レビュー
2006/01/26 12:00 更新

「ルール オブ ローズ」レビュー:
ホラーでも、サイコサスペンスでもない。現代のおとぎ話の幕が開ける (1/4)

少女が舞い込んだ不可思議な世界。支配者として君臨する子供たち、次々と求められる貢ぎ物、落書きから抜け出してきたような敵、薄汚れた1頭の犬。いったいこれは何が起きているのか……? 

物語はミステリアスで不可解な出会いから始まる

 公式サイトを見た人、広告を読んだ人、店頭で実際にソフトを手に取った人。本作「ルール オブ ローズ」に関心を抱いた人は、この作品に対して、どんな印象を受け、どんな期待を抱くのだろうか。

 多分、圧倒的多数の人は、館物のミステリーないし、ホラーと受け取るだろう。ちょっとグロテスクなサイコサスペンスと思う人もいるしれない。いずれにせよ、そこには暗くゆがんだ人間性と、そこから生じる狂気が渦巻いているに違いない、という予想があるはずだ。そして、狂気にもてあそばれ、恐怖に顔をゆがめ、それでも生き延びようと懸命に戦う、美しき少女があるに違いない、という期待も……。

 あらすじを聞けば、確かにそう思うのも無理はない。舞台は1930年代のイギリス。人里離れた山中の夜道を1台のバスが走っている。乗客はヒロインである少女ジェニファーと、謎めいた少年の2人だけ。不意に少年がジェニファーに近づき、“絵本を読んでよ”という言葉とともにすり切れた冊子を手渡す。

 その時、ちょうどバスが止まった。少年はやにわにバスを降り、田舎道を駆け出していく。本を渡されたままのジェニファーはあわてて彼を追うが、彼女が降りたとたん、バスは走り去ってしまう。どことも知れず、人家の灯りすら見えない場所に、たった1人残されたジェニファー……。

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ヒロイン、ジェニファー。彼女が迷い込んだ場所はどこなのか。少年の何者なのか。そしていったい何が起きているのか? 次々とわき起こる謎にほんろうされながら、彼女の探索が続いていく

 冒頭のエピソードは、プレーヤーを不可思議な世界へと誘うのに十分だ。そしてそれに続く展開が、さらに雰囲気を盛り上げていく。

 ジェニファーは、山中の道へと消えていった少年の後を追ううち、とある屋敷にたどり着く。足を踏み入れてみると、壁や床には子供が描いたと思われるたくさんの落書きがある。どこからか彼女を見ている複数の視線、壁から聞こえてくる忍び笑い。先ほどの少年が時々、ちらちらと姿を見せる。ジェファニーは、彼に導かれるように、屋敷の中をさまよい続ける。

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ジェニファーがたどり着いた屋敷。院長室、応接室、大部屋の寝室などがあるところから見ると、何らかの療養施設か孤児院のように見えるが……

 この展開を見れば、誰もがホラーまたはサイコサスペンスだと思うのは当然かもしれない。ところが、実際にプレイしているときの感触はそれとは少し違う。

 ホラーであれば、怖がらせようとする演出があってしかるべきなのだが、本作ではそれが弱い。確かに不気味でミステリアスではあるのだが、ホラー特有のショッキングな演出などはなく、グロテスクな描写もない。

 その代わり、壁に縛り付けられた人形、中庭に作られた墓標もない墓などの狂気を感じさせるオブジェクトがあり、その意味ではサイコサスペンスっぽいともいえる。だが、それもやはり違うのだ。

 サイコサスペンスならば、そうした狂気が主人公を通してプレーヤーに押し寄せてこないといけない。ところが、本作にはそれもない。実はジェニファーは、ヒロインだという以外、何の設定もないのだ。年齢、生い立ち、現在の生活ぶりなど、キャラクターをリアルにするための要素をまったく持っていないのである。そのため、プレーヤーは彼女の視点で物語を見るというより、彼女が進行役になっている物語を第三者的な立場で見ている感じを抱く。

 つまり、ルール オブ ローズは、外見はホラーやサイコサスペンス風でありながら、中身を見るとそうしたジャンルに不可欠な演出が施されていない、という、非常に奇妙な構成になっているのだ。そして、この独特のタッチこそが、この作品に、ほかと一線を画する個性と魅力を与えてくれているのである。もう少し、序盤の展開を追ってみよう。

 しばらく屋敷内を歩き回っていると、ジェニファーが不意に現れた少女たちに襲われるというイベントが起こり(プレイ時の楽しみが減るので詳細は伏せる)、舞台はいきなり空を飛ぶ飛行船へと移行する。この移行はまったく突然で、しかもなぜそうしたことが起こったのか、合理的な説明はされない。プレーヤーはここで自分が不条理という名の、自然法則が効かない世界にいることを知らされるのである。

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ジェニファーが運び込まれた巨大な飛行船。しかし、どこにも乗組員の姿は見えない。それどころか、大人がいっさいいない。それでも、船は平然と飛び続けている

 

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[水野隆志,ITmedia]

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