12年待った――糸井重里さんへの手紙「MOTHER3」レビュー(1/4 ページ)

はじめまして糸井様。古くからのゲーマーであれば、一度くらいは名前を聞いたことがあるソフト「MOTHER」の最新作が、12年ぶりに発売となりました。ずいぶんのご無沙汰ですが、お変わりないようで安心しました。僭越ながら、シリーズ初プレイの立場で本作に対する手紙をしたためた次第です。

» 2006年05月10日 16時37分 公開
[篠崎薫,ITmedia]

一風変わったタイトルという印象があった“MOTHER”シリーズ

前作から数えて12年目待った最新作。本作をプレイする割合が一番多いのが、当時小学生や中学生だった人たちなのではないだろうか?

 拝啓、糸井重里様。

 初めてお便りさせていただきます。

 ファミコン時代、ファンタジーRPGが隆盛を極めていたときに現れた「MOTHER」シリーズは、一風変わったタイトルとして一部のプレーヤーに熱狂的な支持を受けたと聞きます。とはいえ、プレイステーション以降にゲームを始めた人たちにとっては、テレビCMで流れた、外国人の少年少女が山に向かっているシーンや、木村拓哉さんの「まーざつー♪」という歌を聴いたくらいの記憶しかない人もいるかもしれません。かくいう自分もその1人で、MOTHERという存在は知っていたもののプレイ経験は皆無でした。知識としてあるのは、コピーライターでもある糸井重里さんが関わっているということぐらい……。肝心の糸井さんの印象も、その昔にフジテレビで深夜に放映していた「TVブックメーカー」に出演していたときのもののみという体たらくでした。とはいえ、糸井さんが世に送り出すキャッチコピーには印象的なものが多かったですし、個人的にも感心していた部分がありました。なんかこう書くと偉そうに聞こえますが、それを考えれば、手がけたゲームもおもしろいだろうと今回のプレイとつながったわけです。

 さて、今回レビューをするにあたり、おそらくMOTHERシリーズの一番のおもしろさは、ストーリー部分にあるはずと考えました。そこで、プロローグから第3章までのストーリーを追いつつ、システム部分の紹介などを織り交ぜてみました。つたない解説ではありますが、どうかご勘弁ください。


始まってすぐに感じられる「奇妙でおもしろい。そして、せつない」

 何はさておき、まずはカートリッジを挿入して電源をオン。タイトル画面には大きく「MOTHER3」の文字が映し出されるのだが、果たして“MOTHER”とは何なのだろうかと、ふと考えてみた。一般的に考えるならば、MOTHERといえば母親だが、本作では特別な意味があるのかもしれない……。そう思いながら進めていくと、軽快な曲とともにプロローグが幕を開ける。そこに映し出されたのは、祖父のアレック宅で休日を楽しむ双子の兄弟リュカとクラウス。そして、彼らの母親であるヒナワだ。舞台となっているのは、人間と動物が平和に共存しているノーウェア島。あまりにも平和すぎるために、人間たちに欲はなく、お金の概念も存在しない。

パジャマで外に出るなんて、現実でもNGのはず。そんな細かいところにも、気が配られている

 寝ているリュカだが、兄のクラウスから「遊ぼう」と誘われるので、まずは外へと移動。すると家を出る前にヒナワから、パジャマから着替えなさいと注意されてしまう。ファンタジーRPGでは、さらりと流されそうな一場面だが、一般的に考えればパジャマのまま遊びに行くのはダメな子供だ。そう考えると、動物と人間が共存したりモンスターと戦う部分以外は、極めて等身大の人間が描かれている世界と言えるだろう。現実問題として、キャラを現実ライクに描くことはなかなか難しい。それをしてしまうと、過剰な演出ができなくなってしまうだけでなく、見た目やプレイ感覚の面白さを損なう危険性があるからだ。しかし、本作ではあえてその部分を等身大で描きつつ、派手な演出の変わりに物語で魅せようという、そんな心意気が伝わってきた。そう、本作の中心を行くのは、まさに“流れるような物語”なのだ。その証拠と言うべきものが、システム面での説明ではなく、「奇妙でおもしろい。そして、せつない」というキャッチコピーではないだろうか。これから展開される、ちょっと奇妙な冒険。でも、それはつまらないものではなく、絶対におもしろくなるもの。だけど、時々胸が切なくなってしまう……。そんな物語が展開されていく。

大火事の中、果敢に森へと入っていくフリント。村人から「むこうみずなナイスガイ」といわれている。このあたりに、糸井氏のカラーがでているのかもしれない

 実際、プロローグは何事もなく過ぎていき、ヒナワが夫のフリントへ向けて「そろそろ家に帰ります」との伝書鳩を飛ばした後に始まる第1章では、平和だった物語が一転、急展開を見せる。フリントたちが住むタツマイリ村と祖父アレックの家の間にあるテリの森で、大火事が発生してしまうのだ。そこには、ブタのマスクをかぶった怪しげな人物の姿が見え隠れする。大混乱に陥るタツマイリ村で、フリントは村人に呼び出され、火事になったテリの森へと入っていく。


「ちからをためる」などの特技が使えるフリント。パワー型のキャラなので、回復には気を遣おう

 ゲームは章立てで進行していき、序盤では各章ごとに主人公が変わるのが特徴といえる。各章は直接繋がっているものもあれば、時間軸がさかのぼるものもあるなど、より厚みのある物語が楽しめるよう工夫されているのだ。各章の最後にはエピローグの文章が流れ、次の章で起きる物語をいや応なしに盛り上げてくれる。また、主人公だけでなく、パーティーメンバーもストーリーに合わせて入れ替わる。第1章の主人公は、双子の兄弟リュカとクラウスの父であり、ヒナワの夫であるフリント。肉弾戦を得意とする彼だが、回復手段はアイテムを使う意外はもっていないので、なるべく慎重に進みたい。


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