消費税8%と振込手数料の意外な事情:萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/3 ページ)
4月から消費税が8%にアップされるが、金融機関のコンサルタントを主体にしている筆者自身も多少混乱した振込手数料に関する事実を紹介したい。
金融機関の振込手数料は、昔の護送船団方式の時代とは異なり、今では金融機関ごとにかなり内容が異なる。ただ、一般的な「ATMの振込手数料」では次のような切り分けになっている場合が多い。
振込先 | 3万円未満 | 3万円以上 | |
---|---|---|---|
当行内 | 同一支店内 | 105円 | 315円 |
本支店内 | 210円 | 420円 | |
他行あて | 420円 | 630円 |
これは参考例だが、実際には様々な条件によってこれより安い場合も高い場合もある。4月からの消費税率アップに伴う振込手数料の改訂をWebサイトに掲載しているところは、徐々に増えているが、まだ掲載していない金融機関も多い(3月5日現在)。
新人行員教育において
全ての金融機関を調べてはいないが、コンサルティング先の金融機関を行脚していると、新人から多く寄せられる質問の1つに「どうして振込手数料は3万円を基準に切り分けられているのか?」というのがある。
その問いに金融機関の新人教育担当がどう答えているかというと、「印紙税法により、3万円を超える「金銭または有価証券の受取書に関しては200円の収入印紙代が必要。その分を補てんするために、弊行では軽減措置を除いて200円(消費税10円を含めると210円)をプラスしている」と説明するという。新人たちはそれで納得するそうだ。
ATMで振り込みをすると、取引金額の大小にかかわらず「ご利用明細」が印刷されてくる。すぐに捨ててしまう人も多いが、「振込の証拠」としてきちんと管理する人もいる(法人格なら、ほぼ100%が証拠として残しておく)。金融機関によって表現は異なるが、その用紙を隅々までみると次のような説明が記載されている。
「振込をご利用のお客様へ。このご利用明細は、振込契約の成立を証明する書類となりますので、ご依頼人が大切に保存してください」
つまりこの小さな紙切れは、法的な効力を持つ「正式な受取書」なのである。振込金額が3万円を超えるなら、この振込1件につき税金が200円かかるわけだ。しかし、コンピュータ処理なので印紙はない――と考えるのは素人さんである。その記載した文章の周辺に、「印紙税申告納付につき〇〇税務署承認済」とも書かれている。コンピュータ処理をしているから自動的に1件ごとの振込を判断し、3万円を超える場合は200円を徴収して、まとめて国税庁に納めているわけだ。
実際には取引金額や定期金額によって減免されたり、「1カ月に〇回の振込は無料」といった様々な内容の措置が取られているが、基本はこういうことである。だから、全国の金融機関の振込手数料の9割以上は、3万円を基準に手数料が変わる。それでは、この「プラス200円」は印紙税なのだろうか。
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