兵士は任務に命を賭けて戦うのみ。戦争をリアルに描くとこうなる:「FRONT MISSION 5 〜Scars of the War〜」レビュー(2/4 ページ)
一兵士という着眼点が生み出す独特の魅力
ウォルターは、物語冒頭からストライク・ワイバーンズに所属しているわけではない。プレイ時の楽しみがなくなるといけないので詳述は避けるが、初めはごく普通の兵士に過ぎないのだ。序盤ではストライク・ワイバーンズに志願するまでの経緯が描かれ、中盤以降、その一員として世界各地の紛争に派遣されていくのである。“一兵士の人生を追っていく”というシナリオ構成は、シリーズでは新しい試みだ。
前作までは先に事件があり、それに関わった者たちがそのまま主人公となった。しかし、今回はウォルターの成長に応じて話が進んでいくため、関わることになる戦争は複数に及ぶ。その代わり、ひとつひとつの戦争についてはあまり突っ込んだエピソードは用意されていない。
描かれるのは、あくまでウォルターが参加した戦いだけ。プレーヤーに与えられる情報は、目の前の戦闘に関することのみで、戦争そのものの勝敗を含め、政治的な観点からの情報はほとんど示されない。これはウォルターの側から見ると、詳しい政治的背景などは不明なまま、任務としてひたすら戦地から戦地を飛び回るということになる。
この一兵士という視点は、かなり斬新だといっていいだろう。プレーヤーによっては、ミッションの背景が不明なことに疑問を覚える人もいるかもしれない。何のためかもわからずに戦えと言われれば、不満に感じるのが当然だ。
しかし、実際の兵士たちが、そうした事情のすべてを知り得るか、という点を考えてみるとどうだろうか? 結局は、任務として命を賭けて戦うしかないのではないか? この生々しいリアリティこそ、従来作にはなかった本作の新たな魅力なのである。
単なる数字の集まりではない、戦友という大切な存在
一兵士の視点、という切り口は、ウォルターだけでなく、他のパイロットにも徹底されている。
ヴァンツァーは1人のパイロットが1機を操縦する兵器なので、平均的な小隊構成人数である6人で部隊を組めば、そこには6人のパイロットがいることになる。従来作では、味方になるパイロットたちはあらかじめ決まっていて、それ以外のパイロットと組むことはできなかった。
だが、今回は違う。ストライク・ワイバーンズにおけるウォルターは小隊指揮官であり、自分の部隊に入れる人材に関して、ある程度の人事権を持っている。つまりプレーヤーは、基地にいるパイロットたちの中から、任意の人材を部隊員としてスカウトできるわけだ。
スカウトできるパイロット候補は、非常に多く、延べで数えるとかなりの人数になる。このうち、小隊に入れられるのは8名まで。ウォルター自身と、幼なじみであるエドワードが固定メンバーとして加わるので、小隊は最大10名で構成される。このうち戦場では、ウォルターとエドワードを含め、6名が出撃することになるのだ。
スカウトは、パイロットたちが食堂、トレーニングジム、兵舎などでくつろいでいるタイミングを見計らって行う。この時、彼らの会話に耳を傾けることをお勧めしたい。と言うのも、ここにも各パイロットの性格、嗜好、家族構成などの情報が詰まっているからだ。
家族を守るために戦っている父親もいれば、理想に燃える正義漢、愛する人を殺され敵討ちを誓う者、さらには、子供たちが“敵を人間だと思うな。射撃の的だと思え”という教育を受ける時間を短くしたいと願う者など、本当にさまざまなタイプがいる。
中には、自分たちが戦う意義に悩んだり、政治家の批判をしている兵士たちもいる。下手をすれば、ミリタリー物のお約束的なセリフとして流されてしまいそうだが、一兵士の視点が全体に浸透しているため、印象がまるで違ってくる。もし、あなたが戦場に立つなら、どんな仲間と戦うことを望むか? ぜひ、それを考えてプレイしてもらいたい。
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