向けの情報サービスを提供するヴァイタスと提携。同社の企業向けプラットフォーム「vPro」を採用したベッドサイド端末をヴァイタスが医療機関に提供する。

ヴァイタスの曽根紳二代表取締役社長 ヴァイタスの曽根紳二代表取締役社長

 提供する端末では、vProの仮想化技術とICカードによる認証を組み合わせたサービスを提供する。これは、一台の端末内で複数のOSを同時に稼働できる仮想化技術を利用し、ICカードの認証でOSを切り替えるもの。例えば、通常は情報配信端末として稼働させ、ICカードをかざすとカード保有者の電子カルテを表示させるといったサービスが可能になる。ネットワークに接続されているため、端末のリモート管理も行える。

通常は娯楽や生活情報端末として機能する。 通常は娯楽や生活情報端末として機能する。
ICカードで認証し、個人情報端末に切り替えられる。 ICカードで認証し、個人情報端末に切り替えられる。

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