“ゲームは有害だ”と言うだけでは社会的にも停滞感が生まれてしまう:CEDEC 2005リポート
開催中の「CEDEC 2005」にて、シリアスゲームジャパンコーディネーターの藤本徹氏によるセッション「シリアスゲーム研究・開発の最新動向」が行われた。「ゲームと犯罪」の関係性が深く追求される昨今、“社会利用できるゲームだってある”ということを声を大にして叫びたい。
2005年8月29日から31日の3日間、明治学院大学にて開催されている「CEDEC 2005」において、シリアスゲームジャパンコーディネーターを務める藤本徹氏による、「シリアスゲーム研究・開発の最新動向」と題したセッションが行われた。
ちなみにシリアスゲームというのは、「社会の諸領域(社会・ビジネス・軍事・教育・医療福祉 etc)における問題対応・解決のためのゲーム開発・利用」のことを指す。藤本氏いわく、シリアスゲームがムーブメントとして展開したのは1998年の「Virtual-U」からで、これは大学経営シミュレーションとして開発。高等教育や教育政策などの大学院プログラムの教材として採用されたタイトルだったとのことだ。
なお、社会の諸領域に利用できるシリアスゲームだけに、細かく考えれば以下のように分類することができる。
シリアスゲームの分類 |
Education+Learning Games(教育・学習ゲーム) |
Public Policy Games(公共政策ゲーム) |
Political+Social Games(政治・社会ゲーム) |
Health+Wellness Games(医療健康・福祉ゲーム) |
Business Games(ビジネスゲーム) |
Military Games(ミリタリーゲーム) |
Advergames(広告ゲーム) |
Commercial-Off-The-Shelf Games(市販ゲーム) |
この後、それぞれの代表作について触れてくれた藤本氏だが、その中で実際のゲーム画面を見ながら紹介を行ってくれたものがある。テロリスト問題について触れた「September 12」と、食料問題に触れた「Food Force」がそれだ(どちらも公共政策ゲーム)。
「September 12」は街中(画面内)を徘徊するテロリストを、ワンクリックでミサイルを撃ち込み倒す、というものだったが、街には大勢の一般市民も歩いているため、そちらにも被害が出てしまう。
では、一般市民を巻き込むとどうなるか? 肉親を失った家族がテロリストへと変身してしまうのだ。とは言え、どんな理由があろうとテロリストを放置しておくことはできないため、またミサイルを撃ち込むのだが、そうなると再び一般人にも被害が出る。そして、またその肉親がテロリストに……といった感じで、いつまでもテロリストは減ることがない。
つまり、“テロリストをミサイル攻撃することがいかにナンセンス”かということを、ゲームを通じて体感できるものになっているというわけだ。
一方の「Food Force」は、食料を届ける地域がどのような状態にあるか(どれだけ救助を必要としている人間がいるか)や、投下する食料の栄養バランスの調整などを通じて、食糧問題について触れているものだった。
どちらのゲームも、実際のゲーム画面を見て感じたのは“難易度がかなり低い”ということ。というのも、ゲームとしての難しさを提供するのではなく、“プロセスを体験し、知識として、概念を理解する”のがシリアスゲームの目的となるからだ。
これについて藤本氏は「ゲームの作りがエンターテインメントゲームと共通する部分がありながらも、コンセプトというか、ゲームバランスの設定に大きな違いがあるということに気づいてもらえれば」と述べていた。
なお、ここに紹介したのは「個別問題に向けてゲーム開発やゲーム技術の応用」が行われたものだが、そういったことを意識せずに、「市販ゲームでありながら問題解決のために利用」されるものもある。
具体的に言えば、歴史授業における戦略シミュレーションゲームや、体育での「ダンスダンスレボリューション」などが挙がる。英国ではこれらを実際に利用した学校教育が増加しており、たとえ利用していない教師でも、頭ごなしに否定するというわけではなく、その活動に感心を持って注目している、と藤本氏は語ってくれた。
日本でも徐々にシリアスゲームの研究は進んでいるが、まだまだ「ゲームと犯罪」といったようにマイナスイメージで語られることのほうが多い。まったく影響がない、というわけではもちろんないが、“社会に利用できる部分もある”といったことにも、もう少し焦点を当ててもらいたいものだ。
エンターテインメントと比べてはいけない
続いて藤本氏は、シリアスゲームをデザインするうえでのいくつかのポイントを紹介し、「ゲームとコンテンツの関連性が非常に重要です。何でもゲームにすれば良いというわけではないですし、どんなゲームでも良いというわけではない。たとえば、子ども向けのシリアスゲームを作ろうと思って、かわいいキャラクターを用意したとしても、中身が伴わなければ深い学びは得られません」とコメント。
確かにキャラクターありきでシリアスゲームを作っても、その時点でキャラクターが一番なのだから、その効果は薄くなってしまうのは当然かもしれない。では、どのようにシリアスゲームは作るべきなのだろうか?
藤本氏は「“ゲーム性を加味する”ことです。普段は注目しないような現実世界の活動、草むしりや皿洗いなどでも、ゲーム性を加味することで使えるものに生まれ変わることもあります」と語っていた。つまり、学びたい(学ばせたい)知識とゲームをどのように絡めるか、それがシリアスゲームをデザインするうえで、重要なポイントになるということだろう。
また、これと同じくらい大切なポイントとして「エンターテインメント以外の評価軸を明確にする」といったことが挙げられた。
「何と比べて評価するのか? たとえば高校生向けのシリアスゲームを開発したとして、実際にプレイしてもらい、その評価を聞いたとします。これが単純に面白いか否か、つまりエンターテインメントゲームと比べられるのならば、『ドラクエ』のほうが面白い、となってしまう。(シリアスゲームは)ゲームとは言え、学習要素が入っているわけですから、エンターテインメントだけに特化したものにはかなわない」(藤本氏)。
さらに藤本氏は「これは非常にまずいことなんです」と述べる。なぜまずいのか? それは学習要素が含まれているといったことに関係なく、“ゲームとして(純粋に評価されてしまうと)満足度が低くなってしまうから”といった理由が挙げられた。
では、シリアスゲームは本来、どういった部分と比べて評価すべきなのか。これに関しては「これまでのパンフレットや広告、教科書と比べて効果はどうですか? ということになると思います」と語ってくれた。
なお、藤本氏が抱く今後のシリアスゲームの展望には、「ゲームがより密着したものになる」、「ゲームの効能の把握・理解が進む」、「学習の大変さを和らげるノウハウ開発が進む」、「MODの普及による開発者とユーザーのコラボレーションが進む」の4つがあるとのこと。
この中で特に気になったのが「ゲームの効能の把握・理解が進む」という点だ。藤本氏はここで温泉の効能表を引き合いに出し「ゲームならば、『ストレス解消』や『反射神経向上』といった効能や、『危機管理』や『競争意識』といった成分、もちろん禁忌症として『腱鞘炎』、『3D酔い』などもあると思います。つまり、ただ年齢で区別するのではなく、ゲームの有効性、こういう風にすればうまく使えますよ、ということに焦点を当てていきたいんです。単に有害、有害と言っていたのでは、社会的にも停滞感が生まれてしまう。使えるものは使っていきたいじゃないですか」といったように、レーティングへの今後の展望も絡めて、現在の状況に対して苦言を呈していた。
徐々に取り上げられるようになってきているとは言え、まだまだ一般への浸透は低いシリアスゲームという概念。ゲームを犯罪と結びつけて“有害”だと述べることは簡単だが、本セッションでの藤本氏の話のように、プラスの効果も持っているのがゲームだということを少しでも認識してもらえれば幸いだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
-
【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
-
「プロ野球チップス」で誤字 伊藤大海投手を「176m」と記載してカルビー謝罪
-
「ママ友襲来10分前」→さぁ、どうする……? 大爆笑の“あるある”再現が400万再生突破「腹ちぎれました」「バナナ食べんでもええやん」
-
富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
-
21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
-
「大型魚の餌に!!」 熱帯魚店の“思わず目を疑うPOP”に恐怖 「サメでも飼うの?」
-
2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに手をスリスリされた瞬間…… 愛と幸せあふれる空間に笑顔になる「これぞ天使だ」
-
漂う違法感 東京に戻る息子へ持たせた“大量のブツ”に「九州人あるある」「帰省からの帰りいつもこれ」の声
-
異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
- 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
- “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
- お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
- 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
- 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」