レビュー
2006年07月11日 15時37分 更新

「メタルスラッグ」レビュー:

3Dになった「メタルスラッグ」はアリなのか? (1/2)

10年に渡りアーケードシーンを熱くさせてきた傑作アクションシリーズが、初めて3Dにりプレイステーション 2に登場。圧倒的な物量を駆使して押し寄せる敵軍! 飛び交う無数の銃弾! 激闘をくぐり抜け、狂気の野望に終止符を打て!

2Dの勇者が3Dに殴り込み

 1996年、アーケードにある横スクロールタイプの2Dアクションゲームが登場した。すでにプレイステーションが発売されてから2年近くが経ち、「バーチャファイター」に代表されるポリゴンゲームが稼働していた時代だ。2Dアクションというのは、やや古びた印象に見られがちだった。しかも、ミリタリーアクションという、これまたファンを選ぶジャンル。下手をすれば、あっという間に市場から消えてしまってもおかしくなかった。

 だが、この作品はそんな逆境を吹き飛ばした。細部まで緻密(ちみつ)に描き込まれたグラフィックが生み出す迫力あるバトルシーン、アーケードゲームの水準を超えたストーリー性、そして何よりもアクションゲームとしての完成度が高かった。多くのファンがそれに引きつけられ、かくしてこの作品は、2Dを代表するアクションゲームの1本となった。初代「メタルスラッグ」のことである。

 それから10年。シリーズはアーケードを中心に展開され、プレイステーションやセガサターンを初めとしたコンシューマでもリリースされた。2006年2月には最新作「メタルスラッグ6」が登場し、アーケードを賑わせている。そして、これを追うように2006年6月29日に発売されたのが、プレイステーション 2用ソフト「メタルスラッグ」だ。

 本作には大きな特徴がある。なんと、3Dになったのだ。ポリゴン隆盛の時代から2Dを貫いてきたシリーズが、初めて3Dを選んだ。これは往年のファンには驚きかもしれない。ひょっとしたら“3Dのメタルスラッグなんてメタルスラッグじゃない”などいう叫びも聞こえてくるかも!?

 しかし、そう結論を急ぐこともないだろう。まずはともかくプレイだ。そうすれば、この3D版が2D以来の伝統を継承しながら、新たな世界を切り開いていることに気づくはず。その楽しさは、往年のファンにとっても決して不快なものではないはずだ。そして、今までシリーズを触れる機会がなかった人は、この3D版を通して、アクションゲームの面白さを堪能して頂きたい。抜群のゲームバランスとは何か? その答えがここにある。初めは少し難しく感じるかもしれない。だが、慣れてきた時の爽快(そうかい)感と緊張感はこたえられない。ミッションをクリアしていくうち、先が見たくて仕方なくなってくるはずだ。

悪の独裁者モーデンを倒せ

photo 敵役・モーデン。もとはれっきとした軍人で元帥(軍人の最高位)に登り詰めた男だが、世界制覇の野望に駆られ、狂気の独裁者となった

 アーケードのメタルスラッグシリーズは現在までに全6作を数える。その内、やや外伝的な位置づけにある、「メタルスラッグ4」および「メタルスラッグ5」を除くと、残りはすべて共通の敵が登場する。いわば、宿敵とも呼ぶべき存在。それがデビルリバーズ・モーデンだ。

 モーデンはアーケードの第1作メタルスラッグでクーデターを起こすがあえなく失敗。それでも懲りずにメタルスラッグ2では、なんと宇宙人の協力を取りつけて再戦を挑んでくる。しかし、これも失敗してしまう。そして、もう一度宇宙人を味方につけ、再々戦を仕掛けてきたのがメタルスラッグ3になる。

 アーケードの最新作であるメタルスラッグ6は、ストーリー的にはメタルスラッグ3と直結している。さらに言うならば、本作とメタルスラッグ3も直結している。実は、メタルスラッグ6と本作は、一種のアナザーストーリーの関係にあるのだ。折りがあれば、両者を比較してみるのも面白いだろう。なお、メタルスラッグ6には「怒」シリーズの主人公たちがゲスト出演している。オールドファンには懐かしく、かつうれしい趣向だ。

photo シリーズ通しての主人公・マルコ。一見、マッチョ派に見えるが大のコンピュータマニアで、ヒマがあればソースの研究をしているという意外な側面も

 話を戻そう。このようにモーデンの野望は過去3度に渡って阻止されてきた。それを成し遂げてきたのが、シリーズの主人公である、マルコ・ロッシ少佐。軍のコマンド部隊に所属するワイルドなナイスガイである。

 マルコを助けてともに戦ってくれるのは、戦友であるターマ、エリ、フィオの3人だ。ターマは軍のコマンド部隊所属で、マルコの同僚(階級は少佐のひとつ下の大尉)。エリとフィオの女性陣は、軍情報部に所属する特殊部隊のメンバーだ。このうち、エリは日本人でフルネームは笠本英理という。


photo 本作では、ターマら3人は、冒頭に起こるモーデン軍の奇襲によって散り散りになってしまう。その後、ゲームを中盤あたりまで進めていくと、除々にマルコに合流、プレーヤーキャラクターとして使用可能になる

 もうひとり、戦場には出ないが忘れてはならない存在が、ルミ・アイカワ伍長(伍長は将校=指揮官と兵隊たちの間に位置し、下士官と呼ばれる階級のひとつ)となる。軍の補給部隊に所属しているが、戦闘の中でなし崩し的にマルコの部下になってしまい、彼の戦闘をサポートすることになる。オペレーターとしていろいろな情報を教えてくれるので、頻繁にその声を聞くことになるだろう。名前から推測できるように彼女も日本人で、漢字で書けば相川留美となる。

正統派軍事物とSF的な設定が融合した独特な世界

photo ミッションとミッションの合間に入るイベントムービー。無謀さと最大効率が背中合わせの作戦を立てるマルコと、驚き、時には呆れつつも彼についていく仲間たちの掛け合いが絶妙だ

 さて、日本においてはあまり軍人が主人公のゲームは作られていない。現在プレイできるタイトルでも、大半は海外作品というのが実情だ。その中で、メタルスラッグシリーズは、日本のメーカーが作った数少ない本格ミリタリーアクションである。しかも、そこに展開するのはまぎれもなく、正統派軍事エンターテイメントの世界。ただお堅いだけではなく、ユーモアとヒロイズムがブレンドされた、ハリウッド製の戦争アクションを思わせる雰囲気が濃厚なのだ。知らずにプレイすれば、海外作品の移植かと思う人が出ても不思議はないだろう。

 軍事エンターテイメントの楽しさを高めてくれているのが、SF的な設定だ。先ほどモーデンのクーデターが宇宙人の支援を受けていたことに触れたが、“リアルさが求められる軍事物の世界に、そんな破天荒な設定を混ぜて大丈夫なのか?”と思われるかもしれない。だが、ミリタリーとSFという2つのジャンルの相性は非常にいい。

 例えば、1980年代に作られ、その後のSF映画に大きな影響を与えたエイリアン2とプレデター。あるいは壮絶な戦闘シーンが話題を集めたスターシップ・トゥルーパーズ。これらはいずれもSFとミリタリーの融合だ。リアリティを求められる世界だからこそ、巧みに混ぜられた虚構が光り輝くのだろう。

photo 中盤に入ったあたりで遭遇することになるゾンビ兵。この他、巨大なゴーレムなどの敵も出てくる。さらに終盤になると……

 シリーズに宇宙人や彼らが作り上げたオーバーテクノロジーといった要素を取り込まれたのは2作目以降なのだが、これにより、純粋なミリタリーの中では描けない、より広いゲーム的なエンターテイメント世界が生み出されている。軍事ファンがそっぽを向くほどリアリティを失うことはなく、その一方でガチガチのミリタリーファンでなくても遊べるとっつきの良さ。メタルスラッグは、この微妙なバランスの上に立っているのだ。

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[水野隆志,ITmedia]

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