ブロードバンドインターネットを安価に利用できるようになってきたことで、従来の勤怠管理の方法にも変化が生じてきている。ソニーが提供するASP型のサービス「インターネットタイムレコーダー」を導入し、ランニングコストの削減に成功した、株式会社プラザクリエイトの事例を紹介する。
ソニーは2003年9月、法人向けブロードバンドネットワークサービス「bit-drive」のメニューに、インターネット経由で勤怠管理を行うASP型のサービス「インターネットタイムレコーダー」(以下ITR)のトライアルサービスを開始することを発表した。
全国に1050店舗を数える最大手のフォトサービスストアチェーン『パレットプラザ』 |
インターネットタイムレコーダーは、非接触型のICカード技術「FeliCa」を活用して出退勤時の打刻を行うASP型のサービス。このため、顧客側に独自の設備を導入する必要はなく、インターネットに接続可能なPCと、USB接続に対応したFeliCaのカードリーダー/ライター「パソリ」を準備するだけでサービスが利用可能となる。
今回はこの「インターネットタイムレコーダー」を導入しランニングコスト削減に成功した、DPEショップ『パレットプラザ』を展開する株式会社プラザクリエイトに導入の狙いと導入効果について聞いた。
一枚の写真から広がる楽しさと素晴らしさを提供する、フォトサービスのリーディングカンパニー プラザクリエイト
フィルム式カメラ、デジタルカメラで撮った写真をハイスピードで高画質な銀塩プリント仕上げでご提供するフォトサービスストア「パレットプラザ」を事業の核とするプラザクリエイトでは、豊富な機能を備えた「インターネットタイムレコーダー」を勤怠管理のシステムに採用した。
同社は、フォトサービスストアのフランチャイズチェーン『パレットプラザ』(http://www.80210.com)を展開しており、1986年に名古屋に第一号店を出店以来「お子様連れのお客様や女性にも入りやすい、明るくキレイで楽しさがある店舗作り」をコンセプトに、現在、DPEチェーン最大店舗数の1050店舗網を築いている。
現在、いわゆるDPEショップは、全国で約2万店ほど存在している。この市場は、デジタルカメラが急速に普及したことで、大きな変革の時代を迎えている。デジタルカメラからのプリントサービスを扱うことが生き残りには必須となっている状態である。同社ではこの市場の変化を早くから見据え、全店舗のネットワーク体制をいち早く確立。今後ますます拡がるデジカメプリント、CD-R書込みサービス、ネットプリントサービスなどチェーン全体でデジタルサービス強化を図ることで、こうした波に追従している。
業種に合ったソリューションと無駄のない設備投資の実現が「ITR」選択の決め手
「80210.com(パレット・ドット・コム)」では、ネットで簡単にご注文でき全国のパレットプラザで商品のお受取り、代金のお支払いが可能なネットプリントサービスを展開中。 |
プラザクリエイトではこれまで、各店舗におけるアルバイトの管理を、すべて紙ベースで行っていた。「非常にアナログで、人員的なコストとそれに必要な時間を考えると必ずしも効率のよい方法ではない」と社内にてアルバイトの勤怠管理についてかなり昔の段階からどういった形で効率化を図れるかをずっと検討していたという。
データ化する方向が望ましい、という基本的な合意は存在していた。しかし、どう変えればよいかという具体的な方法がなかなか見つからなかった。経営管理部の井出譲二氏は当時の議論を次のように振り返る。
「検討したソリューションは大きく分けると、ポスレジ形式か、一般的なタイムカード方式がありました。ポスレジというのは、さまざまなメーカーからさまざまなパッケージを含めた形で提供されています。しかし、弊社の業態に合うパッケージが都合よく存在していればいいのですが、カスタマイズになってしまう。また、価格も比較的高価になってしまうこともネックでした。また、各店舗の規模がそれほど大きくないということもあり、各店舗に専用の機器設置するなど、設備投資のコストが高いものは選択できませんでした。」
ここで目をつけたのが、ASPのように設備投資を必要としないソリューションであった。システムサポート室室長の安藤勝之氏は次のように補足する。
「既存の環境を生かしつつ、コストを抑えた形で導入できることが決めて」と話す株式会社プラザクリエイトシステムサポート室室長の安藤 勝之氏 |
「ポスレジを採用しなかったもう一つの理由として、私たちの店舗にはWeb機能を使い本社から新商品情報を各店舗に配信しているため、必ず各店舗に管理用のPCを設置しています。最近はインターネットで直接店舗を指定して、画像データを送るという形態をとる『ネットプリント』というサービスも提供しており、各店舗にはADSL以上のインフラをすでに整えていました。
PCとインフラがすでに用意されている状況で、各社から提供されているタイムレコーダーのソリューションを考えると、ITRがベストであると判断しました。」
つまり、プラザクリエイトでは、すでにインフラがあり、設備投資すべき対象がカードとパソリを用意するだけでよいというのが、ITR導入の決め手になったといえる。
運用コストがランニングで4割の削減に
検討を終え、テストでITRを導入したのが2004年1月下旬。このときは、店舗でテストするのではなく、まず本社の中で検証を行ったという。そして2月に入って、テスト範囲が店舗にも広がっていった。そして現在、都内の14店舗、100人程度が同サービスを利用している。
同サービスの導入によって、コスト削減に大きな効果が得られた。従来の給与計算は、OCRを使ったシステムを外注という形で処理していたが、それにかかっているコストと比べた場合、ランニングで4割ほどコストが削減できたという。
なお、管理情報を格納するマスターDBにアクセスできるのは担当者は一人のみで、各店舗からはマスターのデータは見られないようになっている。しかし今後、各事業所の担当者が末端の勤怠管理をするようになれば、自分の担当店舗のデータは閲覧可能にする予定だという。このころには、スタッフが自分でシフトをWeb上で申請する機能も利用していく予定だ。
「コストが4割削減できたという以外に、スタッフのモチベーションアップの効果も期待できそうだ」と話す株式会社プラザクリエイト経営管理部の井出 譲二氏 |
またITRの導入後は、スタッフのモチベーションにも大きな変化が見られた。テスト導入の都内店舗で働いているスタッフのの反応は、「最先端の技術を勤怠入力に使えてうれしい」というものだった。毎日のように何時にきて何時に帰ったというのを手書きで行っていた状態から、ただカードをかざすだけというスタイルへの変化は好感を持って迎えられたようだ。
「店舗によっては、スタッフが実質的な店内作業を行うことも珍しくないのですが、スタッフの権限が増すにつれ、『慣れ』が生じてしまうことがあります。既存の方法はいわゆる自己申告の世界ですので、このあたりがおざなりになる場合もあったようです。しかし、いわゆる外部の時計を使って管理することで、こうした部分の気持ちが格段に改善されているようだ」と井出氏はその満足感を表現する。
将来に備えていち早く新機能も
加えて今回、導入されたカードにはビットワレットの電子マネーサービス「Edy!」の機能が搭載されている。同機能はオプションで選択可能だが、これを選択した理由を安藤氏は次のように話す。
「これは将来的な期待も含めたものですが、例えば、今後、将来的にお客様がビットワレットの電子マネーサービス「Edy!」でネットプリントを利用できるといったシステムが導入された場合、お支払方法に「Edy!」を利用する新しい環境になった場合、当然アルバイトにもその知識が必要となりますので、それを見越していち早く慣れてもらうことを意図しています。
また、携帯にFeliCaが搭載されたとき、それを使って勤怠管理が行えればという将来的な展望もあるようだ。強力に個人と紐づいたツールである携帯は、真にスマートな仕組みを提供することになる。
効率的な店舗マネージメントを確実に支援
プラザクリエイトでは今後、直営店に対し、7月を目処に同サービスの全国的な展開をしていくつもりであるという。なお、FCの店舗については強制はできないが、直営店での実績を紹介することで使用を勧める案内を行っていく予定だとしている。
折しも、フォトサービス業界においては、デジタル化とネットワーク経由でのプリントサービスの仕組みが急速に確立されつつあり、プラザクリエイトも、その実施に向けた取り組みを着実に展開しているところだ。
今後、デジタルと銀塩を結ぶ「架け橋」としての責務を担っていく上で、今回のITRの導入は、まさに磐石の土台作りだといえるだろう。
【参考】インターネットタイムレコーダー スタートアップソリューション例
【イニシャルコスト 初期導入費用】
10ID \30,000-
20ID \50,000-
30ID \70,000-
40ID \90,000-
:
:
【ランニングコスト 月額費用】
【費用例:4つの事業所で各事業所10ID、合計40ID使用する場合】
初期費用:\90,000-
月額費用:\500-×40ID=\20,000-/月
【インターネットタイムレコーダーシステム構成例】
[ITmedia]
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