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多彩なユーザー導入実績が物語る、“真”の柔軟性を実現するクラウドERPNetSuite Cloud ERP Day 2012 レポート

日本市場でも急速に浸透しているクラウドERPの最新動向を、ケーススタディを中心に紹介する「NetSuite Cloud ERP Day 2012」(主催:ネットスイート)が開かれた。各セッションに登壇したユーザー企業やパートナー企業の現場の声を通して見えてくるクラウドERPの実力やいかに?

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ERPを「保有しない」ことで会社の経営をスリム化

 2012年3月7日、ネットスイートは、同社の先進的なユーザー事例などを紹介するセミナーイベント「NetSuite Cloud ERP Day 2012 変革期を勝ち抜くための経営基盤 〜クラウドERPがもたらす企業競争力〜」を開催した。

ネットスイート 代表取締役社長 田村元氏
ネットスイート 代表取締役社長 田村元氏

 最初のセッションにおいて、セミナーの副題にも掲げられている「クラウドERP」について明快な解説を行ったのは、ネットスイート 代表取締役社長の田村元氏だ。「ERPは10年、20年の年月をかけて認知されてきた。しかし導入には多額の費用が必要で、ROI(投資対効果)を考えると大企業でないと厳しいものだった」と語り、従来のオンプレミス型ERP製品では導入および保守・運用コストの高さがユーザー企業にとって足かせとなっていると説明する。

 例えば、導入時にはライセンス費用に加えて、ハードウェアやシステムの構築およびカスタマイズの費用が必要。さらに運用にも多大なコストがかかるため、多くの企業ではIT予算の大半がシステムの維持に費やされてしまい、更改に使える費用が限られてしまうのが現状だという。アプリケーションのバージョンアップ費用も高額となり、バージョンロック、つまり「塩漬け状態」に陥りがちで、古いままのシステムを使い続ける羽目になる。

 「オンプレミスのERPシステムを使っている企業の多くは、“現状維持”だけでIT予算の大半が消えてしまっているのが実情であり、購入した時点からシステム償却のタイマーが音を立て始める。米Gartnerの調査によると、オンプレミスではIT予算のうちシステム更改に使えるのは10%程度に限られ、66%の企業でバージョンロックが生じている。会社の経営をずっとスリムに保つためには、クラウドサービスを活用することが望ましい」(田村氏)

 クラウドサービスは、多くのユーザーが同じインフラを共有することでスケールメリットが生じ、オンプレミスよりも安くシステムを利用できる。基本的には月額利用契約なので、ユーザーはいつでも使いたいときに導入することが可能だ。インフラの保守やアプリケーションのバージョンアップなどもクラウドサービス提供者側が担っており、その点でもユーザーの負担は軽い。

 「ネットスイートのクラウドERP『NetSuite』は年間2回のメジャーバージョンアップを行っているため、ユーザーは常に最新バージョンを利用できる。IT予算の100%を最新のアプリケーションに注ぎ込むことができるわけで、オンプレミスと比べて実に少ない予算で大きな効果を得られる」(田村氏)

 支社や海外オフィスなど複数拠点への対応も、オンプレミスではVPN(Virtual Private Network)の回線整備が必要となるなどシステム構築のハードルが高いのに対し、端末とインターネット接続だけで利用をスタートできるクラウドERPなら容易だ。言語や通貨、会計制度などの違いをシステム上で吸収するグローバル対応版の「NetSuite OneWorld」では、世界各地の拠点へ迅速に展開できるだけでなく、すべての拠点の経営データを集約し、リアルタイムに把握することが可能だ。田村氏は、NetSuiteがほかのERP製品とは異なりKPIをリアルタイムで集計し、ダッシュボードとして表示するといった機能を備えている点も強調する。

 「ERPは企業経営のためのツールとされている割には、多くのERPは経営者向けの情報提供機能が乏しく、別途、BI(ビジネスインテリジェンス)製品などの分析ツールを導入しなければリアルタイムに会社の経営状況を把握できない。必要なデータがすべてシステムに格納されているだけでなく、BIやダッシュボード機能があってこそ、真のERPと言えるのではないだろうか」(田村氏)

トムソン・ロイターは膨大なシステム改善要求をいかに解決したか

 続いてのセッションでは、トムソン・ロイター・プロフェッショナルのトムソンブランディ事業部におけるNetSuite導入事例が紹介された。同事業部は商標データベース検索サービスからスタートし、海外調査、監視、ドメイン名管理といったサービスを拡充、現在では商標ライフサイクル全体をカバーするまでになっている。

トムソン・ロイター・プロフェッショナル トムソンブランディ事業部 CTO 柿澤芳雄氏
トムソン・ロイター・プロフェッショナル トムソンブランディ事業部 CTO 柿澤芳雄氏

 しかし、新しいサービスが追加される一方で、業務の基幹となるシステムは対応しきれていなかった。例えば、海外顧客に向けたマルチランゲージ(多言語)、マルチカレンシー(多通貨)対応が不十分だったほか、オーダーエントリー、請求、売上実績管理のシステムが個別に存在していて、それぞれが有機的に連携しておらず、手作業の処理が多くミスも散見されていた。システム監査でも、職責に応じたシステム権限を付与するようとの勧告が繰り返された。同事業部でCTO(最高技術責任者)を務める柿澤芳雄氏は「コンサルタントに依頼して業務分析を実施したところ、改善要求は58件にも上った」と振り返る。

 こうした状況を改善すべく、柿澤氏は本社とやり取りしながらERPパッケージの検討を進めていった。バラバラに存在していた顧客データに関する3つのシステムを1つに集約してデータの整合性を取ると同時に、手作業をなくし、承認プロセスを可視化する。コンサルタントの指摘した改善要求を解消するといった条件に加え、都度請求と月締め請求のどちらにも対応、ディファード(繰り延べ)請求に対応するなどの点も加味して選定したのが、富士通マーケティング(FJM)から提案されたNetSuiteだった。FJMは、企画・コンサルティングから導入、運用支援やサポートサービスまで、NetSuite導入に関する一貫したサービスを提供している国内最大のNetSuiteディストリビュータである。

富士通マーケティング 永田圭氏
富士通マーケティング 永田圭氏

 しかし、いざ導入に踏み切ろうとしたところ、「他社のオンプレミス版ERP製品の全社導入が予定されていると本社から伝えられ、突き返されてしまった」と柿澤氏。そこでFJMに現状分析してもらい、58件の問題をNetSuiteによって解決できることを確認した。

「いずれ全社で導入するERPに移行するが、それまではNetSuiteを使う。単なるつなぎではなく、ワークフローは移行後にも生かされるはずだと本社に再提案し、承認にこぎつけた」(柿澤氏)

 このように、企業のビジネス状況に合わせて柔軟に活用することができるのは、自社でシステムを保有しないクラウドERPならではのメリットといえるだろう。NetSuiteの採用理由として、柿澤氏は、ハードウェアやソフトウェアを購入する必要がなく導入コストが低額である点、すぐに利用できるのでインプリメンテーションの期間が短い点、カスタマイズが容易である点、年2回のバージョンアップにより最新機能を使い続けられる点、ライセンス数がフレキシブルである点などを挙げた。

 同事業部でのNetSuite導入プロジェクトは2011年5月にスタートし、2012年1月には稼働を開始している。柿澤氏は、NetSuite導入による効果を、次のように説明した。

 「これまで債権回収会議のためのデータを各営業が集計していた作業が不要になったほか、月次会議のための資料を作成する必要がなくなった。必要な分析資料は営業マネジャー自らがレポート作成できるようになり、作業の合理化を実現した。また、同時期からスマートフォンを営業マネジャーに持たせており、移動中に見積承認依頼を決済するなど、いきなりカッティングエッジなシステム環境が整うことになったのだ」(柿澤氏)

クラウドERPの決め手は「柔軟性」と「拡張性」

 次の事例セッションでは、NetSuiteの柔軟な拡張性を生かし、周辺システムを連携させたERPソリューションを得意とするアイネットをパートナーとした、ハーフェレ ジャパンへの導入事例が紹介された。

ハーフェレ ジャパン ITアシスタント・マネジャー嶋崎純一氏
ハーフェレ ジャパン ITアシスタント・マネジャー嶋崎純一氏

 ハーフェレ ジャパンは、ドイツの建築金物・家具用金物メーカーの日本法人。従業員は約50人で専任のIT担当は1人という規模だ。同社ITアシスタント・マネジャーの嶋崎純一氏は、「これまで海外ベンダーのERPを使っていたが、システムの将来性に不安を抱いていた」と話す。

 ハーフェレ ジャパンが以前使っていたERPは、営業支援に関する機能が不足しており、月次請求発行や見積書作成など20以上の機能を自社開発していた。しかし、日本でのサポートは不十分だったため、自社開発を含めてITの運用は一人の担当者に依存していた。また、外出先からアクセスできないなどの不満があり、将来的な業務拡大を見込んで拡張性の高いシステムへの移行を望んでいた。

 新たなERPとしてNetSuiteを選んだのは、日本国内でのサポートが充実していることや、CRM(顧客関係管理)機能に長けているといった点を評価してのことだった。「2010年8月中旬にアイネットと初会合を設け、過去の資料などを渡して提案を求めたところ、盆明けには具体的な提案が来て、採用を決定した」と嶋崎氏は述べる。

 提案や採用決定が早かっただけではなく、導入も迅速に行われた。2010年9月にプロジェクトを開始し、2011年1月にはシステム稼働した。しかし、短期間でのシステム導入でありながら、導入の効果は大きかった。データの一元化を実現したほか、商談から見積、受注までの業務プロセスを統一したことで営業効率が向上した。さらに、リマインダ機能の活用で未処理案件への対応も効率化されるなど、営業のボトムアップにつながっているという。

アイネット クラウドサービス事業部営業部 課長 高橋信久氏
アイネット クラウドサービス事業部営業部 課長 高橋信久氏

 「カタログ申し込みを受けて配送するまでのプロセスも統一した。オンラインで入力された申し込みデータを各部署で共有し、発送と同時に営業サイドも動き出せるようになったのはクラウドERPならでは。また、NetSuiteと倉庫システムとをシームレスに連携できるようになり、入出荷のトラッキングが容易になった。一方、社内で10年かけて作ってきたアイテム情報画面とほぼ同じ画面をNetSuite上にも作り、既存システムで培った利便性も継承できている」(嶋崎氏)

 ハーフェレ ジャパンでは今後、社内の業務運用ルールの確立や、新たなシステムに合わせたユーザーの意識改革などを進めていく方針だという。また、社内からの要望を集約してシステムの改善を図っていこうとしている。

 「柔軟で拡張性の高いNetSuiteをベースにした結果、継続的な業務改善が可能になった。会社の成長に合わせて改善のサイクルを回していき、ユーザーが使い易いシステムにしていきたい」(嶋崎氏)

グローバル企業にとってのクラウドERP活用の鍵は?

 NetSuiteと基幹ERPを連携するサービス「Enterprise Gateway for NetSuite」を通じて、「Two-tier ERP」というコンセプトを打ち出しているのが日本電気(NEC)だ。最後に行われたセッションにおいて、同社ITソフトウェアサポート本部 部長の島野繁弘氏はそうしたソリューションを紹介した。

NEC ITソフトウェアサポート本部 部長 島野繁弘氏
NEC ITソフトウェアサポート本部 部長 島野繁弘氏

 島野氏は、グローバル企業におけるERPの類型として「シングルインスタンス・シングルアプリケーション」「シングルインスタンス・マルチアプリケーション」「マルチインスタンス・マルチアプリケーション」の3つのモデルを挙げ、グローバルERPの要件について、次のように語る。

 「グローバル標準を重視するなら、全社統一のシングルインスタンス・シングルアプリケーションとするのが望ましいが、現実的には難しく、地域や事業の都合によりマルチアプリケーションやマルチインスタンスとせざるを得ない企業が多い。そこにTwo-tier ERPのニーズがある。例えば事業部ごとに異なるビジネスモデルへの対応、グローバルコンプライアンス実現のため各地域の通貨、言語、商習慣への対応、買収した新規子会社に対する投資抑制、事業や地域ごとの段階的なシステム更改などだ」(島野氏)

 Two-tier ERPは、本社部門のERPと、地域や事業ドメインが持つERPとの、二層構造でERPを構築するというもの。本社側はオンプレミスERPを運用しつつ、各ドメインはクラウドERPへ移行することで低コストかつ短期間で価値を発揮させ、かつマスターデータは本社と共有するというアプローチだ。クラウドERPを活用することで、TCOの削減、運用の効率化や可視化、スピードと柔軟性の強化、個別ニーズへの対応などを可能にする。

 Two-tier ERPを取り入れるには、例えば子会社のカスタムシステムのサポート期限、子会社の買収、部門のスピンオフ、独立したビジネス部門の設置など、企業体に変化があったときが好都合だという。実際、NECでも、米国やアジア各国の拠点でTwo-tier ERPを展開している。

 Two-tier ERPにおいて、本社の基幹ERPとクラウドERPをシームレスに結びつけるのが、Enterprise Gatewayだ。Enterprise Gatewayは、APIなどを既に作り込んであるため、バックエンドに手を加えることなく、開発工数やコスト、期間も大幅に圧縮しつつ異なる環境のマスターデータ連携を実現する。「基幹ERPのガバナンスを確保しつつ、フロント側にNetSuiteを活用してクラウドならではの柔軟性を取り入れることが可能なのだ」と島野氏はメリットを強調した。

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提供:ネットスイート株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2012年4月25日

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