第44回 「DevOps」的な欧米企業のPC運用 ベンダーの思惑に乗る?:テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(2/2 ページ)
日本は「Windows OSをハードウェア」と考える傾向にありますが、欧米企業は全く逆の感覚を持っています。その理由とは?
「DevOps」的な欧米型のPC運用
1年前の2015年、Windows 10の新製品説明会だったかと思います。日本マイクロソフトは「エンドユーザーのPC運用を変えていきたい」「変わってほしい」と、強い想いを投げかけていました。PCの入替時期になると、急に特別体制を敷いて対応していくのではなく、日常的に体制を敷いてほしい、というものです。
言ってみれば「PC環境のDevOps」なわけですが、日本と比べると、欧米はそれを確立している企業が多いのです。だからといって、欧米の企業はPC運用に関わる社員が多いかというと、そうではありません。規模(≒PC管理台数)をそろえてみれば、日本と欧米ではさほど変わらないのです。
日本では、その“特別プロジェクト”のアサインメンバーはPC運用などの日常業務との兼任、つまり期限付きで臨時召集されています。メンバーは「自分の本業はここではなく別にある」と思ってしまうため、その特別プロジェクトの終了(=解散)を目指しがちです。ですから、新技術の採用検討といった任期が長引きかねない“チャレンジ”はなるべく避けてしまう傾向があります。この結果、プロジェクトを終えられる最低限の要件だけを守る方向に走ってしまう。具体的には、既存アプリの互換性検証テスト程度で終わらせてしまうわけです。
これに対し、欧米企業では、まずPC運用はアウトソース化する傾向があります。これにより、正社員を企画といった戦略部門に回し、専任化してしまうわけです。専任ですので、その仕事がメインであり、十分に時間を割くことができます。
企画部門と言っても、日本にありがちなシニアな人材のみで組織し、机上で考える・検討するだけではありません。若い社員もいれば、SEも在籍しています。ですから、きちんと検証機器を保有し、次世代WindowsやOfficeの新機能や新技術の採用検討を企画側でじっくりと吟味するわけです。
これにより、自社に採用することでどれだけ業務を改善できるか、社員のワークスタイルをどれだけ変えられるかを熟考し、早期に検証、リリース――つまり、冒頭に挙げたマイクロソフトの考える理想、「DevOps的なPC運用」が実現できるわけです。
最近、セミナーなどで「ワークスタイル変革」という言葉を聞くかと思います。 “綺麗ごと”のようにも聞こえますが、欧米はそれを本気で検討する組織があり、専任の企画担当者が自らPoC(Proof of Concept:概念実証)を行っています。繰り返しますが、彼らは“専任”ですので、人事考課もそれで決まります。つまり本気で取り組んでいるのです。
組織体制にまで話が広がってしまいましたが、否定的な意見もあるでしょう。「たかがOSのために何でそこまでしないといけないの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は次の一言を頭に留めておいてください。
その製品が業務上必須であり、替えの効かないものである限り、メーカー側の方向性に反した運用・使い方をしてもロクなことはない。自分がツラいだけです。
納得がいかないかもしれません。しかしながら、これは、私のこれまでの経験を踏まえての持論になります。
小川大地(おがわ・だいち)
日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。
カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション。
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