「アーマード・コア」ではやれないことを──「クロムハウンズ」で見せたロボットアクションへの新たな挑戦:「クロムハウンズ」鍋島俊文プロデューサーインタビュー(1/2 ページ)
セガとフロム・ソフトウェアのコラボレーションにより生まれたXbox 360用ソフト「クロムハウンズ」。プロデューサーを務めるのは、代表作に「アーマード・コア」シリーズを持つ鍋島俊文氏だ。同氏に本作に関する、さまざまな話を伺った。
セガとフロム・ソフトウェアのコラボレーションにより生まれたXbox 360用ソフト「クロムハウンズ」。本作は、Xbox 360のハードスペックを最大限に生かした美麗な映像表現に加え、戦場の破壊や爆発といった演出面のリアルさも追求した、まさに次世代メカアクションと呼ぶにふさわしいタイトル。Xbox Liveを利用することで、仲間とスカッド(チーム)を組んで戦う、最大12人(6対6)でのオンライン対戦が楽しめるのも魅力のひとつとなっている。
開発を務めるフロム・ソフトウェアと言えば、ロボットアクションとしては確固たる地位を築く「アーマード・コア」シリーズが有名だ。多くのユーザーに支持されている同シリーズではあるが、ここに来てなぜ新たなロボットアクションを生みだそうと考えたのか? アーマード・コアとの違いはどこにあるのか? そんなさまざまな疑問をぶつけるべく、プロデューサーの鍋島俊文氏に直撃インタビューを行った。
一度は断念したプロジェクトが再スタート
―― 最初に聞いておきたいことがあります。2003年の東京ゲームショウで発表されたタイトルに「クロムハウンド-AGE OF ARMS-」(以下、クロムハウンドAOA)というものがありました。こちらが現在のクロムハウンズの前身と考えてよろしいのでしょうか?
鍋島 そうですね。当時は“ネットワークゲームを作りたい”という思いが強くありました。そこで開発を進めていたのですが、ネットワークゲームの経験が足りなく、またゲームの規模が予想以上に大きくて、サーバ設置などを含めてフロム・ソフトウェア単独で実現するのは難しいという結論に達したんです。その後、ネットワークゲームの経験が豊富なセガさんと組むことになり、開発再開と相成りました。ただ、当時のものをそのまま継続して作っても時代には合わないため、ベースの部分から新たに作り直していますよ。
―― クロムハウンドAOAでは、戦況を見てチームの仲間に指示を出す「オペレーター」という役割が話題を呼びました。先日行われたプレミアムトライアルを見る限り、本作ではカットされているように見受けられるのですが。
鍋島 オペレーターに関しては、当時遊んでもらったユーザーや社内から、“しゃべるだけってのはどうなんだ?”という意見が多く、賛否両論だったんです。アクションゲームなので“直接戦いたい”という声も多かったですね。ただ、チームメンバー間で協調しながら戦うという戦略要素がゲームの核だとは考えていて、そのために必要な要素であるのは間違いなかったんです。結果として本作では作戦に加わりながら状況を見渡す「コマンダー」という形で存在しています。
―― なるほど。では次に、本作の開発コンセプトについて教えてください。
鍋島 大きく分けて2つあります。ひとつはアーマード・コアにも存在する「メカ(ハウンド)のカスタマイズ」。クロムハウンズではアーマード・コアよりも自由にカスタマイズすることができます。もうひとつが「ネットワークでのチーム対戦」。アーマード・コアでは、個人と個人が腕を競う、いわば個人戦にスポットを当ててきましたが、本作ではチームバトルがメインです。チーム同士の戦いの中で“お前はこういう戦い方が得意だからこの役割をしてくれ”、“うちのチームは突撃主体で戦いたいから、全員が攻撃力の高い機体でそろえよう”というように、仲間との連携を考えながら遊んでほしいと思います。
ロボットではなく、兵器として進化した戦車であるハウンド
―― 同じロボットを題材にしていますが、アーマード・コアとは相当違うゲームに仕上がっています。
鍋島 アーマード・コアは自分ひとりで何でもできる、というよりも行わなければなりません。対して本作は、仲間ありきのゲームですから。チーム内で自分の役割を見つけ、仲間と協力して最強のチームを目指す。ここが一番違うポイントですね。
―― メカのデザインもかなり違うという印象を受けました。
鍋島 ええ、その通りです。アーマード・コアは長年続いているシリーズなので、必ず“アーマード・コアらしさ”を残さなければなりません。ただ、これが1作目となるクロムハウンズなら、そういったことは気にしなくていい。アーマード・コアではまず出てこないであろう、無骨なイメージのメカを操れるのも魅力のひとつになります。
ハウンドはロボットではなく、実は戦車から進化したメカという位置づけなんです。ベースを戦車としたのは、アーマード・コアとの差別化と海外展開の意識からですね。海外では、日本人が好むスーパーヒーロー的なロボットではなく、兵器としてのメカのほうが人気が高いんです。ハウンドはそのようなデザインのため、急なダッシュや回避行動は盛り込んでいません。ただ、何から何まで戦車と同じというわけではなく、パーツの組み合わせによっては、移動速度が非常に速いモノも作れるようにはしています。
―― 飛行系のメカが登場しないと聞いたのですが、それはなぜでしょう?
鍋島 陸戦兵器主体のゲームなので、飛行系のメカが登場すると強すぎるだろう、と(笑)。手も足も出ないと思いますよ。なので、この世界は飛行兵器が無効化されてしまった世界であって、そのため陸戦兵器が発達したという設定にしています。
―― ゲーム中の視点についても聞かせてください。本作には三人称視点と銃からの視点の2つが用意されています。
鍋島 自分のロボットを見ながら戦いたいじゃないですか。それと、本作のメカはパーツごとに耐久度を設定しているため、どこに当たったかをユーザーに理解してもらう必要があったという理由があります。銃からの視点は、主に海外市場を見越して採用しました。通常、銃からの視点は画面の右上にサブウィンドウとして表示されますが、自由に切り替えることが可能です。2つの視点を混在させたのは、これを活用するアクションとしてのテクニックが面白いからですね。
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