今や国内サーバ市場の9割近くを占めるまでになったIAサーバだが、さらに企業の基幹システムを担うべく、Intelではデュアルコア化や64ビット化を一気に進め、そのアクセルを緩める気配はない。「プロセッサは氷山の一角。プラットフォーム全体の価値を訴求し、エコシステムを通じ、ソリューションとしてエンドユーザーに届けたい」とインテルの町田氏は話す。

ITmedia 2004年のPC市場を振り返ってください。

町田 クライアントもサーバも確実に伸び、台数ベースで2桁成長できました。1990年代末に2000年問題対策で多くのマシンが更新されましたので、その買い換え需要があることは分っていました。そこでIntelとしては、例えば、「Centrino Mobile Technology」によって、ワイヤレスブロードバンドの利便性や、スピードを犠牲にしない十分なバッテリー寿命をアピールしました。これによって製品、テクノロジー、インフラを三位一体でどう活用するかが提案でき、買い換え需要を喚起する素地ができたと思います。

ITmedia サーバはどうでしたか。

町田 ワールドワイドの台数ベースで既に85%がIAで占められているのですが、2004年はいよいよ金額でもRISC搭載サーバを上回りました。これはひとえにTCOの削減を求める企業の声が反映されたのだとみています。企業のIT支出は抑制が続いており、ROIの観点から基幹システムでもIAサーバが使われるようになりました。

 長年、こうした領域はレガシーシステムが使われてきたのですが、NECがメインフレームのACOSシリーズにItanium 2を搭載した機種を追加するなど、IAの採用が広がっています。国産コンピュータベンダーを中心に、64ウェイや128ウェイといったスケーラビリティーあるItanium 2サーバが数多く登場しています。

 また、アプリケーションに目を転じると、奉行シリーズのオービックビジネスコンサルタントなど、ISVが本格的にItanium 2をサポートしてくれた年でもありました。2003年末の段階で64ビットをサポートしたアプリケーションの数は約1000でしたが、2004年末には2500に増えました。

 限られたIT予算で最大の経済効果を求めようとすれば、標準化されたプラットフォームを活用することになります。今後は、ハードウェアだけでなく、OS、ミドルウェアも標準化された製品や技術を利用し、業種や業務のノウハウに戦略的なIT投資が行われることになるでしょう。

顧客のニーズはシステム全体の性能や信頼性

ITmedia IBMがPC事業を売却したように、PCの付加価値は低下し続けているように思えます。デスクトップやノートに限らず、IAサーバも例外ではなく、急速にコモディティー化が進むのではないでしょうか。

町田 Intelの創設者のひとりであるゴードン・ムーア博士が1965年、「半導体の集積密度は18カ月から24カ月で倍増する」という法則を学会で発表しました。以来、Intelプロセッサの性能は指数関数的に向上してきましたが、IAサーバが企業の基幹システムを支えるようになった今、顧客のニーズは変化してきています。彼らは、プラットフォーム全体の性能や信頼性、あるいは低消費電力で稼動できることを求めているのです。

 われわれは2005年、次世代のマルチプロセッサプラットフォームとして、デュアルコアの「Montecito」を投入します。現行のMadison 9Mと比較して1.5〜2倍のパフォーマンスを実現し、2つのコアをさらに活用すべく、仮想化をプロセッサレベルでサポートする「Silvervale Technology」も搭載します。これによって複数のOSをより柔軟に混在させることができ、サーバ統合が過去の資産を生かしながら容易に実現できます。また、キャッシュエラーのリスクを減らすPellstonという技術も搭載され、信頼性をさらに高めています。

ITmedia 企業の基幹システムを担っていくには、メインフレームでノウハウの蓄積がある国産コンピュータベンダーとのパートナーシップが重要になると思います。どういった働きかけをしているのでしょうか。

町田 プロセッサやチップセットはわれわれのビジネスでは氷山の一角に過ぎません。サーバボードやシステムとして提供しているほか、さまざまなソフトウェアツールも提供しています。IAサーバがシステムとして稼動するには、ハードウェアだけでなく、OS、ミドルウェア、そしてアプリケーションがそろわなければならず、これらがきちんと稼動するためにはたいへんな「ヒト」「モノ」「カネ」が必要です。もはや1社で垂直統合していては成り立ちません。

 Intelは半導体の枠を超え、われわれの技術がエンドユーザーに届くまでのエコシステムを時間をかけて構築してきました。多くの国産コンピュータベンダーがIAを採用していただけたのは、技術を本当に使えるものにするために努めてきたIntelのバリューを認めてもらえたのだと思います。

2005年は64ビットへの移行が本格化

ITmedia 先ほど、Montecitoの話が出ましたが、2005年はどんな展開が計画されているのでしょうか。


Centrinoで成功したプラットフォーム価値の訴求をサーバでも展開し、新たな市場を創造したいと話す町田氏

町田 昨年8月、サーバ用のチップセットであるLindenhurstを発表し、Xeon DPを64ビット化しました。2005年はXeon MPでも64ビット化を果たし、ローエンドからハイエンドまで64ビットを本格導入する年になります。RFIDが普及の兆しを見せていますが、これひとつとってみてもデータ量の天文学的な増加が見込まれます。64ビットのメモリアドレスは不可欠となるでしょう。

 Intelでは、成功を収めたCentrinoと同じように、プラットフォームとしての価値をアピールしていきます。現行のEM64T対応Xeonプロセッサとチップセットの組み合わせでは、PCI ExpressやDDR-2によってI/Oとメモリを高速化し、信頼性を維持しながらプラットフォーム全体の性能向上を図っています。また、デマンド・ベース・スイッチングによる省電力化機能も極めて重要な機能です。

 われわれはこうした技術を1つのプラットフォームにまとめ上げて確立していく「Platform-ization」を推進していきます。今後はより高い信頼性やセキュリティを確保しつつ、膨大なデータを処理しなければならないという命題があり、仮想化技術も欠かせなくなります。エコシステムでリーダーシップを発揮し、マーケットを創造していきたいと考えています。

ITmedia プラットフォームが確立されたとき、システムベンダーの役割はどうなるのでしょうか。さらなる革新はあるのでしょうか。

町田 技術を用途別に製品化していく技術は日本メーカーの得意とするところです。メインフレームで実績ある国産コンピュータベンダーの英知は、間違いなく彼らを差別化できるでしょう。技術と用途はスパイラル曲線を描きながら革新を続けていくはずです。

小学校6年生の末っ子が中学受験を控えているので、まだ予定が立っていません。塾で受験直前の集中講座があったりしますから。外資系ということもあって、例年はクリスマスあたりから温泉でのんびりと過ごすことが多いですね。その代わり年始は2日からジャンプスタートです(苦笑)。

[ITmedia]

この記事に対する感想

    この企業の方針・戦略について
    よく理解できた 理解できた あまり理解できなかった

    この企業の製品・サービスについて(信頼性)
    大変信頼している 信頼している あまり信頼していない

    この企業の製品・サービスについて(興味・関心)
    大変興味・関心がある 興味・関心がある あまり興味・関心がない



関連リンク