Xbox 360が爆発的に普及する方法は2つある:マイクロソフト Xbox事業本部長 泉水敬氏インタビュー(1/2 ページ)
年末までにトータルで約80タイトルを発売するというXbox 360だが、Wii、プレイステーション 3が控えている2006年だけに、これだけで万全とは言えないはずだ。そこでXbox事業本部長の泉水敬氏に、Xbox 360の今後の展開など、さまざまな話を聞いてみることにした。
任天堂のWii、ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(SCE)のプレイステーション 3といった新しいハードウェアが注目を集める2006年のゲーム業界。だが、この2機種よりもひと足早く、2005年12月10日に発売された次世代ゲーム機が存在する。それがXbox 360である。
発売から約8カ月で40タイトル以上、年末までには約80タイトルを市場に投入する予定のXbox 360だが、これだけでは万全と言い切れないのも事実だろう。そこで今回は、2006年4月1日にマイクロソフトのXbox事業本部長に就任した泉水敬氏に、Xbox 360の今後の展開や、他社のハードウェアに関する見解など、さまざまな話を直接聞いてみることにした。
――Xbox事業本部長に就任してから4カ月が経ちました。まずはこれまでを振り返っての感想を聞かせてください。
泉水敬氏(以下、敬称略) Xbox事業本部長には就任しましたが、わたしはXboxの時代からサードパーティさんとの窓口の責任者や、マーケティングの責任者をしており、これまでもずっと関わってきています。大きな戦略の変更をしたわけでもないので、そういう意味ではこれまでの延長線上で仕事をしていると言えるかもしれません。ただ、その中でわたしのやり方というか、わたしの色が出てきているのも事実ですね。
――色というのは具体的にどのようなものでしょう。
泉水 まだ結果となって出てきてはいませんが、ひとつは広告キャンペーンになります。4月に体制が変わってから準備を行い、7月から新たなキャンペーン(do! do! do! しようぜ。)を行っています。今回はTOKIOさんに協力してもらい、Xbox 360の良さや楽しさを、もっとユーザーの皆さんに近い距離で伝えていただこうという試みをしているんです。タイトルについても、夏までに(トータルで)40タイトルと発表していましたが、8月末で43タイトルとなるなど、順調に来ています。年末までにはこの倍を目指していますが、開発は順調に進んでおり、ほぼ間違いなく約束は守れると思います。他社さんのハードウェアが出てくる年でもありますし、それに向けての展開を準備しているという段階ですね。
――新しいキャンペーンの反応はいかがですか?
泉水 TOKIOさんを採用したことで、おおむね好印象をいただいています。以前からいろいろなチャレンジをしていますが、皆さんに満足してもらう広告を作るというのは、なかなか難しいんです。ただ、今回は個人的にも良いデキだと考えています。イメージを伝えるというだけでなく、Xbox 360でできる楽しさというものを、TOKIOさんに体現してもらっていますから。Xbox 360というブランドとユーザーの皆さんの距離を縮めるという意味でも、非常に効果があるはずです。第2弾の展開も始まっていますが、こちらではゲーム画面も使用していますので、より具体的に分かりやすい内容になっています。TOKIOさんには引き続き、タイトルラインアップの豊富さや、Xbox Liveの楽しさというものを体現してもらえれば良いですね。
――テレビCMは幅広い時間帯で流れています。
泉水 幅広い時間帯でも展開していますが、同時に提供番組の拡大も行っています。繰り返し同じ時間帯で見ることができるため、提供番組のテレビCMは一番効果が高いんですね。
――広告キャンペーン以外に、今後の戦略のポイントとなるものはありますか?
泉水 2つあります。ひとつはゲーム機として考えた時に必要となるラインアップの豊富さと、それに伴い将来に向けての安心感をユーザーの皆さんに伝えること。タイトル数に関して言えば、当初の発表通りの数を提供することができていますが、その中でジャンルの幅や有名タイトルの展開、さらには新しい次世代向けのゲームもやっていかなければいけません。そして、それらをしっかりとユーザーの皆さんに紹介していかなければならないんです。もうひとつはXbox 360を使うことにより、ゲーム以外も楽しめるということ。大きくはXbox Liveというオンラインサービスや、年内に発売予定のHD DVDプレーヤーの提供などがありますが、この価値をユーザーにきちんと伝えていくことですね。
――タイトルの話が出ました。ユーザーからは「ブルードラゴン」の期待が高いですが、そのほかにキラータイトルとなり得ると期待しているものをいくつか挙げてください。
泉水 サードパーティさんのタイトルで言うと、「ウイニングイレブン」、「デッド ライジング」、「ロスト プラネット」、「トラスティベル」、「ガンダム オペレーショントロイ(仮)」、「プロジェクト シルフィード」、「デッド オア アライブ エクストリーム2」といったものがあります。また、ある意味ではマニアックに楽しんでいただけるタイトルとしては「カルドセプト サーガ」や「アイドルマスター」、カジュアルに楽しみたいのであれば「Xbox Live アーケード」もあります。ジャンルごとに、しっかりとキラータイトルとなり得るものが存在しているということですね。それと、東京ゲームショウ2006では新しいタイトルもいくつか発表できるはずです。
――新たなタイトルの発表ですか。楽しみにしています。ではHD DVDプレーヤーはどれくらいのけん引力があると考えていますか?
泉水 正直なところ未知数ですね。HD DVD用のコンテンツがどれだけ用意できるのか? HD DVDを楽しむことができる環境があるのか? など、われわれが直接関与できない、さまざまな要素がありますから。ただ、そういうニーズがあるということ、ユーザーの皆さんに選択肢を提供することが一番大事なんです。もちろん、たくさん買っていただけるなら、それに越したことはないですけど(笑)。
――Blu-ray 対 HD DVDとなると、加えてXbox 360 対 プレイステーション 3という構図も見えてきます。
泉水 先ほども話した通り、われわれは次世代DVDとしての選択肢を提供しているに過ぎません。それを必要としていないユーザーもたくさんいるんです。次世代DVDの争いが、必ずしも次世代ゲーム機の競争の結果を左右するとは考えてないですね。
――プレイステーション 3と比べて、Xbox 360の優位な点はどこになりますか?
泉水 ラインアップの充実という点で、ほかのハードウェアが追いつくのにしばらく時間が掛かると考えています。われわれは先行しているメリットとして、年末に80タイトルがそろいますから。これは明らかなアドバンテージです。ゲーム以外の部分で言えば、オンラインサービスの世界では、われわれは3年以上も前からXbox Liveを提供してきており、機能拡張を進めています。他社さんがこれから同様のオンラインサービスを展開するとして、追いつけるとしてもかなり時間が掛かるでしょう。さらにXbox 360は、HD DVDプレーヤーなどの周辺機器をつけることで、いろいろな方のニーズに応えることができます。Windows Vistaとの連携なども考れば、一番優れているはずです。本当にお買い得だと思いますよ。ユーザーの皆さんには、あまり先入観を持たずにゲームを体験していただき、Xbox 360でできることを見ていただきたいですね。
――Wiiはどうでしょう。
泉水 任天堂さんのビジョンを明確に反映させたWiiは、そのハードウェアが満たすニーズがあると思います。一方で、Xbox 360だからこそ、プレイステーション 3だからこそ得られるニーズもあるわけです。ユーザーの皆さんからすれば、選択肢が増えたということです。これまでの次世代機といえば、一様に性能が上がって、フォーマットが変わり、それに伴いゲームも同じように変わるという状況でした。今回の世代交代というのは、それぞれの方向が明らかに違います。例え3台すべてを持っていたとしても、それぞれ異なる楽しみが生まれるはずなんです。そう考えると、市場の活性化につながる良い機会だと思いますね。特徴が出たという点では価格も同じです。全然違いますよね? そこも含めて、ユーザーの皆さんは選択肢が増えているんです。ただ、その中でもXbox 360というのは、一番お買い得だと考えています。それでも、もっと求めやすい形にしていかなければならないとは思いますけど……でも、(現状での)値下げは考えていません。
――ユーザー心理から言えば、ほかのハードウェアが出る時には合わせて下げるだろう、という考えもあります。
泉水 選択肢としては常にあるのは事実ですよ。ただ、それを決定する要因というのは、提供する側のコストの問題、競合機種の価格の問題などがあるわけです。求めやすい価格で提供できるようにしたいと考えてはいますが、あれだけの性能と機能を詰め込んだハードウェアですし、自然とコストも掛かってしまうんです。
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