ニュース
2006年09月14日 23時40分 更新

戦っているのは“ユーザーの無関心”――岩田社長と宮本専務との一問一答 (1/3)

「Wii Preview」開催終了後、任天堂の岩田聡社長、宮本茂専務との質問会が開かれた。岩田社長は「戦っているのはライバルメーカーではなくユーザーの無関心。ゲーム人口をいかに増やすかが課題」と語った。
画像 任天堂の岩田聡取締役社長(左)と宮本茂専務取締役(右)

2006年度内には600万台の出荷を目指す

――Wiiについては、これまで示されてきた目標に変更はないのか。

岩田氏(以下、敬称略) 販売の計画については、発表している計画を変えていない。2006年度内600万台、2006年内には400万台を出荷する。価格や発売日については今日発表したばかり。流通の方にも話をしていないし、一般ユーザーの反応により結果は左右されるだろうが、いまの時点で違う目標を言うのは時期尚早だと考えている。

 なお、ゲームキューブの時に「5000万台をコミットする」と報じられたのは誤解。社長就任後の経営説明会の時に、任天堂は経営指標を持っているのかという質問に対して、「経営指標を固定的に決めて運営する考えはないが、ゲームキューブが5000万台売れることを目標としたい」と言ったのがコミットメントとして報道されてしまった。では、いまの経営指標は何かといえば、これまでの「ゲーム人口の拡大」に加えて、「1世帯あたりのユーザーを増やす努力をする」ということ。1世帯あたりのユーザーを増やすことが、ゲーム人口拡大の大きなポイントとなる。このことが今後は自分たちの目安となっていく。

 これまでのNINTENDO64やゲームキューブの時との違いといえば、どちらのゲーム機も、いまのゲーム人口拡大という方針以前に計画されたマシンだし、当時はより豪華で、よりすごいゲームを作ればゲームユーザーは拡大するんだという、過去のゲーム神話に基づいて設計され、作られたマシン。3年前に伝えてから繰り返し言っているように、市場拡大のためにその方法を極めても、結果を伴うものではないと考えている。任天堂もそこは求めていない、と。

 ただし、そうは言いながらも「ゼルダの伝説」のようなゲームを作るのは、それを求めているファンが世界中にいるから。こうしたゲームが作れないからやらないのではない。ただそれだけを続けていてもマーケットが拡大しないので、ニンテンドーDSであれば、“脳を鍛えるソフト”を発売し、ヒットするという結果を得た。

 では、Wiiでは何をするかというと、いままでのNINTENDO64やゲームキューブとは違う方向を向いて作った。いまゲームをしていない人や、ゲームをやめてしまった人が戻ってくるのか。まったく興味のなかった人がどうやったら触ってくれるのか。家の中にある、ゲームをプレイする人としない人の間にある“明らかな壁”をどうやったら壊れるのか。そこを考えて作った。開発チームにもこの点を話しながら作ってきたつもりだ。

宮本氏(以下、敬称略) ゲームキューブまでというのは、みんなで1つの目標に向かってゲームを作ってきた。その中では、ラジカルな意見などが出ても通っていかなかった。どんどん最先端を追い求めていくはずなのに、新しいことがやらせてもらえないということもあった。それはやはり、競争であったから。1つの方法に対しての競争の中で作ってきたので、それがなければ何かに負ける、と考えていたからだ。ただ、“遊び”については、いろいろな考えを持つユーザーがいる、ということがニンテンドーDSに携わる中で社内的に浸透してきた。

 すると社内でもラジカルな人が飛びついてきて、その結果、積極的に新しいことをやろうとする人が主流になってきた。以前は性能が低いと負けるんじゃないか、という人もいたが、最近は新しいことをやっていくとこんなに楽しいのか、というようになってきた。たとえば「ゼルダの伝説」など、3年も4年かかって作っている横で、半年くらいの開発期間で制作されたソフトがヒットを出して、ゼルダのスタッフが悔しがったり。すると今度は開発期間が短くても作れるものを制作したいと考えるわけだが、逆にゼルダを見たクリエーターは「やっぱり時間のかかったものはすごいですね」とか。多彩なものが社内で認められるようになってきたので、クリエーター自体にいろんなチャンスが生まれている状態だ。

岩田 ソフトの種類やボリュームによって、ダイナミックレンジが広い形で価格帯に設定したが、多彩さというのは我々にとって大きなテーマだ。会社の中でいろいろなものを生み出せるようにならないといけないので、この点は強く意識している。

戦っているのはライバルメーカーではなく“ユーザーの無関心”

――今日の「Wii Preview」では“ゲーム機以外の使い方”をアピールしていたように見えたが。

画像

岩田 今日の「Wii Preview」では、わたしのパートとしてはチャンネルシステムに代表されるゲーム以外の部分について紹介し、宮本はゲームについて紹介したが、「Wii Preview」が終わったあとに試遊台でプレイできるたくさんのタイトルがあったので、わたしの方ではゲームの話をしなかっただけだ。

 確かに任天堂はニンテンドーDSでゲーム人口を拡大したかもしれないが、「据え置き機ででどれだけのことができるの?」、また「ニンテンドーDSの路線は、携帯型ゲームだったからできたのでは?」と考えている人は多いだろう。そのような人に対して、我々は新しい客層に向けてTVゲーム機の楽しさを語ることがいかに難しいか、ということをものすごく考えてきたということを伝えたかった。

 また、任天堂はゲームだけをやると言っていたのにゲーム以外のことをやり出したのかという疑問に対しても「いやそうではない」と。ゲームに興味を持っている顧客に訴えてゲーム機を普及させ、そこから興味を持っていない層に普及させるのは無理だ。今のままだと家の中にゲーム機があっても、興味のない人は永遠に触らない。その壁が壊れないと、据え置き型ゲーム機のゲーム人口はニンテンドーDSの時のようには増えない。そこを解決しないと、任天堂のゲーム人口拡大路線は「ニンテンドーDSではうまくいったがWiiでは失敗してしまった」と終わってしまうのではないか、と。

 この点を考えてきて、自分たちの中で手応えのある結論が出たので、今日はそれを話そうと思った。ゲームについては実際に動くものが用意されているのでそれを触るのが一番。わたしがしゃべるべきではないな、と言うのが理由だ。

――他社もゲーム機以外の“エンターテインメント性”を訴えているように見えるが、その戦略についてはどう考えるか。

岩田 他社とどう競争していくのか、とメディアからいつも質問を受けるのだが、わたしはライバルメーカーと競争しているという意識が本当にない。というのは、競争してもゲーム人口は増えないと思っているからだ。わたしたちが戦っているのはライバルメーカーではなく、ユーザーの無関心だ。ユーザーがWiiに触って納得してくれて、「Wiiに触ったらおもしろかった」とほかの人にどんどん伝えていくような“循環”が起きないと、多分Wiiによるゲーム人口の拡大はできない。我々はユーザーの無関心と戦っているため、ライバルメーカーとの戦いに意識が行っていない。この結果として、ライバルメーカーについてどう思うかをを問われても「我々とは違う方向を目指していらっしゃるのですね」という答えしか出てこない。

――欧米のデベロッパーにはどのようにアプローチするのか。

岩田 1年くらい前は、日本ではニンテンドーDSが受け入れられたのに、欧米では受け入れられなかった。このためやはり欧米は性能至上主義で、豪華ですごいゲームが未来を切り開くし、映画ベースのゲームにしても、バイオレンスベースのゲームにしても、高性能が有利だとわたしも思っていた。そして、それが欧米のデベロッパーの考えであると聞いていた。

 ところが欧米のゲーム業界も、昨年末には飽和状態が見えてきて、今年の初めは若干の減少傾向であった。実はここ数カ月は持ち直しているのだが、その原因はニンテンドーDSが売れているから。欧州のヒットチャート上位にはニンテンドーDSのソフトがたくさんランクインしていて、まるで日本のランキングかと思うほど、この2、3カ月で劇的に変わった。

 このためか欧米のデベロッパーが話す内容も変わってきている。自分たちとしても、いままでと同じやり方一直線では、この先コスト効率が悪くなるかもしれない、と。そういう意味では、任天堂が提唱する方向もおもしろい、と言ってもらえるようになってきた。

 わたしは、現状ではWiiの提案する内容が、欧米のデベロッパーの要求を満たしていないとは感じていない。いまでも、より豪華なゲームを作りたいと考える人たちにとっては、任天堂はファーストチョイスにはならないだろう。お金があって規模も大きく、ノウハウがたくさんある会社以外に、小さいところでも任天堂のアイディア勝負に共鳴してくれる人が好意的なのはもちろんだが、最近では“パワーゲーム”が得意なエレクトロニック・アーツが、任天堂へ非常に好意的なメッセージを出してきた。このため、流れが明らかに変わって来ていると思っている。

 また当然のことながら、開発の敷居をいかに下げるかということは重要だ。たとえば、開発キットは20万円程度で販売できるようにしようと考えている。これまで次世代ゲームの開発環境は何百万という価格だった。それに比べると法外に安い。なぜかというと、第1のユーザーである開発者が負担なくゲームを作れるようにしたいと言うことを意識しているからだ。これはWiiでもニンテンドーDSでも同じだが、新しい要素技術が登場したら幅広く公開していく。たとえばニンテンドーDSだと、手書き認識や音声認識や音声合成と言った技術は、我々がすぐに使えるように用意してきたのだが、これも開発会社が使えるように、なるべく負担が少なくなるように努力する。以前は門外不出であった宮本のノウハウもどんどん出すように企画している。

――海外での発売時期や価格はどのように発表するのか。

岩田 海外でも日本と非常に近い時期に発売するようにしているが、それぞれのマーケットで発売日と価格を発表すると決めているので、それぞれのローカルマーケットの販売を担当する会社が正式に発表するのでそれを待ってほしい。これまでも全世界で、今年の第4四半期に発売すると言ってきたので、その公約を守れるように努力もしてきたし、予定も変わっていない。

       1|2|3 次のページへ

[今藤弘一,ITmedia]

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


-PR-Game Shopping