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2005/08/30 21:08 更新

CEDEC 2005リポート:
CEDEC 2005 サウンド関係セッションレポート

今回のCEDECのサウンド関連のセッションは初日に集中した。ここでは、人気の高い元ナムコの3人による講座と、ドルビーのスポンサーセッションを紹介する。

ドルビー・スポンサーセッション

 今年はスポンサーセッションになり、無料入場できるということで、多くの聴講者が集まったドルビーのゲームサラウンドセッション。まずは、ドルビー日本支社のジョン・グリフィン氏による基本的な説明が行われた。なお、内容については過去の記事と被る部分もあるため、ここでは新たな発表を中心に紹介する。

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7月の記事にも登場したグリフィン氏。ちなみに社屋移転に伴ってスタッフも増えたそうだ

 ゲームサラウンドで一番わかりやすいのはファーストパーソンビューゲームといえよう。ステレオ音響では前方の音しか聞こえない、もしくは音が鳴ってもそれが前方なのか後方なのかわからないという欠点があった。サラウンドシステムではそれが明確にわかるようになるのが特徴だ。

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画面外の敵の攻撃もサラウンドシステムならリアからのサウンドでわかるようになる

 気になるのは日本におけるサラウンドシステムの普及率だが、きちんとしたデータはない。アメリカではどうかというと、ゲームサイトによるアンケートや調査会社の調査では、アメリカのゲーマーの約35%がサラウンドシステムを使ってゲームを楽しんでいる。欧米ではもっと増えそうだが、日本では住宅環境などの理由と、ゲームサラウンドの知名度の低さから、普及にはまだまだ時間がかかりそうだ。とはいえ、ドルビーヘッドフォンなどの擬似サラウンド環境も普及が著しいことも確かだ。

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これは調査会社のデータ

 現世代のゲーム機では、PCを含む全機種でインタラクティブなサラウンド音声を実現している。GCとPS2はプロロジックII(PS2はムービーのみドルビーデジタル対応可能)、Xboxと一部PCではドルビーデジタルをサポートする(PCでは完成品とマザーボード向けにドルビー認証ロゴを付けるプログラムがスタートした)。次世代機においてはXbox360では標準でドルビーデジタルをサポートしているが、アナログ接続でもドルビープロロジックIIをサポートすることになった。

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なお、Xbox360は5.1chサラウンドがHDTV対応とともに必須案件である

 ドルビーは、ソフトウェアに対してはロイヤリティをとらない方針をとっている。従って技術使用料・商標使用料は無料。また、サラウンドに対する個別相談やサラウンドスタジオのキャリブレートサービスも無料で行っている。

 続いてSCEJの山口晋平氏・大島香織氏が登壇し、「GENJI」のサラウンド対応についての説明を行った。GENJIはこちらでも書いたが、ムービーはドルビーデジタル、ゲームサウンドはドルビープロロジックIIという、ドルビーデジタルプロロジックII対応タイトルだ。

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SCEJスタジオ・「GENJI」のサウンド開発者。右の大島氏はサウンドのトータルディレクションを担当。サラウンドへのミックスダウンも行った。左の山口氏はサウンドプロデューサーで、GT4のサラウンドも担当。今年のGDCではドルビーブースにおいて講演も行っている

 同作はいわずと知れた、平安舞台末期を舞台にしたアクションで、当時の雰囲気をふんだんに盛り込んだゲーム設計になっている。そこに、「ゲームデザインと融合したサラウンドサウンド」が入り込むことで本作はより深みのある効果を得られている。

 また、サウンドは和太鼓や琴はもちろん、めったにお目にかかれない和楽器などをふんだんに使用して、さらにそれらとオーケストラサウンドを融合させてGENJIのサウンド世界を構築している。なお、ムービーは音楽も含めてドルビーデジタル5.1chでミックスされている。サラウンド環境のある人は、背景音との絡みや前後の動きを誇張したサラウンドサウンドにも注意して聴いてほしい。

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GENJIでは最初のボス戦となる寺のステージ。ここではサラウンド感を強調するためにわざとリアサウンドを強調したつくりになっている

 GENJIのサラウンドのアプローチで面白い点は、プレイヤーの好みに対応できるように、リスニングポジションを3種類から選択できることだろう。「カメラ」はカメラの位置にマイクがあるかのようにサラウンドサウンドを作り出す。「リアル」はプレイヤーの向いた方向に合わせて音の位置が変わる。「プレイヤー」はカメラから見たプレイヤーの前にいる敵の音はフロントから、後ろの敵の音はリアから出力される。選択したポジションによってサラウンドの印象は大きく変わる。なお、「サルゲッチュ3」にも同様のリスニングポジションが設定できる。

 続いて、ナムコの開発陣によるプレゼンテーションが行われた。このプレゼンテーションは全編撮影禁止だった……ということで、文章だけで説明する。ご了承いただきたい。

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ナムコのサウンドチームからは3人のサウンドディレクターが参加。左から中西哲一氏、「エースコンバット5」などのサウンドを担当。中央は柿埜嘉奈子氏、「鉄拳5」、「風のクロノア2」を担当。右の中鶴潤一は「ソウルキャリバー」シリーズのサウンド担当

 ナムコのゲームサウンドはXboxはもちろんドルビーデジタル、GCはほとんどがドルビープロロジックII対応だ。PS2でもドルビープロロジックIIのタイトルは多く登場している。

 しかし、ドルビーデジタルを採用したタイトルは少ない。その理由は知識・技術の不足、サウンド以外のセクションにも作業負担が多い、コストの問題などから、積極的な採用に踏み切れなかったというのが現状だ。

 だが、全世界で410万本を売り上げ、欧米で多くのファンを持つ、世界最強の剣戟格闘ゲーム、ソウルキャリバーシリーズ最新作「ソウルキャリバーIII」ではやはり、サラウンドに対応しなければダメだ、ということで、今回はオープニングムービーにドルビーデジタルEX・6.1chサラウンドを採用した。その理由としては――

  • キャラクターの前後の動きをはっきりと出したいため
  • 世界中を見ても採用例が少なかったから(「ファイナルファンタジーX」シリーズくらい)
  • 「EX」がなんとなく凄そうだから

 なお、今回の6.1chサラウンドは外部とのコラボレーションで行っている。というのも、社内に充実した製作環境とノウハウがないが、サラウンドタイトルを出すならば、世界に出しても恥ずかしくないクオリティが求められる。というか、欧米はサラウンド先進国である。そこで認められなければ、サラウンドを採用する意味がない、といえよう。

 とはいえ、サラウンドを実装するには、多くの障害があるのも事実だ。バジェット、プロデューサーの理解、制作スタジオの対応などなど……。サウンド開発者が「是非サラウンドをやりたいです!」といっても、そう簡単にはできないのが現状という。しかも、大手ゲームメーカーであるナムコであってもだ。

 しかし、次世代機においてはHD画質のグラフィックとともにそれにふさわしいサウンドが必要となる。ここではE3・SCEAプレゼンテーションで見せた鉄拳のデモを見せ、これを元に次世代ゲーム機にふさわしい音作りのナムコサウンドチームとしての考えを見せた。

ビジュアル面

  • HD 1920×1080(1080i/p)
  • 鉄拳シリーズのテーマである「人の表現」を次世代機ならではのクオリティで
  • 表情や湯気、汗といった生々しさを表現

サウンド面

  • コンセプトは高級感
  • 熱気や汗の音、肌が焼けるようなSEなどの抽象的な音
  • 息遣いの声なども表現

 といったように高いクオリティのサウンドが要求されると考えている。もちろん、サラウンドも必須条件の1つになっているといえよう。そこで、サウンド開発者にはプロデューサー・ディレクター・プログラマーへの説得が必要となるという結論に達した。

 日本では普及率は低くても、世界規模で考えればサラウンドサウンドは外せない。これからは映画と同レベルで比較されるため、あって当たり前の時代に突入するだろう。また、「音圧(大音量でダイナミックレンジの低い音源)戦争をやめ、サラウンドシステムの導入で広くなったダイナミックレンジを使いこなそう」という提案もなされた。

2年目にして早くも名物講演に!? キャビア・佐野氏と愉快な仲間たちによる「サウンドとの間に流れる天の川の渡り方 エピソード2」

 サウンドクリエイターと他業種開発者=ゲームデザイナー・プログラマー・ディレクター・プロデューサーの間には広くて深い川(実質溝)があるという。その渡り方=サウンドクリエイターと他業種開発者の付き合い方=を元ナムコのサウンドクリエイターの3人が軽快かつわかりやすくレクチャーした去年の講演が大好評のため、今年も新たなレクチャーを行った。

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左からJ99ことスタジオカルナバル代表・相原隆行氏、めがてんことスーパースイープ代表取締役・細江慎治氏、佐野電磁ことキャビア・サウンドディレクターの佐野信義氏。なお、3人合わせて最近のヒット作はPSP版「リッジレーサーズ」

 サウンドというものは大事な構成要素のようでいて実は以外に軽視されやすいものだという。その例として、サウンド制作における優先順位や最初の1曲における手の打ち方、デモテープの作成法などを、去年同様に、「いい例と悪い例」を挙げて説明していった。その的確かつ笑えるけど洒落にならない指摘には、笑いが絶えなかった。

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企画とサウンドのイメージをすり合わせるためにもラフ曲の制作は大事という

 途中、サウンド用語講座やエンディングに使用するとイケてる楽曲紹介などをはさみ、ムービーなどのサウンド制作におけるコミュニケーションミスでのトラブルや、最近のサウンドクリエイターへの発注事情の話へとなだれ込んだ。

 最近では韓国ゲームメーカーからの発注も多いという話になり、それがいわゆるブランド志向ゆえの発注という話になった。そして、最近ではジャンルの細分化が進み、広く浅くできる人よりも特定のジャンルを極めた人間に仕事を依頼する傾向が多くなってきているという。

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マルチオーディオを入れて完全に音声仕様を固めた後でこういうことがあるとこのようなトラブルの元になる

 そうこうしているうちに今年も結論に達し、相手のことを思いやる……という、コミュニケーションの基本が再確認されて、講義は無事終了した。ただし、この時間はドルビー日本支社の中山氏司会によるサラウンドのラウンドテーブルとバッティングしてしまったことは非常に残念。サウンド系セッションが大好きな筆者としては、来年こういうことがないように、CESAにはプログラムの割り振りをもっと考えてほしいものだ。

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もっとも最終的な結論は去年と同様「愛」だったけど

[岩井省吾,ITmedia]

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