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シャドーワークの心理学的意義とは?:

無報酬の仕事に熱中してしまう理由 (2/2)

シャドーワークをマネジメントすることは難しい。インフォーマルであることが存在理由であるものをフォーマルな場でコントロールしようとすると、意図、思惑などが透けて見えてしまうからだ。結局自然発生を待つしかないのだろうか。

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報酬が仕事のやる気を奪ってしまうこともある?

 労働には報酬が必要不可欠であり、報酬があることによって仕事に対するモチベーションも上がると思われがちである。ところが事はどうやらそう単純なことではないようだ。

 資本主義社会の経済の中では、報酬の多くは賃金=お金であるが、お金そのものが仕事の本来の純粋な動機を弱めてしまうと唱えたのはアメリカの心理学者、エドワード・L・デジである。

 デジは動機を「内発的動機」と「外発的動機」の2つに分けて考える。

「内発的動機」とは行為そのものに対する興味。例えばあなたが休日に映画を見に行こうとする。その動機は純粋に映画そのものに対する興味である。別に何か別の理由があるからということではない。

 一方、「外発的動機」とは行為そのものからではなく、外部的要因によって形成された動機のことをいう。外部的要因にはさまざまなものがあるのだが、報酬もその1つである。

 「この仕事の目標値を達成したら年収を10%アップしましょう」

 社員に会社が報酬を設定する。報酬を得るために社員はさらにやる気を奮い立たせる。これが「外発的動機」である。

 日常生活の中で、われわれはこの2つの動機を混在させながら生活しているのであるが、デジは「外発的動機」によって「内発的動機」が阻害されると主張した。それをデジは以下の興味深い実験で証明する。

 デジは2つのグループの人たちを対象にパズルゲームのようなものをやらせた。

 Aグループは、ゲームの実験時間に対して報酬を与える。

 Bグループは、ゲームの実験に対して報酬を与えない。

 数時間たった後、両グループに休憩を取らせた。休憩時間は何をしても自由である。実はこの休憩時間こそが、実験の目的である。

 結果は見事なものだった。

 報酬をもらっているAグループの人たちは休憩に入るやパズルに見向きもしなくなった。

 しかし無報酬のBグループの人たちは、休憩時間にもかかわらずパズルに興じていたのである。

 実験結果が意味するところは明快だ。Aグループの人たちは報酬をもらうことにより、ゲームが手段になってしまったため、ゲーム本来の持つ楽しさを味わうことができなかったのである。ゲーム自体が楽しいものであることはBグループの人たちの行動を見れば想像できるであろう。

 「外発的動機」は「内発的動機」を阻害するとはまさにこのことを言うのである。私たちは報酬があるから仕事をしていると同時に、報酬があるからこそ仕事自体が持っている純粋な楽しさ面白さを味わうことができないのだ。

「内発的動機」を探ることがポイント

 デジの実験でいえば、Aグループのやっていることは、はいわゆる本業と呼ばれるもので、Bグループはシャドーワークをしているグループと考えることができるだろう。

 何らかのプロジェクトを起案し、メンバーを集め、シャドーワークを始める「言いだしっぺ」はプロデューサー型のワークスタイルを身に付けている人だ。参照記事

 「言いだしっぺ」であるリーダーは、シャドーワークでメンバーの努力を自分だけの手柄にするような人間では当然務まらない。自分の属する組織にとって利益につながることをするわけで、そうした意味では「外発的動機」がまったくないとはいえなが、それを上回る強い「内発的動機」を持っていることが条件になる。その「内発的動機」をさまざまな言動に変えて、メンバーを引っ張っていく。メンバーもシャドーワークに参加することで、自らの「内発的動機」を刺激し、作業に取り組む。参加しておけば何か特になることがあるだろう、という程度の動機ではある程度の成果が出るまでメンバーとして参加することは難しい。参照記事

 シャドーワークをマネジメントするポイントはこの「内発的動機」なのではないか。

 形式的にシャドーワークのグループを組織するなど、お膳立てをして奨励するよりも、スタッフそれぞれの仕事に関する「内発的動機」の発露がどこにあるかを探ってみることが先決だろう。そして「内発的動機」の突端にある、「こんなことをしてみたい。その理由はこうだ」という想いが果たして他のスタッフの共感を呼ぶことができるか、それを試させてみるのも方法の1つだ。

 このように部下に対して、「お説教」にならないように誘導をしていくことが肝要だが、一方でマネジャー自身も自らの「内発的動機」を探ってみるのも新しいチャンスを生むきっかけになるかもしれない。

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