ひりひりとしびれるような緊迫感がたまらない――映画的な演出が際立つサスペンスアドベンチャー「FAHRENHEIT」レビュー(4/4 ページ)

» 2006年01月31日 14時51分 公開
[小泉公仁,ITmedia]
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世界観との調和が見事なサウンドトラックにも注目

 このFAHRENHEITで特筆すべきは、音楽にあると思う。取り立てて多くの楽曲を使っているわけではないが、各シーンにぴったりマッチしたチョイスで、映画的な雰囲気作りに一役買っている。中でも、折々で流れる本作のメインテーマ曲は、厭世的で重苦しい中にも美しい旋律を湛えていて、とりわけチェロバージョン(ビオラかもしれない)は鳥肌が立つほどに素晴らしい。

 いったい誰が曲を書いているのだろうとエンドロールを注意深く見ていたら、「MUSIC BY ANGELO BADALAMENTI」のクレジットにのけ反る。アンジェロ・バダラメンティという作曲家は、「ブルー・ベルベット」や「ロスト・ハイウェイ」など、デヴィット・リンチ作品のスコアを数多く手がけていることでつとに有名。以前、同じく映画音楽で著名なマイケル・ナイマンが作曲を担当した国産ゲームもあったが、今回はそれに匹敵する驚きだった。

 ほかにも、カナダの新進気鋭バンド「Theory of a Dead Man」の曲をフィーチャーしたり、懐かしいところではテディ・ペンダーグラスやベン・E・キングなど、新旧取り混ぜた楽曲を効果的に用いていて、制作者のこだわりを強く感じさせる。これはぜひ、サウンドトラックCDもリリースしてほしいところ。

画像 メインテーマ曲は、デヴィット・リンチ作品でよく知られるアンジェロ・バダラメンティのスコアによるもの。ゲーム中に隠されたポイントを集めて、「ボーナス」にあるアイテムをアンロックすると、このメインテーマを含め、ゲーム中に使用されている様々な楽曲を聴くことができる
画像 「ボーナス」には、他にも遊び心あふれるオマケがたくさん。たとえば、「ムービー」では、セクシーなドレスで踊るサマンサのムービーが観られる。なぜか、セガサターンの「デジタルダンスミックスVol.1:安室奈美恵」を思い出してしまった……
画像 ダンスクラシックの名曲「Hang it Up」(パトリース・ラッシェン)に乗りながら、激しく踊りまくるルーカスとティファニー……。もちろん、ゲーム中にこんなシーンはなく、「ボーナス」でのみ見られる制作者のお遊び

 海外産のサイコスリラーというので、「残酷表現のオンパレードでは?」との懸念もあったが、実際にはそんなこともなく、人間模様がきちんと描かれた良質のサスペンスドラマという感じ。途中、やたらと長いアクションシークエンスがあったり、少し意地悪に思えるステージもあるが、投げ出したくなるほどのゲームバランスではない。

 ただ、前半はルーカスが精神的に追い詰められていくという、張り詰めた雰囲気が痺れるほど素晴らしいのに、終盤になるとシナリオがやや乱雑になり、荒唐無稽(むけい)な展開に走り出してしまうのは惜しい。人物像はしっかり作り込まれているだけに、あと少し時間をかけてプロットを練り込めば、はるかによくなったはず。また、ストーリーに関わることなので詳細は差し控えるが、過換気症候群やパニック障害などを持病に抱えている方には、症状を助長してしまうのではないかと思われるシーンも……。この点はくれぐれも注意されたい。

 それらを除けば、従来のアドベンチャーゲームとは一線を画した“シネマチック”な演出が見物で、あたかも映画の中でプレイしているような感覚に新鮮な感動を覚えた。アドベンチャーゲームが好きな方はもとより、映画ファンで日頃あまりゲームをプレイしないという方にもお勧めできる内容と思う。個人的には、次世代機でグラフィックを強化したFAHRENHEITというのもぜひ見てみたい。

画像 FAHRENHEITの助演男優賞は、この“ジェフリー”ではないかと思う。タイラーに貸したお金を返すよう迫るが、「賭けで勝ったら倍にして返す」というタイラーのうまい言い回しにまんまと乗せられ、1on1のバスケット対決に挑むことに……。彼の活躍(?)は必見
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