みずほ銀行、2400万人の顧客データベース構築に挑んだ11年の歴史:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/3 ページ)
取引履歴やプロファイルといったデータを基に、顧客の価値観をつかみ、行動を事前に察知する――そんな新たなマーケティングに「みずほ銀行」が挑戦している。その裏には、10年以上にわたる、地道なDB強化の取り組みを続けた女性がいるのをご存じだろうか。
コールセンターでのWatson導入や店舗へのPepper設置など、業界の中でも先進的なIT活用で注目される「みずほ銀行」。近年、同社はデータ分析を基にしたCRMに注力しており、取引履歴や顧客プロファイルといったデータを加味し、顧客の行動変化を事前に捉える「BBM(Behavior Based Marketing)」に挑戦しているという。
さまざまな施策を行う裏では、その基礎となるデータを整備しておく必要がある。同行では10年以上をかけて、データベースを高度化する取り組みを行ってきた。しかし、WebのアクセスログやSNSでの行動など、テクノロジーの進化によって収集、分析するべきデータは変化していく。
「分析対象となるデータの種類や範囲が広がった今、“銀行員”だけでは対応しづらいのが現状です。今は他業種の有識者の方々に参加いただき、コラボレーションしながらプロジェクトを進めています」
こう語るのは、みずほ銀行でデータベースマーケティングを進める吉澤陽子さんだ。決済やクレジットカードの利用データ、銀行が保有するトランザクションデータなど、さまざまなデータを組み合わせることで、顧客の「行動様式」を捉える知見が得られるのだと話す。
顧客の価値観を探る「みずほDNA」
人の価値観というのは、日常生活や消費性向の端々に表れる。例えば、銀行からお金を下ろす時に極力手数料が発生しないようにする人と、そうでもない人。宝くじを好んで買う人と全く買わない人。スーパーで特売日を狙う人、お得なポイントをためることが好きな人など、私たちは無意識のうちに人のさまざまな行動から、相手の性格や価値観を推測している。
みずほ銀行が今チャレンジしているのは、そんな行動様式に関わる推測を大量のデータから導き出そうという考え方だ。例えば、さまざまな行動から、それぞれの人のリスクに対する許容度を測り、顧客ごとの価値観に合わせた金融商品の提案につなげていくという。
「運用商品への投資や貯蓄額などは分かりやすい例ですが、例えば、通販も購入時には商品が手元で確認できないという“一定のリスク”があると捉えられます。このように、リスクの許容度と相関がある行動は多く、そういったデータがたまっていれば、長いヒアリングをせずとも、お客さまに最適な商品を案内しやすくなるのです」(吉澤さん)
そのために、2000項目以上もある指標をデータベース化し、顧客のプロファイル、取引意向、日常行動パターン、価値観、購入ポテンシャル、金融行動パターンという6つの側面から顧客を分析する――この顧客理解モデルを同社は「みずほDNA」と名付けて取り組みを進め、窓口業務やコールセンター支援、レコメンドメールの配信といった、ビジネスに寄与する知見として活用しているという。
こうしたBBMへの先進的な取り組みは、日本データマネジメント・コンソーシアムで表彰されるなど、注目を集めているが、ここまでデータを活用するようになるまでには、長く地道な取り組みがあった。
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