この夏、“最恐”のホラーゲームがやって来る……:「零〜刺青の聲〜」発売直前、菊地プロデューサー突撃インタビュー(2/2 ページ)
シリーズごとに主人公が変わるのは、過去作を未体験でも楽しめるから
―― プレーヤーキャラクターに、1作目の主人公である深紅がいます。彼女を再び登場させたのはなぜですか?
菊地 今作に登場する人物は、主人公、サブキャラクター問わず、過去に何かしらの深い傷を持っています。今回なら“主人公の怜は事故で恋人を失っている”といったように。その点、深紅は1作目の最後で“兄を失った”という悲しい過去があります。プレーヤーキャラクターを3人に増やすということは、開発当初から決めていたので、誰にしようかと考えていたときに彼女に白羽の矢が立ちました。
―― その深紅もそうなのですが、本作には黒澤や天倉といった、過去のシリーズとの関わりが深い苗字を持つキャラクターが登場します。過去作との繋がりは、シリーズのファンを意識してなのでしょうか?
菊地 過去作とのつながりに関しては、あまり重要視はしていません。いわゆる「続編」って好きではない。この1本だけで最初から最後まで遊べる作品を作っていきたいんです。そのため、シリーズの途中からでもすんなり遊べるように、毎度新しい設定を用意することに力を入れています。「影牢」シリーズもそうですね。ただ、過去のファンをないがしろにしているわけではなく、ファンが見ればニヤリとする仕掛けも用意していますよ。
―― 新規ユーザーでも最新作から入り込める、というのは良いですね! では、ゲーム内容の少し突っ込んだ話を聞かせてください。深紅や蛍でプレイを開始しても、夢の中の「眠りの家」を探索します。これは、3人とも同じ夢を見ている、という解釈でいいのでしょうか?
菊地 ちょっとネタばれになっちゃいますが、深紅や螢でプレイしている時の夢は、怜が彼らの夢を見ている設定なんです。彼らを操作しているときは“怜の視点から見ている彼らの夢”と捉えてください。
―― その夢の中で、怜の死んだ恋人・優雨が度々登場します。彼は物語においてどのような役割を担っているのでしょうか?
菊地 今回の物語は、すべて怜の心の中で起こっている出来事。その舞台である「眠りの家」の夢を見るきっかけとなったのが、優雨なのです。優雨を失い心に傷を負った怜が、夢の中で優雨と会うたび、夢の世界へ徐々にいざなわれていく……。優雨は怜にとってすべての始まりであり、目的なんです。
―― 今回もキャラクター毎の設定に力を入れていますね。過去作のように、クリアー後の隠し要素でさらに物語を楽しめそうです。
菊地 隠し要素もバッチリ用意しているので、マニアの方も安心してください(笑)。ただわれわれとしては、一度ゲームをクリアした時点で十分満足ができるようにしてあります。極端な話ですが、みんなで肝試しに使って、、プレイを始めてあまりの怖さに5分で止めてしまっても、それでプレーヤーが満足してくれるのであればOKなんです。遊び方は人それぞれですから、1人1人のファンが個人の尺度で本作を楽しんでもらえれば、と思います。こちらから遊び方を強要させたくはありませんよね。
―― とはいえ、やっぱり見て欲しい場面はあると思います。ファンにはどのあたりを見て欲しいですか?
菊地 う〜ん……。たくさんありますが、一番見て欲しいのは、やはり物語のすべてが集約されているエンディングですね。エンディングのムービーで流れる天野さんの主題歌も映像とマッチしていて、グッとくるものになっています。過去2作に比べて分かり易くしたつもりですが、いろいろな解釈ができるので、数年後にもう一度エンディングをみたときまた違う感じを得られるかもしれません。
―― その主題歌の題名や、今作のサブタイトルにも使われている「聲(こえ)」について質問させてください。「聲」というのは物語にどういった形で関ってくるのでしょうか?
菊地 ニュアンス的に“voice”(発する声)というより、、“call”(呼び声)の意味合いが強いです。何かヤバイもの、不思議なものに呼ばれる、そんな感覚です。
―― では、続いて映像面について聞かせてください。「零」シリーズといえばやはり、幽霊たちのグラフィックの怖さだと思うのですが、今作の映像はどのような進化を遂げたのでしょうか? 前作よりもものすごく綺麗になった印象を受けるのですが。
菊地 描画エンジンの向上により、霊1体におけるグラフィックのきめ細かさが格段に上がりました。目の挙動や霊の刺青といった細部まで表現しているので、前2作をプレイした人にも“さらに綺麗になったな”と思ってもらえるクオリティに仕上がったと思います。
―― そういえば、過去2作のXbox版はプレイステーション版よりも、映像面で進化していました。今回もやっぱり移植されるのでしょうか?
菊地 実はXbox版は、ゲームの内容こそ同じですけど、プレイステーション 2版とは違ったアプローチからで恐怖を表現しています。たとえば1作目では、プレイステーション 2版ではできなかった“全てのオブジェクトに影をつけて陰影で怖がらせる”という演出を追加しました。2作目も“FPS(主観視点での戦闘)でのぞむホラーゲーム”という命題を追加し、実験も兼ねて移植したのです。今のところ移植の予定はありませんが、もし次世代機も含め別のハードで開発するなら、新しい試みを入れたいですね。
―― では、前作の話題つながりでひとつ。過去のシリーズに比べて戦闘が少し難しくなった気がしました。序盤から複数の霊が一気に登場したり。
菊地 今回は霊と戦闘する場面を少なくし、その分戦闘の質を上げました。なので、1戦1戦を見ると少し難易度は上がっているかもしれませんが、トータルで見るとさほど変化していないと思います。物語が進むにつれ、戦闘も厳しくなりますが、その分勝った時の達成感はシリーズ中でもひときわ大きいので、そこは頑張ってほしいですね。
―― その戦闘シーンですが、「カメラで霊を写して攻撃する」というのは斬新でした。この、カメラを武器に決定したエピソードを教えてください。
菊地 ディレクターの柴田が、この案を出しました。実は最初、私はカメラを使うことに反対だったんです。客観的に見て、カメラを構えて戦う姿はゲームに合わないだろう、って。そこで代案を色々と考えました。剣や銃、魔法とかお札を貼って攻撃するとか。でも、敵をギリギリまで引き付けるゲーム性や設定上の面からカメラ以上の武器はありませんでした。今になってみるとホント、カメラにして良かったです(笑)
―― その、ボツになったアイデアの中で、菊地さんが気に入っていたものを教えてください。
菊地 弓矢ですね。破魔矢など、特別な儀式に使うような弓などが良かったなあ。
―― 今後の作品で、それが出る可能性というのは?
菊地 それはないです。もうすでに「零」の世界観は構築されきっているわけですから。今だから言えるのですが、最初このゲームを出すのはとても怖かった。まったく新しいシリーズで、しかも武器がカメラ。カルトなゲームだと誰も見向きもしないんじゃないかと不安でした。
―― いろいろな面で恐怖があるシリーズなんですね。となると、やっぱりスタッフはホラー好きですか?
菊地 意外に思われるしれませんが、ホラーが苦手な人のほうが多いんですよ。“仕事じゃなければお化け屋敷も無理”って人も多いです。中には“霊感はあるけど怖いのはムリ!!”というスタッフもいます。僕自身は霊体験はないんですけど、ディレクターの柴田は霊感がかなりあるようで、しょっちゅう見てるようです。あまり話を聞かないようにしていますが(笑)
―― そろそろお盆ですし、ますます“見える”季節がやってきますよ。そういえば今回は、過去作とは違って夏に発売されますが、やはり夏はホラーの季節だから?
菊地 そうですね。夏ってどのメディアでも、ホラー特集をやるじゃないですか。いわば風物詩。前作や前々作は、秋と冬に出したせいで“寒いのにホラーはないだろう”という人が多くて、実は結構寂しかったんです。だから今回は、夏にリリースすることにしました。“夏に怖いもの”って定番なので最初はイヤだったのですが、いざ出してみると結構しっくりきますね。できれば今後も夏にリリースしていきたいです。
―― では最後にプレイを心待ちにしているユーザーにメッセージお願いします。
菊地 夏のホラーを楽しんでください! 季節というプレイ環境は、ゲームを面白くするための最高の調味料だと思います。隠し要素まで遊びきるもよし、肝試し感覚で遊ぶももちろんアリです。このゲームのもつ怖さを味わってもらえれば、制作者としてこれほど嬉しいことはありません。個人的には、丑三つ刻にヘッドホンをかけて遊ぶのがオススメです!
零〜刺青の聲〜 | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | テクモ |
ジャンル | ホラーアクションアドベンチャー |
発売日 | 2005年7月28日予定 |
価格 | 7140円(税込) |
特典の画像はイメージです。
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