既存のヌルいRPGなんてやってらんねーという方への処方箋:「XANADU NEXT」レビュー(1/3 ページ)
今から20年前に、PCゲーム史に残る記録を作った1本のタイトルがあった。その続編となる作品が、世紀をまたぎまったく新しいシステムを備えて登場する。名は「XANADU NEXT」。元となったXANADUとは? そして、20年ぶりの続編はどのようなものになっているのか?
パソコンゲーム史上最大の、40万本セールスという記録を作ったソフト「XANADU」
今や、“パソコン”といえばPCかMacを指す時代になってしまったが、20年前はそんなことはなく、様々な“国内製”が市場に出回っていた。1985年当時の代表的な機種といえば、NECのPC-8800シリーズと富士通のFM-7シリーズ、そしてシャープのX1シリーズが挙げられるだろう。このほかにもMSXやPC-8001/PC-6000シリーズ、PC-9800シリーズ、MZシリーズなど、今では考えられないほど数多くのハードが出回っていた。しかも、各メーカーごとに互換性はなく、当時のゲームはそれぞれのハードごとにパッケージを分けて発売されていたのだ。今に例えるならば、同じタイトルがプレイステーション 2とXbox、ゲームキューブでリリースされているようなものといえるだろう。
そんな時代に、日本ファルコムから1本のタイトルが発売されている。ドラゴンスレイヤーシリーズの2作目となるドラゴンスレイヤーII、「XANADU」だ(ちなみに、ドラゴンスレイヤーというタイトルは、当時ファルコムに在籍していた木屋善夫氏が手がけた作品に冠されている)。
既存のRPGにはなかった美しいグラフィックとBGM、そして何よりも高い自由度と難易度が、当時のプレイヤーたちを虜にした。ゲームのストーリーとしては複雑なものはなく、地下ダンジョンに潜り王冠(クラウン)を4つ集め、どこかに潜むキングドラゴンを倒すのが目的となっている。たったそれだけなのだが、これまでのRPGでは見られなかった数多くの試みが、大勢のユーザーから支持を取り付けたのだ。中でも特徴的だったのが高い自由度で、それまでの1本道RPGとは違い、柔軟なゲーム進行が可能になっていた。
例えば、最初のキャラクターメイキングの時点で、主人公が持つ7つのパラメータへ数値をある程度自由に振り分けることができる。さらに、ダンジョンに入れば敵が出現するのだが、それを剣と魔法どちらで倒すかによって、主人公の成長スタイルが戦士または魔法使い寄りとなっていくのだ。
また、今時のRPGでは、新しい街へ行くほどに強力な装備品が売られているのがセオリー。しかしXANADUではそんなことはなく、最初のダンジョンにあるショップから強力な武器防具を扱っている。敵を倒して金を稼ぎいきなり強い武器を買うのも、平均的に装備を揃えて先へ進むのも、すべてはプレイヤーのゲーム進行次第。しかも、すべての装備品には熟練度というものが設定されていて、良く使い込んだものほど威力を発揮する仕組みが採用されていた。弱いダガーでも、使い込めばランクが上の武器ハンドアックスを使うよりも与えるダメージがアップするというようなシステムは、各プレイヤーにプレイスタイルの個性を持たせることに成功し、様々な遊び方をもたらした。
これ以外にも、倒してはいけない敵や取ってはいけない行動を設定し、それを犯してしまうと主人公キャラにカルマと呼ばれる罪のパラメータがつくシステムも採用。テンキー操作テクニック次第では、アイテムを使わなくてもダンジョンの難所をクリアできたり、主人公の何倍も大きなキャラがボスとして襲ってくるなど、すべての点に置いて当時のRPGを凌駕していた。
結果的に、パソコンゲームとしては記録的な大ヒットとなる、40万本というセールスを達成。この数字を破るゲームが未だ現れていないことからも、いかに「XANADU」が偉大なるモンスターゲームだったのかがうかがい知れるだろう。もちろん、今プレイしてもおもしろさに変わりはなく、実際に今現在も遊び直しているぐらいだ。ProjectEGGのページを訪れて購入するのもいいし、当時のパソコンがまだ現役稼働するならば、実機で遊ぶのも楽しいかもしれない。そこまでしてでも、PCゲームユーザーなら遊んでおくべきタイトルだと、今更ながら思う次第だ。
「XANADU」の面影を残しつつも、大幅な正当進化を遂げた「XANADU_NEXT」
そんな偉大なるタイトル「XANADU」のPC-8801mkIISR版が発売されたのが、1985年の10月27日。それから20年の時を経た2005年の10月27日に、次世代XANADUとも言える作品「XANADU NEXT」が登場する。「XANADU」自体は、これまでに何度かリメイクや復刻版という形で発売されてきたものの、まったくの新作という位置づけでは20年ぶりとなる。この20年で世の中は20世紀から21世紀へと移り、パソコンのスペックも信じられないほど向上した。それに伴い、「XANADU」にもそれ相応の変革が求められたのだろう。
画面は当時の2Dサイドビューから3D見下ろし視点へと代わり、操作もキーボードやゲームパッドからマウスオペレーションへと変更された。しかし、時が移っても、やはり「XANADU」。往年のファンが見れば、やはり「ああ、XANADUなんだ」と思える部分が、あちこちに散りばめられているのだ。それをチェックする前に、舞台設定と簡単なストーリーを紹介しておこう。
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