ゲームにおけるAI技術、活用の鍵は日本語論文― IGDA日本 SIG-GT第4回
IGDA日本は、SIG-GT(ゲームテクノロジSIG)の第4回、「ゲームにおけるAI技術」を開催した。ゲームに関連するAI(人工知能)技術の概論や、ミドルウェアでのAIの実装などについて、講演とパネルディスカッションが行われた。
ハイパーコンテンツの長久勝氏は、「AI技術旋風ツアー」と題した講演で、広義のAI(条件分岐によるロジックやスクリプトなど、学習しないタイプを含む)から、狭義のAI(ニューラルネットワーク+バックプロパゲーション法など、学習する仕組みをもつタイプ)まで、各種のAI手法について概説した。
動作中のゲームにおけるAI利用は、「コンピュータが動かすキャラクタが知性があるかのように(人間が操っているかのように)動作する」ことを主な目的としている。この目的においては、いわゆる「AI」という言葉からイメージされるような「学習する」(計算システムを最適化する)機能は必須ではないため、広義のAIが利用される場合も多い。また、学習のある狭義のAIについては、状況認識の粒度を上げると学習のための計算リソースが爆発的に増大するため、特にゲーム専用機で使用する場合はメモリやCPU時間の配分についてバランスが必要だろうと指摘した。
一方、ゲームの制作過程でもAIが活用可能ということで、NPC動作アルゴリズムを自動生成させたり、テスト用に自動試験用BOTに利己的学習をおこなわせ、システムの穴を見つける助けにする、といった例を示した。
また、クライテリオン・ソフトウェアの吉岡直人氏は、同社のAIエンジン「RenderWare A.I.」について紹介。RenderWare A.I.のサンプルとして、敵キャラクタの「シロアリ」が水の忌避や繁殖、食物摂取など、さまざまな条件で知能的に動作するゲーム「シロアリゲーム」や、動的に変化するフィールド内でNPCが自動的にルートを探すサンプルプログラムなどを示しながら、RenderWare A.I.の利用例をデモンストレーションをおこなった。
その後のパネルディスカッションでは、長久氏、吉岡氏とともに奈良女子大学の城和貴教授もパネリストとして登壇。日本のゲーム業界で、狭義のAI技術の適用があまり進んでいないという長久氏の認識に対して、吉岡氏は「日本人が優秀すぎるから。ゲームでは面白ければAIでも何でも構わないため、日本人は緻密にif-thenルールを定義したり、全部マニュアルで作成することができたから」とその理由を見る。
さらに城教授は「AI技術を取り込むのは簡単。約15年前に第5世代コンピュータプロジェクトがあって、研究に参加した多くのAI技術者が大学に流れた。ゲームとAIというニーズと、AI研究者のシーズが合致する。結びつけていけば、新しい物が出来てくるんじゃないか」と述べ、産学連携でのゲームにおけるAI活用の可能性を指摘した。
狭義のAIについては日本語で書かれた論文も多くあり、日本での技術開発がやりやすい環境も整っているという。今後、こうした研究成果を活かした開発が進むことを期待したい。
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