皆さんは、鉄道やバスに乗るときに「乗車券」を購入しているでしょうか。最近では、都市圏を中心に「交通系ICカード」を乗車券の代わりに使っている人も少なくないでしょう。
交通系ICカードの中でも、首都圏や仙台地区や新潟地区で使えるJR東日本(東日本旅客鉄道)の「Suica(スイカ)」と、首都圏の私鉄やバス会社が共同で運営する「PASMO(パスモ)」は特に利用者が多いとされています。両者には、スマートフォンを鉄道やバスに乗る際に使うICカードとして使えるサービスもあります。
この記事では、おサイフケータイに対応するAndroidスマートフォンで使える「モバイルSuica」と「モバイルPASMO」について、その違いをチェックしていきます。
モバイルSuicaとモバイルPASMOは、Androidスマホのうちおサイフケータイ機能を搭載していて、OSがAndroid 6.0以上の機種で利用できます(※1)。手持ちのAndroidスマホに「おサイフケータイ」アプリが入っているかどうか、OSが条件を満たしているかどうかしっかりチェックしましょう。
それぞれのアプリは、普通のアプリと同様に「Google Play」からダウンロードできます。
(※1)モバイルSuicaはAndroid 6.0未満のOSでも稼働しますが、2021年3月をもってAndroid 6.0未満のOSのサポートを終了します
なお、会員登録が不要なサービスを使う場合は、モバイルSuicaであればGoogleの「Google Payアプリ」から使い始めることもできます。
モバイルSuicaとモバイルPASMOでできることは基本的に共通で、以下の通りカードタイプのSuicaやPASMOとおおむね同じことができます。ただし「★」印の付いているサービスは無料の会員登録が必要です。
(※2)会員情報にクレジットカード/デビットカード/プリペイドカードをひも付けると利用できます。モバイルPASMOの場合は「3Dセキュア」(Web本人確認)に対応するカードのみひも付けられます。モバイルSuicaの場合は、Google Payアプリを使うと会員登録なしでもチャージできます
(※3)特定のクレジットカードをひも付けた場合のみ利用できます
一方で、以下の通りモバイルSuicaでのみ利用できるサービスもあります。いずれも無料の会員登録が必要です。
(※4)会員情報にカードをひも付けると利用できます。Suicaの残高から購入することはできません
(※5)JR東海が指定するクレジットカードを用意した上で、モバイルSuicaアプリから手続きを行う必要があります。モバイルSuicaの会員情報とひも付けたカードと同一でなくても構いません
モバイルSuicaアプリでは、原則としてJR東日本のSuicaエリアの駅を発駅とする定期券を購入できます。代金の支払いは、会員情報にひも付けたカードで行います。
購入できる定期券の種類は以下の通りです。首都圏エリアはSuicaを採用する他社やPASMO採用事業者、仙台エリアは仙台市営地下鉄との連絡定期券も購入できます。
通学定期券やFREX/FREXパルの新規購入時は、それぞれにおける所定の事前申し込みが必要です。通学定期券とFREXパルでは、必要書類(通学証明書など)の郵送も必要です。申し込みが受理されると、アプリから購入できるようになります。
また、以下の定期券は事前に問い合わせると購入できることがあります(アプリの操作だけでは購入できません)。気になる人は問い合わせてみてください。
(※6)その名の通り、2つの区間で有効な定期券。2区間目は1区間目の途中駅を発駅とすることが条件となります(2区間目の着駅は範囲制限あり)。定期運賃は、1区間目と2区間目の定期運賃を合算したものとなります
なお、モバイルSuicaでPASMO対応路線バスの「ICバス定期券」(都電荒川線の定期券を含む)を使いたい場合は、利用する路線バス事業者のモバイルSuicaに対応できる定期券販売窓口にスマホを持ち込めば購入できます。ただし、以下の点に注意してください。
逆に、以下の通りモバイルPASMOでのみ利用できるサービスもあります。「★」印が付いているものは会員登録が必要です。
バス特のポイントと特典チケットの確認機能は、モバイルSuicaはもちろん、カードタイプのPASMOやSuicaにもない魅力です。
モバイルPASMOアプリでは、鉄道の定期券と、バス/路面電車(都電荒川線、東急世田谷線)の定期券をそれぞれ1枚ずつ購入できます。東京都交通局や横浜市交通局では、それぞれの局が運営する地下鉄とその他の交通(路線バスなど)との連絡定期券も発売しています。代金の支払いは、会員情報にひも付けたカードで行います。
鉄道定期券は、モバイルPASMO定期券を発行する事業者の駅を発駅とするものを購入できます。首都圏のSuica事業者やPASMO事業者への連絡定期券も購入可能です。発駅に関する条件を満たしていれば、モバイルPASMO定期券を発行していないPASMO事業者を着駅(あるいは経由駅)とする連絡定期券も発行できます。
購入できる鉄道定期券の種類は以下の通りです。
通学定期券の新規購入時は、モバイルPASMOアプリで経路申請(購入予定の定期券の内容を登録)した上で、モバイルPASMOの会員サイトでダウンロードした申請書を印刷し、必要書類(通学証明書など)を添えて郵送する必要があります。申し込みが受理されると、アプリから購入できるようになります。
バス定期券も、モバイルPASMO定期券の発行に対応する事業者で購入できます。路線バスはおおむね地区によって「定額(一律)運賃」と「距離制(整理券)運賃」に分かれますが、モバイルPASMOのバス定期券はどちらにも対応できます。鉄道定期券と同様の手続きで通学定期券も買えます。
なお、鉄道定期券もバス定期券も、発売内容は事業者によって異なります。アプリでの購入手続き時にも案内は出ますが、どのような定期券を買えるのか、Webサイトで事前に確認することをおすすめします。
モバイルSuicaとモバイルPASMOは、カードタイプとほぼ同じ機能を持ち合わせます。ただし“カード”ではないゆえの注意点もあります。
まず、駅での現金チャージはカードやスマホをトレイに載せられるタイプの券売機やチャージ機でのみ可能です。現金チャージをしたい場合は、コンビニエンスストアを活用することをおすすめします。
モバイルSuicaやモバイルPASMOは、一度設定してしまえばアプリを立ち上げておかなくても使えます。「スマホのバッテリーが切れたら使えなくなるのでは?」と心配する人もいるかもしれませんが、一部を除き、おサイフケータイの使えるAndroidスマホではおサイフケータイの機能を維持できる程度のバッテリー残量を残して電源が切れるようになっています。そのため、ほとんどのスマホはバッテリーが切れてもしばらくの間はモバイルSuicaやモバイルPASMOを使えます。
ただし、このようなバックアップ機能を備えているスマホでも、バッテリー切れで電源が切れてからおサイフケータイを使える時間は長くても1〜2日程度です。万が一に備えて、バッテリー残量が少なくなったら早めに充電するようにしましょう。
モバイルSuicaとモバイルPASMOのどちらが良いかは、人それぞれです。
モバイルSuicaは、以下のいずれかに当てはまる人におすすめです。
一方、モバイルPASMOは以下のいずれかに当てはまる人におすすめです。
なお、原則としておサイフケータイ対応のAndroidスマホにはモバイルSuicaとモバイルPASMOのどちらか1枚のみ記録できます。そのため、モバイルSuicaからモバイルPASMOに乗り換える場合はモバイルSuicaのデータを削除する必要があります。その逆も同様です。
最新機種のごく一部では、モバイルSuicaとモバイルPASMOの両者を共存できるようになっています。共存できる機種の場合でも2枚のカードを同時に有効化はできず、もう片方を使いたい場合はおサイフケータイアプリで切り替える必要があります。
また、システムの仕様からモバイルPASMOには対応できない機種もあります。手持ちのスマホの対応状況は、JR東日本が一覧で公開しているので確認してみてください。
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