街のラーメン屋でも導入できる “月額3万円のAIロボット”の働きぶりは:Microsoft Focus(1/2 ページ)
AIやロボットというと、「大企業が多額の投資をして使うもの」というイメージがあるが、2017年はそれが覆るかもしれない。街の小さな店舗でも気軽に導入できる月額3万円のAIロボットが注目を集めている。
日本マイクロソフトのAI技術と、ロボットを活用したクラウド型の「クラウド型顧客おもてなしサービス」がスタートする。
ロボット向けアプリ開発で実績があるヘッドウォータースと共同開発したもので、Microsoft Azureで提供するAI機能「Cognitive Services」と、ヘッドウォータースが提供するクラウドロボティクスサービス「SynApps」を統合。ソリューションパッケージとして提供する。初期費用不要の「月額3万円からのサブスクプションモデル」とすることで、小規模事業者でも活用できるようにしたのが特徴だ。
具体的には、飲食店や小売店、サービス業などの実店舗に設置したロボットが、顧客の顔を認識したり、自然言語で会話することで接客する。収集した顧客データの分析や売り上げ向上に向けた提案などを行えるほか、接客のトータルコストを5分の1程度にまで削減できるという。
ヘッドウォータースの篠田庸介社長は、「AIやロボットを活用した課題解決への取り組みが注目を集める中、ロボットそのものはある程度の価格で調達できても、個別システムの開発費用が高く、大手企業以外では導入が難しいという課題があった。だが、AzureのAI機能を利用することで、低コストで導入できる仕組みが用意できる。月額3万円という費用では当社の利益ははないが、まずはロボットとAIを使ってなにができるのかといったことを体験してもらい、そこに価値を見いだしてもらいたい」と語る。
今回のサービスは、飲食店や小売店での利用を想定していることから、Pepperではなく、テーブルやカウンターの上にも設置できるヴイストンの普及型ロボットプラットフォーム「Sota(ソータ):Social Talker」を採用した。Sotaのサイズは、280(高さ)×140(幅)×160(奥行き)ミリで、重さは763グラム。8軸の動作が可能で、カメラやマイク、スピーカーなどを搭載する。
月額3万円の中には、ロボットの調達や環境のセットアップ、テスト、保守や日々の管理などが含まれる。これに用意された機能別オプションを追加して利用する。
ロボットはSota以外にも業態に合わせた選択肢が用意され、ロボットを設置できない店舗の場合は、顧客のスマートフォンに配布したロボットアプリを介して顧客の認識や会話ができるようにするほか、外国語翻訳対応サービスの提供も検討している。
月額3万円のAIロボット、働きぶりは?
既に一部店舗で実証実験を開始しており、東京都港区の「鶏ぽたラーメン Thank(サンク)大門店」では、同サービスを利用して顔登録とロボット連携ができるアプリを配信。店に行くとロボットが顔を認識してアプリと照合し、それを元に来店回数をカウントしてトッピングなどのプレゼントを提供している。
これは、ファストフード向け分析モデルのソリューションで、ロボットがお勧めの商品を紹介したり、システム側で性別や年齢、購入情報、リピート率などの分析を行ったりする。POSレジを持たない券売機のみの店舗でも、来店データの分析が可能になるという。
「ラーメン店では店主が厨房につきっきりになってしまうこともあり、常連客を認識できなかったり、どんな客層が来ているのか、どの時間帯にどんな注文が多いのか、どんな来店客の客単価が高いのか、といった顧客の傾向を把握するのが難しいという課題があった。このロボットソリューションを導入することで顧客の属性分析が可能になり、これらの課題も解決できる」
マイクロソフトのPowerBIを活用できるため、詳細なデータ分析が分かりやすい形で表示される。
もう1つが、東京都千代田区の居酒屋店である「くろきん神田店」での実証実験だ。ロボットを1台導入し、飲みニケーションロボット席を設置。ロボットとコミュニケーションしながら飲食を楽しむことができる。
関連記事
- 連載:「Microsoft Focus」記事一覧
- IoTで空港はどう変わる? 6つの実験でJALが気付いたこと
大手航空会社のJALがここ最近、ウェアラブルデバイスからIoT、ロボット活用とさまざまな実証実験を続けている。なぜ次々と実験を行っているのか。そして、数々の取り組みを通じてJALが目指す、IoT時代の「おもてなし」の姿とは。 - なぜ、人間と人工知能の対話は“破綻”してしまうのか
雑談対話に特化したシステムやアルゴリズム、超指向性マイクなど、最先端の技術を使っても、人間と人工知能が雑談を続けるというのは難しい。インタビューの最終回では、なぜ対話が破綻するのか、そして、それを解決するための研究の最先端に迫る。 - コレ1枚で分かる「人工知能の適用領域」
人工知能が適用されうる領域を、「人間の関与を前提とした」領域と「人間の関与を前提としない」領域に大別して、それぞれの特徴を整理しておきましょう。 - 情シスが“女子高生AI”の使い手になれば、会社の利益が上がる!? そのからくりは
クラウドやAI、IoTなど、次々と新たな技術が登場する中、情報システム部門はこうした技術をどのように取り込み、どのような形で業務に生かしていけばいいのだろうか――。マイクロソフトとNTTソフトウエアのエバンジェリスト対談から見えてきた結論は。 - デジタル改革で変わるべきはIT、そして人――日本マイクロソフト・平野社長
多くの企業がデジタル改革の必要性に気付き始めた2016年。クラウドファーストの製品や技術、ワークスタイル改革のノウハウでそれを支援するのが日本マイクロソフトだ。企業がデジタル改革を成功させるために欠かせない要素として、同社社長の平野氏が挙げたのは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.