日本酒の流通過程を見える化、おいしい状態で世界へ IBMらが実証実験
温度の変化に敏感な日本酒、おいしい状態で世界へ――。流通拠点の温度や位置の情報を見える化し、クラウドに収集する実証実験がスタートした。
温度の変化に敏感な日本酒、おいしい状態で世界へ――。流通拠点の温度や位置の情報を見える化し、クラウドに収集する実証実験がスタートした。実証実験には流通システム開発センター、日本IBM、凸版印刷、慶應義塾大学SFC研究所、大和コンピューターが参画。日本酒輸出の流通経路を可視化し、偽造品対策や品質管理、現地消費者との情報共有に生かすのが狙いだ。
実験では、石川県白山市の車多酒造(銘柄:天狗舞)と富山県富山市の桝田酒造店(銘柄:満寿泉)の日本酒をタイのバンコクに輸出し、流通拠点で温度データや位置情報データをクラウド上に収集。バンコクで現地の消費者と酒造メーカーをソーシャルネットワークでつなぎ、評判の分析や新たな食文化の開拓などに生かす。
酒造メーカーは日本酒のキャップにRFIDタグを付け、実験を行うバンコクに向けて出荷。各流通拠点で温度データや位置情報データなどのトレーサビリティ情報を集め、得られた情報はPCや携帯端末、スマートフォンなどから閲覧できるようにする。RFIDタグには、破損した際の記録を保持する機能も用意され、流通過程での不正な開栓を防げる。
トレーサビリティシステムは、IBMのクラウドサービス「SoftLayer」上に構築。トレーサビリティシステムは、GS1(Global Standard One)国際標準であるEPCやEPCISを活用し、識別した個体の場所と状況を共通フォーマットのデータとしてクラウド上に保存することで、さまざまなアプリケーションから活用できるようにしている。
酒瓶の金属製キャップ部に貼り付けるRFIDタグラベルは凸版印刷が開発。システム側でキャップの開封/未開封を判別できる機能をもったEPC Class 1 Gen 2に準拠している。
トレーサビリティシステムの開発には、IoTに関する研究を手がけており、バーコード・電子タグの国際標準団体GS1の研究所として知られる慶應義塾大学SFC研究所のAuto-IDラボが参加。EPCISの開発、酒造メーカーの出荷支援システムに関する研究開発を担当する。
ハンディ・ターミナルでRFIDタグを読み取り、キャップの状態を確認してEPCISのデータを更新する仕組みは大和コンピューターが構築。消費者の元に日本酒が渡った際、スマートフォンでQRコードを読み込むと、日本酒の情報や流通過程の温度情報を参照できる機能も実装した。
さまざまな標準コードの研究と管理を手がけ、コードを利用した業務効率化について啓蒙活動を行っている流通システム開発センターは、国際標準の技術を使った製品情報の可視化は、国内外に向けた日本酒の拡販に役立つと期待を寄せている。
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