第12回 オブジェクトストレージを上手に使うチェックリスト(後編):クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(2/2 ページ)
オブジェクトストレージをいざ使うとなると、具体的にどんな方法を選択すべきか悩んでしまいます。前回に引き続きオブジェクトストレージを上手に使うための10項目をご紹介します。
8.個別の独立したオブジェクトストレージか、クラウドの一部として利用されるか?
例:外部クラウド間でのデータ移行が必須
特定のクラウドサービスとの互換性や、クラウドデータの移行を前提にした「CDMI」(※)のような業界標準に準拠しているかどうかを確認しておいたほうが良いでしょう。また、多くのオブジェクトストレージが互換性をうたっているパブリッククラウドサービス代表格が「AWS S3」ですが、このAPIを全てサポートするような製品は実は少ないのです。より多くのAWSサービスを利用するのであれば、互換性の範囲が十分かどうかを確認しておくのも良いでしょう。
しかしながら、ほとんどのオブジェクトストレージソフトウェアはRESTful APIをサポートしており、単純なAWSとのデータのやり取りであれば、簡単に実行できるようになっています。
※CDMI(The Cloud Data Management Interface)――SNIAが標準化しているクラウドストレージ互換仕様
9.どれくらいの技術レベルの人材が、オブジェクトストレージの実装と運用を行うのか?
例:OpenStackベースで自社エンジニアが構築する。
オブジェクトストレージを自分で作るか、または、利用するかを明確にしておくことも重要です。オブジェクトストレージと言っても、オープンソースのものから商用版まで数多く存在します。
オープンソースをそのまま利用するメリットは、購入コスト、保守コストがかからない点と、カスタマイズが自由にできることです。まさに自分好みのオブジェクトストレージを構築できるのです。一方、自分で開発するにはそれなりの知識やサポート体制が必要になります。例えば、OpenStackのSwiftを使う場合、これを自前で商用化しているケースは、現時点では国内でほとんど見られません。
また、完全に商用版を利用する場合も、ソフトウェアか、アプライアンスか、または、クラウドサービスかといった選択肢があります。ほとんどのオブジェクトストレージは汎用サーバを利用するものが多いためソフトウェア製品が圧倒的に多いのですが、構築コスト、時間、サポートを考えた場合、アプライアンスという選択肢もあるかと思います。
10.現在までに利用したオブジェクトストレージの実績とフィードバック、今後の期待する技術はあるか?
例:従来の社内ファイルストレージからの置き換えでコストは下がったが性能は低下した。
最近よく聞くのが、「ファイルストレージのデータがいっぱいになってきたので、より低コストのストレージに移行したい」という声です。ここで気を付けなければいけないのは、従来のファイルストレージと比較して、期待値にギャップがないかどうかです。例えば、従来のストレージ製品が多くのアクセスポイントから一斉にアクセスがくる、または、読み出しも複数カ所から頻繁にされるケースの場合は、同様の性能や一貫性は期待できないでしょう。単純に「ファイルも読み書きできますよ」といっても、○×表の○でしかないのですから。
さて、今までのまとめとしてオブジェクトストレージを導入する際のチェックポイントを幾つかの具体例で解説してきました。次回はこれからのIoT時代においてオブジェクトストレージに期待される新しい利用形態を紹介してみたいと思います。
著者:井上陽治(いのうえ・ようじ)
日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージテクノロジーエバンジェリスト。ストレージ技術の最先端を研究、開発を推進。IT業界でハード設計10年、HPでテープストレージスペシャリストを15年経験したのち、現在SDS(Software Defined Storage)スペシャリスト。次世代ストレージ基盤、特にSDSや大容量アーカイブの提案を行う。テープストレージ、LTFS 関連技術に精通し、JEITAのテープストレージ専門委員会副会長を務める。大容量データの長期保管が必要な放送 映像業界、学術研究分野の知識も豊富に有する。
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