2003年末にニフティがココログを始めたあたりから、国内でもBlogが一般的なものとなり始めた。一般ユーザーだけではなく、企業もBlogに注目する中、個人から法人、サーバーサイトからサービスといった4つの軸すべてに対しBlogソリューションを専業的に提供している強みが発揮されるとシックス・アパートの関氏は話す。

ITmedia 2004年はどんな年でしたか。

 2003年12月に日本法人の登記を行い、2004年3月に日本法人設立の発表をしましたが、その発表以前では、Blog自身が国内で根付いているのか誰もが半信半疑の状態でした。つまり、1年前の時点では、Blogが何か答えられる人は、かなり感度の高い人たちの中でも少なかったといえます。ましてや、法人がBlogの技術を使ってWebによるパブリッシングを変えていくという話など絵空事でした。

ITmedia Blogのビジネス利用にはかなり懐疑的な状態だったように思います。

 何でいまさらBlogのようなものが必要となってきたのか意味が分からないという見方もあれば、そもそも、掲示板と何が違うのか、という見方もありました。それが2004年の最初のころですね。


「10年前に企業がメールの利用方法で議論していた内容と本質的には近いものがBlogでも議論されている。ただ、ツールであることを忘れて過度の期待はすべきでない」と関氏

 こうした状況下でISPは比較的早く動いており、2003年12月にニフティがココログを始めたのを皮切りに、2004年3月までに主要なISPはBlogをサービスに加えました。2003年末の時点では、ISP各社がBlogのサービスを提供するのは、2004年9月ごろだと予想していました。年度中には間に合わないだろうと思っていたのです。しかし、実際はわれわれの予想よりも早くマーケットがBlogに対して動きました。ニフティの動きをもって各社が真剣に考えたともいえますが、企業の判断としてあんなに早くサービスインしたのは驚きました。

 3月の日本法人設立発表のころには、多くの企業ユーザーから問い合わせがありました。このころになると、「Blogは何かビジネス利用できるはずだが、具体的にどういったことができるか分からないので相談に乗ってほしい」という感じの声に変わってきました。

ITmedia 結局のところ、Blogはインターネットの何を変えたのでしょうか。

 簡単に言うと、Webの更新を簡単にしたということでしょうか。構築という点では、Webを簡単に構築するツールやサービスは昔からありました。しかし、Blogほど管理を含めて簡単に情報の更新ができるツールというのはそれまでありませんでした。またオペレーションが簡単になるだけでなく、携帯など、さまざまなシーンから容易に更新が行えるというのが大きく違うのではないでしょうか。10年前インターネットとWebでこんなことができる、と語っていた世界が、やっと誰にでもできるようになったという印象があります。

法人は顧客満足度の向上とコミュニケーションの改善を

ITmedia 法人ユーザーもBlogには興味を示しているといいます。

 日本はアメリカと逆で、TypePadが先に出てきて、Movable Typeがあとという流れでした。TypePadのほうはニフティやOCNといったISPが利用されることでユーザーベースが増えました。一方、Movable Typeはターゲットが法人であることと、アメリカでも結局2年ほどたって認知され始めたということもあり、正直、立ち上がるのには時間がかかると思っていました。しかし、実際にふたを開けてみると、すぐに売り上げが立ち上がるような状態で、そのユーザーも1カ月目こそ個人と法人が半々でしたが、すぐに法人の割合が高くなりました。これはうれしい誤算でした。

ITmedia 法人はBlogを導入することで何を変えたいと願っているのでしょう。

 一般的にいうなら、Blogの導入でWebの部分に関する効率化を図り、コストダウンするためでしょう。もう一つ挙げるとすれば、対顧客とのコミュニケーションです。顧客満足度の向上というのはかなり以前から言われてはいますが、具体的な部分として、顧客とのコミュニケーションが重要となります。そのために営業が顧客と対面する、メールを書く、などしてきましたが、これまではWebというものがうまく活用できていなかったように感じます。しかも、Webの部分で顧客満足度を上げるために、例えば、初期のころはSEOのようなものが盛んに言われていましたが、それをやっていこうとすると手間もコストもかかってしまう。しかし、Blogではそれが知らず知らずのうちにできている。このようなことも大きなインセンティブだと思います。

ITmedia 対顧客ではなく、イントラネットでBlogを使うという例も見られるようになってきました。

 10年前ですと、メールを社内でどう使うかが真剣に議論されていました。しかし今では業務でメールを使わない人が少数派となりましたよね。当時、紙と電話だけあればいいといった人たちにメールが浸透していったように、今、Blogが浸透しつつあります。

 情報のシェアという観点であれば、人と人とのコミュニケーションをオンラインでやろうとするとBlogのような形態がマッチしているのではないかと思います。まれに、Blogが掲示板を駆逐する、といったような見方をされることもありますが、実際にはそうはならないでしょう。掲示板はトピックなどを並べるにはよいですが、そこに抜けているのは、個人、という視点です。つまり、個人のものをパブリックでシェアするという場合にBlogはフィットしていると思います。

ITmedia 既存のナレッジマネジメントなどは、横方向の情報はうまくシェアできますが、上司や部下など、縦の関係になるとうまく機能していない部分があります。そうした部分にもBlogがうまくフィットするのでしょうか。

 うまくいかない場合に多いパターンとしては、ツールに頼ってしまうケースが多いです。例えばグループウェアを導入したからナレッジマネジメントが進むわけではありません。Blogにしてもどういった目的があり、それを解決するためにどういった意識が必要なのか理解していないと、また使われないツールが一つ増えた、と現場に思われるだけで終わってしまいます。それはどんなツールでも同じです。

市場にあった進化を遂げるBlog

ITmedia ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のようなサービスをはじめとし、さまざまなサービスと親和性が高いように思います。

 Blogはログ、つまり経年的な変化を含めた情報の蓄積であり、個人の内面的なものが多分に含まれます。その意味では、コンテンツを蓄積していくものだといえます。一方、SNSは相手とのコネクションなど、ポインタ情報とでもいうべきもので、そこには個人の外面的な部分が内包されています。

 Webにおいては、リンクとコンテンツが必ず必要となります。道がないとコンテンツにたどり着けないし、コンテンツなしにリンクもあり得ません。SNSの最初は「人」がコンテンツだったのです。しかし、人の考えることは時間軸で変化するので、そこに日記的な要素を加えると、その一つとしてBlogが組み合わさることもあるでしょう。コンテンツ的な性格を強く持っているが故に、ほかのサービスとの親和性も高いのだと思います。

ITmedia Blogは2005年、どんな方向に進んでいくのでしょうか。

 われわれの製品でそれを示すなら、TypePadとMovable Typeの違いがもう少し顕在化してくるでしょう。今、この2つには本質的な意味でそれほど差はありません。しかし、TypePadであれば、小グループの中のみで閲覧可能にするなどのグループ機能が、Movable Typeであれば、ディレクトリサービスとの連携機能などが求められています。そうしたニーズを満たすものになっていくでしょう。端的に言うなら、TypePadはより使いやすく、Movable Typeはより高機能になるのです。

正月って皆さん行くところがだいたい決まっているじゃないですか。僕はそうじゃないところに行くのが好きなんです。正月はテレビもつまらないし、おもしろいものが何もないので、本来なら大掃除しているようなときに遊んで、正月は大掃除するみたいな感じです。ひねくれ者ですから(笑い)。

[ITmedia]

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