私が夢に見たマシンがついに登場する――J・アラードが情熱を注ぐ「Xbox 360」とは(1/3 ページ)

MicrosoftのチーフXNAアーキテクトであり、Xbox 360のハードウェアを統括するJ・アラード氏。彼がXbox 360についてひとたび語り出すと、その熱を帯びた言葉に、こちらの感情が吸い込まれていくかのような錯覚を覚える。“Xboxのエバンジェリスト”にXbox 360について聞いた。

» 2005年05月13日 10時30分 公開
[聞き手:今藤弘一,ITmedia]

“単一のビジョン”に基づいてコンセプトを構成

 どの製品でも完全なもの、というのはあり得ない。しかし次世代のXboxは技術的に見ても非常にすばらしいものになった。

 これは私の信じていることなのだが、すばらしい製品の裏側には、非常にクリアーな、“単一のビジョン”が存在するのだ。非常に力のあるビジョンを持てば、そこに全てのことを集約させることができる。これが成功を導く鍵となる。

 2万人もの人がこのXenon(注:次世代Xboxのコードネーム)プロジェクトに関わっている。そしてこの“単一のビジョン”を元に、Xenonを作り上げたわけだ。

 Xenonを作るに当たって、Xenonに関するコンセプトを集めた300ページの本を作った。これを全員に読んでもらい、“単一のビジョン”とはどういうことなのかを共通の認識としたわけだ。

 しかしそのビジョンを表すのには、そんなに多くのページは必要ない。簡単で、かつ力のある、1つのセンテンスで表すことができる。それは「Xenonは、人間のエネルギーが生み出す、生き生きとしたエンターテイメント体験(Living Entertainment Experience)を可能にする」ということだ。

 Living Entertainmentは、インタラクティブなゲーム体験に止まらない。また私は「より広いゲーム体験」という言葉は使わない。コンシューマーは、より広がりのあるゲーム体験を求めているし、それを可能にするデジタルテクノロジーもある。自分のBGMを流しながらゲームをしたいというニーズもあると思うが、それはエンターテイメントも含めた体験であり、ゲームによる体験だけ、ということにはならない。

 そしてなぜ“インタラクティブ”ではなく“生きた”という言葉を使ったのかということだが、ここで昔ながらのゲームを考えてみてほしい。こうしたゲームには全て始まりがあり、中盤があり、終わりがあり、その間に“インタラクティブ”な操作をしていることだろう。ただし、どのゲーマーがやっても終わり方は全て同じだ。しかしLiving Entertainmentでは、どこから始めどこで終わるのか、それを全て我々ゲーマーが決めることができるようになる。

 Living Entertainmentを実現できれば、体験できることも変わってくる。店舗で購入したゲームであっても、クリエイターが思い描いた結末の体験に止まることなく進化していく。つまり、購入したゲームは“生きている”のであり、より多くの内容、より多くのコンセプトが導入でき(もちろんトーナメントのようなものもあるだろう)、クリエイターから加えられた新しいアイディアを元に、買ったあとでもどんどん変化していくわけだ。

Xbox 360における真の力はプレイヤーが引き出す

 さて、「人間のエネルギーが生み出す」という点だが、これまでであれば「高性能なハードウェアとソフトウェアで生み出される」と表現したことだろう。確かにXbox 360は、どのプラットフォームよりもパワフルなハードウェアであるし、すばらしいソフトウェア、そしてサービスも用意されている。しかしこのシステムにおける本当の力は、プレイヤー自身からもたらされるのだ。

 この概念は、インターネットを例に挙げると分かりやすい。確かにインターネットはWebサービスとTCP/IPで成り立っている。しかしインターネットのすばらしさは、読み手が書き手になれる、ということにある。これが本当の力だ。Xenonの中では、ゲーマーがクリエイターになれるのだ。

 2万人のチームで作りあげたのが次世代Xboxだが、それだけで終わらずに、何百万人ものゲーマー自身が創造を繰り返し、新しいものを作り上げていく、ということがコンセプトとなる。

 もちろん、ゲーマーが新しいゲームをデザインするわけではない。すでにあるゲームに新しいファッションを加えたり、レベルを変えたり、トーナメントの構成を変えたり、チームを管理したりといった、“人”というコンセプトが入ってくることになる。

 たとえば、「Project Gotham Racing」を考えてみてほしい。これまでは、ユーザーは東京やニューヨークといった、用意されたコースを走るだけだった。それが今度は、自分なりのデザインで、好きな場所を走ることができるようになるわけだ。

 ゲーマー自身に、ゲームの世界へよりアクティブに関わってもらうためには、我々は強力なプラットフォームをもたらさなければならないし、デベロッパーやゲーマーのコミュニティを、より発展させなければならないだろう。

HD時代ではドラスティックな変革が起きる

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