インタビュー
2006年06月02日 11時30分 更新

まさにディレクターズカット版――「ぼくなつポータブル」インタビュー (1/3)

「ぼくなつ」がPSPで帰ってくる――6月29日に発売される予定の「ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!」。この監督・脚本・ゲームデザインを手がける綾部和氏に、今回の作品について話を聞いた。

 プレイステーション版「ぼくのなつやすみ」で、昔懐かしいその世界観とともに“自分だけの夏休み”を満喫した人も多いことだろう。今回新要素も加わり、新たにPSPをプラットフォームに移して、「ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!」(以下、ぼくなつポータブル)が6月29日に発売されることになった(関連記事参照)。このぼくなつポータブル発売前に、ぼくなつシリーズの監督・脚本・ゲームデザインをつとめる、ミレニアムキッチンの綾部和氏に、ぼくなつポータブルについて話を聞いた。

画像 ミレニアムキッチン代表取締役 綾部和氏

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――ぼくなつポータブルのコンセプトをお聞かせください。

綾部 プレイステーション版「ぼくのなつやすみ」(以下、オリジナル版)のテイストを残すとともに、なおかつ今回は携帯ゲーム機となりますので、手軽に遊べる部分を拡張しました。具体的には登場するムシの数やイベントを追加してユーザーが楽しめる部分を増やした、といったところですね。

――「Newアイコン」など、ムシを見つけやすくする工夫が加えられていますね。

綾部 オリジナル版でもそうなのですが、ぼくなつのゲーム画面では、ムシがいるフィールドが画面から遠かったりすることがほとんどなんです。ただしNewアイコンを付けることによって、細かいところは見えないし、ムシ自体をプレーヤーが発見するわけではないんですが、「おや、ここにもいるぞ?」というように、ユーザーの意識がその瞬間だけクローズアップ状態になりますので、そこに新たなゲーム性が加わった気がします。

 登場するムシの数は128種類あるので、全部を集めることは難しいですが、ユーザーの方は一生懸命集めてくださるものだと期待しています。「今日は何もすることがなくて暇だなぁ」というときに限って見つかったりするものですし。

――「希少昆虫図鑑」が用意されているんですが、これはどう活用したらよいのでしょう?

綾部 特に取るのが難しいムシを捕まえるためのアドバイスとして用意したんですが、ぼくなつの世界ではムシのほうも自由気ままにうろついています。ですので図鑑を見ても、そのまま捕まえられるとは限らないんです。でも、図鑑に載っているムシを捕まえたときにはうれしいですよね。逆に、本来は希少昆虫図鑑に載っているようなレアなムシなのに、この山の中には意外にたくさんいるな、と思える場合もあるかと思います。

――ぼくなつポータブルを制作するうえでの留意点などありましたか?

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綾部 ポータブル機ですので、カメラが遠いところにある場所をボクくんが歩くシーンなどでは視認性が悪くなるんじゃないかと思ったんです。でも実際にプレイしてみると、TVでのプレイに比べて、ディスプレイを近くに持ってくることができるので、結果的にはその点はクリアになっていました。このほかには追加した項目をチューニングする作業も行いましたが。オリジナル版で至らなかったところをうまい具合に補完できるような作品に仕上がったと思っています。

 たとえば、オリジナル版は意図的に詰め込みをしていないゲームなんです。ですので何もすることがなくて暇になるときも多いですし、それはそれでその“暇”を楽しんでください、といった部分もあるんですが。それでもやはり“もっとたくさん遊びたい”という人もいると思うんです。こういった“ぜいたくな悩み”についても、今回はできるだけ満足してもらえるような形でイベントを追加しています。オリジナル版でも「ここは薄いな」、「こことここは暇になるな」といった部分はありましたので、そのあたりを上手に、穴を埋めるような形でリメイクできたかなと思っています。

――PSPは携帯機といっても画面が広いので、視認性はいいですよね。

綾部 オリジナル版では、色味がきれいで、暗い部分もはっきり見えるようなTVを使って色味を調節していました。ところがPSPならば同じディスプレイを使うことになりますし、ユーザーの方は同じ環境でゲームをプレイできるわけです。しかもPSPで使っている液晶の色味が、先ほど述べたオリジナル版の時に色調整で使っていたTVとほとんど同じなんです。そういう意味では、わたしたちの望む形での、きれいな絵づくりができたと思っています。わたしたちが考えている“理想の世界”が、ぼくなつポータブルでは実現できました。

――「ぼくのなつやすみ」では、色づくりが世界観に重要な役割を果たしているわけですね。

綾部 そうですね。ですので、もともと存在する画面についてはできるだけ変えないようにしています。オリジナル版で「これ以上きれいにできない」というところまで作り込んだので、それをできるだけ再現するようにした、ということもありますし。追加で作成した画面やシナリオについては、できるだけオリジナル版のテイストを変えないようにしています。基本的にメインスタッフがオリジナル版の時から変わっていませんから、まさに“リメイク版だけど純正品”と呼べるような、いい作品になったと思っています。

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――綾部さんはかつて自主映画を撮られていたそうですが、そのこともあってか、独特のカット割りによって“ぼくなつの世界”が形作られている気がします。

綾部 わたしは特に意識しているわけではないのですが、昔からわたしの作品を見ている人に言わせると、「この人は10代のころから変わっていないな」ということらしいです(笑)。カット割りであったり、カメラの位置が低いといったことなど……。誰かのまねをしたというわけではなく、それは若いころから自然に持っている特質だと思っていますので。ゲームを作っていく過程では、いろいろな人と分担をしていくことで効率よく作業ができることもありますが、シナリオや画面レイアウトは、全体の味にかかわる重要な要素なので、できるだけわたしが、直接担当するようにしています。

――オリジナル版はほとんど自分で担当されたという話も聞きましたが、今回も同じだったのですか?

綾部 結果的にはそう言えると思います。新規要素に関しては今回も、わたしが調整まで担当しています。移植部分に関してはわたしが作ったオリジナル版から“とにかくフレーム単位で寸分たがわず変えない”方針で移植してもらいました。ぼくなつは微妙なバランス感覚で成り立っている世界なので、無意識に変えてしまうとわたしでさえ、コントロールできない部分が出てきてしまうからです。オリジナル版とはハードが異なるので、変えない、というのは変えないように全体を再度微調整した、ということでもあります。今回は操作感もまったく変わりません。“どこを切ってもぼくなつの世界”だと言えるものになりました。

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[聞き手:今藤弘一,ITmedia]

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