2006年にも予定されている番号ポータビリティ(MNP)。それに向けて、今後5年の行方を決めるのが2005年だと、法人営業本部プロダクトビジネス部長の三木茂氏は話す。これまで端末売りが中心だった法人営業体制を、システム販売に大きくシフトし、料金競争とは違った、付加価値の提案を目指す。

ITmedia 2005年、法人分野で一番印象に残ったことは何でしょうか。

三木 2004年の年間を通したの法人市場でのバトル──。他社さんもお客様に主に料金面で魅力的な提案をされるものですから、けっこうなせめぎ合いがありました。

 2006年の4月には番号ポータビリティ(MNP)という制度が施行されます(2004年12月24日の記事参照)。それに向けて、料金面の争いだけでは利益の出ない拡大──固定電話やDVD市場のような消耗戦になります。それは健全な姿とは思いませんので、お客様に何がお役に立てるのかという視点に立ち返って事業活動を見直してきました。

 (ドコモ)社長の中村(維夫氏)も、「すべてのサービスおよび活動をお客様第一の視点で見直せ」と何度も繰り返しています。特に法人部門はお客様が目の前にいらっしゃるものですから、お客様第一とは何かを肌身で感じています。この1年はMNPに向けて、それを本当に徹底しないといけません。料金関係でしかお客様に提案する武器がないということでは、業界自体が疲弊してしまいますから。

トラフィック依存から脱却〜システム販売強化へ

ITmedia 法人向けの実際のサービスはどのようにしていきたいですか。

三木 法人のお客様に向けていろいろなサービスを提供してきましたが、実体は大半がモノ売りでした。携帯電話を導入して頂いて、端末売り上げ収入とトラフィック収入が法人収入の大半でした。

 お客様のところにお伺いする際の訪問先も電話機を社内に配備する総務系のセクションが主だったのですが、2004年の7月に法人営業本部を改組し、本部長も新たに星澤(秀郎氏)になってから、システム販売を名実ともに強化していこう、ソリューションでお役に立とうと、大きく舵を取りました。2005年、乞うご期待ということです。

 ソリューションにもいくつかあります。これまでの提案の中心はBtoE向けで、モバイルを活用して社員の生産性をいかに向上させるかという視点に立っていました。今後はこれに加えてお客様(法人)のお客様(コンシューマ)まで視野に入れたBtoC向けのソリューションを用意して、法人様の「顧客獲得単価やリテンション単価が、モバイルを活用すると下がります」ということを提案したいと思っています。

ITmedia BtoCのソリューションの例はどんなものがあるのでしょうか。

三木 例えばQRコードです。従来は企業のサイトに行くのにいちいちURLを打ち込まなくてはいけませんでした。QRコードをカメラで読み取れば、簡単にアクセスが可能です。

 モノを買いたいときには衝動買いが多い。欲しいときに買える。“気持ちの旬”を逃さない。雑誌やパンフレットなど人目に触れる機会の多い媒体にQRコードを使えば、サイトアクセスへのハードルを無理なく越えさせるお手伝いができます。

 Webサイトへ行ってもらったら、AV関係の映像を使った情報も流して、お客様に商品を訴求する。その後、会員になってもらうとか、購入してもらうとか、アンケートに答えてもらう。そのときにはFeliCaを利用して、会員管理、ポイント、決済までも行う。そこまでサポートできればと思っています。

 FeliCa自体がドコモの収入になるのか? ということも言われていますが、そこは知恵の出しようです。購買履歴などが吸い上げられればCRMが利用できます。FeliCaをかざすという1つの行為で、企業は決済からCRMまでワンアクションでできるようになるのです。

 もう1つは「マイボックス」です(2004年1月21日の記事参照)。これは一般サイトをあたかも公式サイトのごとく、自分のメニューとして登録しておけるものです。FeliCaとマイボックスの組み合わせは、企業にとってもコンシューマにとっても、たいへん使い勝手のいいソリューションです。

PASSAGE DUPLEは“携帯と固定の融合”

ITmedia BtoE向けのソリューションは、何がメインになるのでしょうか。

三木 BtoEでは、これ(PASSAGE DUPLE)です。なんといってもボイス(音声)は外せない。今はPHS系で提供している内線電話を、企業内の無線LAN(VoIP)に乗せ、さらにイントラネットアクセスにも使えるというものです。

 無線LANは、データ通信では企業内に普及が進んでいいます。今後、そこでボイスを使うことがもっと普及していくと思います。社内の人が異動したときに固定電話では工事が入りますが、PASSAGE DUPLEは管理情報を変えるだけで済むのがいいところです。人材を有効活用する上で、コストが抑えられます。将来的には、家庭に入っている無線LANでも、こういうスタイルの端末が普及するのではないかと思います。

ITmedia 2005年の目標は?

三木 まずはPASSAGE DUPLEを普及させていく。番号ポータビリティ導入後は、単に音声だけのサービスですと、料金や端末の安いほうに行ってしまいます。ここに付加価値を付けたサービスを実現していきます。


「PASSAGE DUPLEは、携帯と固定を融合させる先鞭を付けた商品だと思っています。私は「パンドラの箱」を開けたと言っています。いろいろなところに津波が起こるかもしれませんが、パンドラの箱というのは最後に“希望”が出てきますから」

 この1年(2005年)が、今後5年を決めるくらいの年になると思っています。今までの法人営業本部の活動も、根本的に見直して、お客様第一で、すべてのセクションを動かしていこうと思っています。

 端末も、これまで全部がコンシューマ向けでしたが、これからは法人向けの機能も盛り込んだものも出していこうと思います。その1つが、「ビジネスFOMA」ですね(8月25日の記事参照)

 コンシューマ向け端末は携帯をゲートとしてインターネット上の情報を利用する狙いがありますが、法人向けは生産性の向上が狙いです。ホワイトカラーの生産性──つまり意志決定の早さ・力強さ・質の向上には、モバイルはもってこいのソリューションを提供できるのではないかと思います。

 通常企業向けのシステムというと、エンタープライズの経理、社員管理、商品管理、顧客管理などが一般的ですが、その周辺部分──時間をいかに節約するか、情報をいかに共有するか、そういうところで携帯が果たす役割は大きいと思っています。

 面白い例として、ある開業医が私どもの(サーバ機器)「MM QUBE」を導入しまして、あるベンチャー様の開発した予約システムのパッケージを載せています。普通、待合室はおじいちゃん、おばあちゃんがいて満員になっていますね。それがなくなって、診療時間になると携帯メールで呼び出してくれます。するとその待ち時間に、近くの商店街でお買い物ができるなど、時間を有効に使えます。これが携帯の最大のメリットですね。

 もうひとつ面白いことに、その近くのドコモショップでは「らくらくホン」が売れている。待ち時間を活用するソリューションとして、携帯は非常に有効なツールじゃないかと思っています。

ITmedia 法人市場においての課題はどんなところにあるのでしょうか。

三木 法人市場はまだまだ未開拓な市場だと思っています。企業に携帯を入れたら何がうれしいのか、そこを提案していきたいです。コンシューマばかり向いていた目線を、法人のほうへも向けていく。法人ではまだまだ携帯は使いこなされていません。ここは他社も注目しているところで、2005年の主戦場になると思います。

 法人市場はマーケットとしては、まだ倍にもなるところだと思っています。ドコモはガリバーと言いながらも、ちゃんとアカウントさせていただいているところだけでなく、ショップなどでご契約いただいている法人も多いのが現状です。ここにより手厚く営業活動をかけていきたいです。プロダクトビジネス部も、導入しやすいお値段で、メリットが分かりやすいプロダクトを提供していくのがミッションです。

[ITmedia]

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