SiebelのBIが情報利用の常識を覆す

 企業に蓄積するデータを、全従業員が「ビジネスインサイト」として利用する取り組みとして、ビジネスインテリジェンス(BI)が注目されている。CIOを対象にCitigroup、Bank of Americaがそれぞれ行った調査で、今後利用する上で最も重要なアプリケーションとしていずれもBIがトップに挙がった。同様に、Prudencial、Merrill Lynchの調査でも、それぞれ2位という結果になった。

 BIアプリケーションへのニーズが高まっている背景には、競争の激化の中で他社への差別化をするために、企業は業務データを活用し、あらゆるレベルで精度の高い意思決定をしていくことが求められている点が挙げられる。ここでは、CRMソリューションを提供し、さらに、BIへと発展させている米Siebel Systemsが、導入企業にどのような付加価値を与えているかについて詳しく紹介する。

Siebel Systems
従業員数: 5000名
拠点: 29カ国に80以上
売上高: 13億5000万ドル(2003年)
キャッシュ: 20億2000万ドル
顧客企業: 4000社以上
ユーザー数: 258万人
R&D投資: 10億4000万ドル以上

 Siebelは10月に、BIに関する新戦略の柱として、「Enterprise Analytic Applications」をリリースした。営業、サービス、マーケティング、財務、購買、人事、経営者など、企業のあらゆる部門の担当者が、社内に蓄積する情報を効果的な形で参照し、業務へのインサイトに生かすことができる。各業種別のベストプラクティスとして、「構築済み」であることも特徴だ。

 Enterprise Analytic Applicationsは、「顧客分析」「財務分析」「従業員パフォーマンス管理」「サプライチェーン/サプライヤー分析」の4つの領域にわかれており、それぞれが従来のアプリケーションから大幅に機能拡張されている。単体での導入も可能だ。また、企業がすでに導入しているSAP、Oracle、PeopleSoft、もちろんSiebelのCRM製品を含めて、さまざまな業務システムと連携する機能も組み込まれている。

 導入企業にとってのBIのメリットはいくつかに分かれる。米Cisco Systemsは、営業、経理、人事など、世界のオフィスにまたがってすべての部門でSiebelのBIを活用している。これにより、同社では、経営者だけでなく、各現場の担当者のレベルまで、「ほんの数分前」のリアルタイムのビジネスデータが提供されているのだ。フロントオフィスと基幹システムのデータを統合し、全体として情報システムとして高い可視性を維持しているという。

 BIを活用すると、たとえば、マーケティング担当者は、データマイニングなどの分析ツールを活用して、顧客セグメントごとに最適な提案内容を立案し、それをコールセンターのエージェントに伝えることができる。これにより、それぞれ異なる関心を持つ顧客セグメントごとに、それぞれの関心にあわせた効率的なキャンペーン提案を行うことができる。さらに、もし成約、購入にいたらなかった場合でも、顧客が「提案内容の一部に高い関心を示した」といった情報を蓄積することができるため、次のキャンペーン計画に反映させてゆくことができるわけだ。

 さらに、これら顧客セグメントを担当する営業担当者は、キャンペーンの内容や成果を記録した情報をあらかじめ知ることができ、関心の高かったセグメントに集中して営業をかけるなど、フォローアップも効率的に行うことができる。加えて、コールセンターとのデータ共有により、実際のキャンペーンログなどから、特定の顧客の問題についての解決策をすばやく説明できれば、成約までのスピードも早めることができるかもしれない。

 一方、金融機関の導入事例となるRBC(ロイヤルバンク・オブ・カナダ)では、個人のリスクを早い段階で把握するために、チェッキング、クレジットカード、住宅システムなどの14テラバイト以上のデータを統合している。このデータを基に、預金者などの顧客ごとに最適なアクションを起こすことができる。このように、BIは、過去のトレンド分析から「ひらめき」を得るだけでなく、未来のビジネスチャンスを予測するといった用途にも利用することができる。導入に成功した場合、企業のビジネス戦略を立案する上で2度と手放せないツールになり得るものだ。

業種別のベストプラクティスを提供

 一般に、BIという場合、分析機能としてのOLAP、帳票を出力するレポーティング機能の2つが主なツールとなる。また、ここに、データマイニングを含める場合もある。だが、BIベンダーの多くは、こうしたITツールとしてのアピールにとどまっている印象が強い。

 一方で、SiebelのBIが競合他社と比較して最も優れる点は、各業種ごとに、ベストプラクティスとしてのBI機能を提供していることだ。20以上の業種で、すばやい導入を可能にするソリューションとして分析アプリケーションが提供されている。たとえば、通信業のユーザーならば、「Service Analytics」により、解約理由の傾向、顧客満足度などの主要なデータを取得する仕組みができている。

 さらに、「Marketing Analytics」「Partner Analytics」「SALES Analytics」「Product、Pricing、Order Analytics」「Executive Analytics」など、業種別、業務別にキメの細かいアプリケーションが提供されていることがSiebelのBIの特徴だ。

 具体的には、自動車ならばトヨタ、BMW、Ford、GM、日産、Mercedes-Benz、ハイテクでは、Ciscoのほか、IBM、Microsoft、Hewllet-Packerdなど、また、公共、金融、消費財、ライフサイエンス、航空など、さまざまな業種のトップ企業が、SiebelのBI導入企業となっている。

パートナーシップの拡大

 また、Siebelは、BIを導入する上で必要となるさまざまなアプリケーションを提供するために、戦略的パートナーシップも拡大している。ETLツールの分野でInformatica、データウェアハウスではTeradeta、データベースではSQL Serverを提供するMicrosoft、また、IBMとの関係も強化された。

 日本では、データウェアハウス、データマイニング・ツールの導入事例の数こそあれ、本当の意味でBIの導入に成功した例はまだ非常に少ないのが現状だ。部門をまたがったシステム導入にはトップダウンのアプローチが必要であり、部門最適化したシステムが稼動していることも、日本企業にBI根付きづらい理由になっているかもしれない。しかし、競争が激化する中、ライバル企業に差別化を図るための切り札としてBIの導入は必須と言える。当たり前のツールになる前に、いち早くBIでデータ経営を確立することが要求される。

[ITmedia]