「次世代のゲームを自分達が作っていく」――水口哲也氏、サンユン・リー氏インタビュー
マイクロソフトブースにて、Xbox 360の新作「NINETY-NINE NIGHTS」を手がけているキューエンタテインメント代表取締役CCOの水口哲也氏、韓国PHANTAGRAMのプレジデント&CEOであるサンユン・リー氏から話をうかがうことができた。以下その合同インタビューの抜粋を掲載する。
ITmedia まずは、今回の日韓合同のプロジェクトが開始された経緯を教えてください。
水口 最初はマイクロソフトさんから「Xbox 360のソフトを手掛けてみないか」という声を掛けられ、そこでいくつかの企画をあたためると同時にパートナーシップを組める相手を探していたんです。そんななかPHANTAGRAMさんとのコラボレーションの話があり、お互いに「これは縁があるな、うまくいきそうだな」と感じて今回の共同制作がスタートしています。
リー 私達のほうは、その話があった頃ちょうどXbox版「Kingdom Under Fire:The Crusaders」の制作を終えたばかりの時期でした。すでに次回作の制作を始めていたのですが、水口さんとお会いしてから「一緒にやってみたい」という気持ちが強くなり「NINETY-NINE NIGHTS」に注力することにしました。
ITmedia Xbox 360という新ハードをターゲットとして進めるにあたり、どのような点に注意してソフト開発を進めていますか?
リー 私個人の考えですが、Xbox 360の性能を(ソフト側が)マキシマムに使いこなすまでにはあと2年はかかると思っています。現在の方向性としては「独自の判断で動く1000〜2000のオブジェクト(キャラクター)を画面内に表示させることで1〜2万人規模の戦闘を描く」ことを考えていますが、今後はプログラム開発についてもGPUとCPUをマルチプルに使いこなして性能を引き出すといった従来とは違うアプローチも必要となるでしょう。
ITmedia 今作のコンセプトは「大軍勢感」ということですが、これだけの膨大なキャラクターをどうやってゲームとして楽しめるようなアイデアに落とし込んだのでしょうか?
水口 ゲーム的な話で言えば、PHANTAGRAMという会社はすでに「Kingdom Under Fire:The Crusaders」という素晴らしいゲームを発表しています。この作品にはストラテジーとアクションという2つの要素が入っていますが、ストラテジー的要素のほうが色濃く出ている。今回の「NINETY-NINE NIGHTS」は、その比率をアクション的要素のほうに大きく寄せて「気持ちのいいアクション」になるよう目指しているところです。
リー 今はまだ画面をお見せできないのですが、刀の一振りで大勢の的をなぎ払えるような”映画的な要素(=痛快さ)”を体験できるようなゲームにしようとしています。
ITmedia 水口さんはPS、PS2、Xboxとハードの進化に応じて毎回新しいタイプのゲームを模索してきたクリエイターのひとりだと思いますが、Xbox 360のようにこれから登場する次世代機は、ゲームにどのような変化をもたらすと考えておられますか。
水口 今回のE3はゲームのHD(高解像度)化が報じられていますが、僕はユーザーにとって「スーパーリアルな世界が体験できる」から良いっていう(流れ)には、はなはだ疑問なんですよ。リアルなものは、結局いずれ見慣れてしまう。もしそれだけを求めたら、ゲームもそれだけのものにしかならないんです。
ですから僕たちはリーさんが先ほど言った映画的な要素、ドラマチックな演出をどうゲームに絡めていくかということを去年の夏あたりからずっと議論しているところです。今回採用した「マルチアングルシナリオ」は、人間の持っている能力や習性をいかにエンターテインメントに変えていくか、そうした新しい提案になるだろうな、と思っています。次世代機の能力は(ゲームの面白さ、新しいチャレンジ)といった部分に使っていきたいですよね。
話をうかがっていて感じたのは、水口氏とリー氏がお互いを信頼して「次世代のゲームを自分達が作っていく」という気持ちにあふれていたことだった。日本と韓国という異なる国のコラボーレション作品ではあるが、「同じ文化の上にいるのでお互いの理解度が早いし、目指しているものが同じではっきりしているからストレスがない」としたうえで「現在のゲーム産業は新しいものと古いものが同時に動いている。次世代機は、今までと同じやり方と考え方ではなく、作り手側にも構造的な改革が起こるだろう」と述べた水口氏の言葉には、作り手も遊び手も未来の”ゲーム産業はより広くグローバル化していく必要がある”のではないか、というメッセージが込められていた。
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